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競泳エース・瀬戸大也の挫折と再起。五輪延期で高みを目指し下した決断。

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今年1月、日本選手団の公式服装発表会に参加し、「後悔しないように、あと半年を過ごしたい」と語っていた。 (photograph by AFLO)

 登りつめるはずの山がなくなった。そのときに受ける喪失感はいかほどか。

 今夏に予定されていた東京五輪は延期を余儀なくされた。そのとき、失意に沈んだ選手は少なくなかった。

 競泳の瀬戸大也もそうだったろう。近年は充実の一途にあり、しっかりと2020年へ照準を合わせていた。

 個人メドレーとバタフライを主戦場とする瀬戸は、2019年の世界選手権で、200m個人メドレーと400m個人メドレーの金メダルを獲得。さらに、200mバタフライでも銀メダルを獲得。個人種目としては3種目でメダル獲得という日本選手初の快挙も成し遂げていた。

 日本競泳のエースと呼んでさしつかえない活躍を見せた。

 日本水泳連盟の規定にのっとり、個人メドレーの2種目で五輪代表の内定も勝ち取っていた。

 2020年を見据えた強化が実り、上り調子にあった。

「延期が決まった時は喪失感で抜け殻に」

 その矢先、東京五輪の延期が決まった。

 世界の情勢も考えれば、やむを得なかったとはいえ、受け入れるのは容易ではなかっただろう。しばらく時を経て、瀬戸は自身のインスタグラムで、心境を綴った。

「東京五輪の延期が決まり2週間が過ぎました。

 その間に日本選手権の延期も決まり、自分の中で来年に向けての気持ちの整理ができず、今までコメントを出せずにいました。

 覚悟を持って東京オリンピックに向けてトレーニングや調整をしてきたからこそ前向きな発言ができませんでした。延期が決まった時は喪失感で抜け殻になりました。

 自分はすぐ気持ちを切り替えて来年頑張りますなんて言えなかったし今でもまだ完全に切り替えられてない日々が続いています。コロナの関係もあり練習も全くしてない状態です」

 いつもそうであるように、率直な思いがあふれていた。

エリート街道を歩んできた選手ではない。

 ただ、そのままで言葉は終わらなかった。

「これまで練習をしてきて積み上げて来たことはタイムとして証明できているので今後どうしたら今年以上にタイムを縮め、オリンピックで金メダルという夢を叶えられるか考えたいと思います。

 オリンピックは自分にとって何ものにも代えがたい夢の舞台です」

 瀬戸は決してエリート街道まっしぐらに歩んできた選手ではない。

 2012年、目標としていたロンドン五輪代表には入ることはできなかった。その失意を経て、再起。武者修行のように国内外の大会に出場し続け、たくましさを身につけていった。

 念願のオリンピック出場となった2016年のリオデジャネイロ五輪では、400m個人メドレーで銅メダルを手にした。

「本気だからこそこの表情だと感じられた」

 ただ、目標としていた世界一には至らなかった。メダルを獲ったうれしさよりも、悔しさがあった。

 試合を終えて、感じたことがあった。

「表彰台に上がった選手たちの表情をたくさん見ました。勝った人の笑顔、負けた人の不満そうな顔、いろいろあったけれど、どれも、本気だからこそこの表情だと感じられた。
 そのとき、『あ、そうだ、本気で夢を追いかけてきたから、それも4年間をかけて、ずっと努力してきたからなんだ』と気づいた」

 だから本気で金メダルを追いかけてきた。

 その成果が表れたのが、昨年の世界選手権だ。まぎれもなく、世界一を争う位置へと、自身の努力で自らを押し上げていた。

 だが、目標の舞台は先へと押しやられた。失意は、当然のことだ。

さらに高みを目指しての決断とは?

 でも、失意のままでは終わらなかった。

 先のインスタグラムの続きだ。

「来年でも再来年でもいつやっても絶対に金メダル獲ってやると強い気持ちを少しずつ作っていき、また再スタートをします!」

 練習環境もままならない中、自宅の庭に簡易プールを設置し、さらに腰にチューブを巻いて体を固定し、小さいプールの中で泳げるようするなど、工夫している。

 さらに大きな決断をした。小学生の頃から指導を受けてきたコーチのもとを離れたことだ。

 心機一転、さらに高みを目指しての決断だった。

 1年という時間は、アスリートにとっては長い。想像するよりも、はるかに長い。ましてや、大舞台から逆算して進んできてのことだ。

 それでも瀬戸は、すべてを受け入れつつ、その上で進化を志す。

 そのとき、これまで味わってきた挫折や、そこから這い上がった経験は糧となるはずだ。

 日本競泳のエースとして、今後へ向けて、どう歩んでいくのか。

 挫折を知る人間ならではの時間が、きっと、武器になる。

text by 松原孝臣
「オリンピックへの道」

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