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「俺にどうしろと?」コロナを放置するブラジル大統領、支持割れる

SmartFLASH

写真:ロイター/アフロ

 

 アメリカ大陸は、新型コロナのパンデミック渦中だが、その中心は南へと移ってきた。
 感染者数が急増している国は、メキシコ、ペルー、チリ、コロンビア、アルゼンチン、ボリビア、そしてブラジルである。

 

 南米最大の国ブラジルは感染者数が24万5000人を超え、3位のイギリスを追い越しそうな勢いだ。
 ブラジルのコロナ対策で、必ずと言っていいほど話題になるのが、徹底して都市封鎖を拒否しているボルソナロ大統領だろう。

 

 

 経済優先を訴え、「STAY HOME」に反対する大統領は、日曜日には兵士らとともにソーシャルディスタンスをとらずに腕立て伏せをするパフォーマンスまでしてみせた。

 

 ボルソナロ大統領は、1955年、ブラジルのサンパウロで生まれたヨーロッパ系移民の子である。軍人時代には低賃金を批判して逮捕されたり、クーデターを画策した疑惑もあり、野心的な性格で知られている。1989年に政界入りし、2019年からブラジル第38代大統領を務めている。

 

 トランプ大統領の大ファンとして知られており、「ブラジルのトランプ」「トロピカル・トランプ(熱帯のトランプ)」などとニックネームがついている。

 

 政策はトランプ大統領と似たものが多いが、もっと過激である。思想は極右的で、黒人や女性、原住民、同性愛者などへの差別姿勢を崩さない。ちなみに、「日本人はチビっこい」と表現したこともある。

 

 トランプ大統領は、コロナ予防のために抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」を毎日1錠服用していると公表して世界を驚かせたが、ボルソナロ大統領は、新型コロナの特効薬として使うよう、医療規約を変更しようとしている。この薬は米FDA(食品医薬品局)が、服用すると深刻な副作用が見られるとして注意を呼びかけているため、ブラジル保健相が抗議して辞任。保健相の辞任は2人目で、政権発足後11人目の大臣辞任となる。

 

 トランプ大統領同様、ツイッターも多用し、メディアを平気で「嘘つき」呼ばわりする。

 

「コロナはちょっとした風邪である」「人間誰もがいつかは死ぬ」「ブラジル人は全員コロナに感染した方が、免疫ができるからよい」「他国で行われている外出制限は『大量監禁』である」など問題発言も多い。感染死が増えたことについて質問されると、「だから何だ? 俺にどうしろと? 俺の苗字はメシア(救世主)だが、奇跡は起こせない」と回答して波紋を呼んだ。

 

 ボルソナロ大統領は、3月に訪米して、トランプ大統領やペンス副大統領などと面会している。しかし、帰国後に17名がコロナに感染してしまうという「コロナ・トリップ」になってしまった。ボルソナロ大統領はこのときの検査結果の開示を頑なに拒んだため、感染したかどうかは明らかになっていない。

 

 しかし、このあたりから、あえて人前に登場して、支持者や子供たちと握手や挨拶を交わしはじめた。
 連邦制のブラジルでは、営業規制を含む保健衛生は州の仕事で、大統領ではない。しかし、ロックダウンに反対する大統領は、「経済を壊すな」と知事らと対立している。

 

 国民の4分の3が社会的距離を取ることが感染予防になると同意しているにもかかわらず、国のトップが反対の行動をしていては、まとまるものもまとまらない。サンパウロが3月に隔離宣言したときには60%以上の人が自宅にこもって協力したが、最近では過半数が守っておらず、感染が拡大している。

 

 さらに、アマゾンの熱帯雨林地帯には43万人ほどの先住民が暮らしているが、このエリアへのウイルスの蔓延も問題になってきた。

 

 ボルソナロ大統領は、当初、熱狂的な支持を集めてきたが、最近では支持率も39%と、今年始めに比べて9%ダウンした。一方、熱烈な支持者は、「(薬の)クロロキン、クロロキン」などとシュプレヒコールのように叫んでは、徐々に過激化していく様相を呈している。コロナは、ブラジルでも社会の分裂を呼んでいるのだ。(取材・文/白戸京子)

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