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前例にみる新型コロナウイルスの終息はいつ?

日刊ホントの話

前例にみる新型コロナウイルスの終息はいつ?


 1960年代中ごろに初めて報告されたコロナウイルスですが、当初は飛沫感染や接触感染で伝播し、従来の種は病原性が低く、免疫力が弱い幼年の動物以外は致死的感染を起こさないとされてきました。しかし、2000年代に入って何らかの原因で突然変異した新種に強い感染力と病原性をもつものが発見されるに至り、2020年3月現在までに、7種類の人に感染するコロナウイルスが見つかっています。

 ただし、7種類中の4種類のコロナウイルスは一般の風邪の原因の10~15%(流行期は35%)を占め、たとえ罹患したとしても多くは軽症で済みます。しかし、残りの3種類のコロナウイルスのうち、1種類は2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群」(SARS)、さらにもう1種類は2012年以降発生している「中東呼吸器症候群」(MERS)と、致死率も高く世界的にも大きな問題となりました。

 そして、最新の1種類として、2019年12月以降に世界的な問題となっている、いわゆる「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」が発生・発見されました。以後感染の猛威は留まることを知らず、2020年3月現在、SARSやMERSさえもをはるかに超えた、世界的な脅威となっています。

 2020年3月21日現在、BBC健康科学担当編集委員のジェイムズ・ギャラガー氏が新型コロナウイルスの混乱について「抜け出すための方法は、煎じ詰めれば次の3つだ」とし、1)ワクチン、2)相当数の人が感染して免疫をつける、3)自分たちの行動や社会のあり方を恒久的に変える――と述べつつも、同時に、1)ワクチン:少なくとも1年~1年半は先、2)自然の免疫:少なくとも2年先、3)代替案:明確な終息なし――と発表しているように、まだしばらくは新型コロナウイルスの終息に至る、明るい展望は見えてきません。

 そこで今回は、前例を踏まえつつ、新型コロナウイルスのこれからについて、考察してみたいと思います。

●直近のコロナウイルスの脅威、SARS・MARS

 『公衆衛生マニュアル 2018』の【重症感染症の疫学像】中の「コロナウイルス感染症」には、「重症急性呼吸器症候群」(SARS)と「中東呼吸器症候群」(MERS)が掲載されています。新型コロナウイルスの参考とする視点で、それぞれの特徴や発生から現在までの経緯を見てみましょう(以下、〔 〕内は補足です)。

■「重症急性呼吸器症候群」(SARS;Severe Acute Respiratory Syndrome:サーズ)
病原体:SARSコロナウイルス
自然宿主:不明
媒介動物:不明
潜伏期:2~10日
治療:非特異的治療〔身体全体の免疫底上げを意図した治療〕
(有効性が確実とされる治療法が未確立のため、対症療法が中心となる)

発生から現在までの経緯:
38℃を超す高熱、咳や呼吸困難などを主症状とし、肺炎による死亡例も少なくない(死亡率は10%前後と高い)。2002年11月に中国の広東省で発生し、2003年2月頃からはベトナムや香港などでも流行。さらに患者の移動によって、世界各地に広がった。おもな感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染とみられる。世界保健機関(WHO)が2003年3月12日に警告を発してから世界的流行が終息した(集団発生が封じ込められたことを宣言した)2003年7月5日までの患者数(可能性例含む)は8,098人、死者774人。日本での患者発生は確認されていない。

予防および個人でできる対策:
専門病院で呼吸管理をきちんとすれば、患者の救命や感染の拡大を防ぐのはむずかしくないとみられている。一般的には、1)人込みを避ける、2)手洗いの励行などが予防となるが、さらにウイルス病予防の最善の手段は体の免疫力によるものであるため、3)きちんと栄養をとり、4)睡眠をしっかり確保し、5)規則正しく生活すること――などが重要である。

■「中東呼吸器症候群」(MERS;Middle East Respiratory Syndrome:マーズ)
病原体:MERSコロナウイルス
自然宿主:不明
媒介動物:不明
潜伏期:不明
治療:非特異的治療〔身体全体の免疫底上げを意図した治療〕
(有効性が確実とされる治療法が未確立のため、対症療法が中心となる)

発生から現在までの経緯:
発熱、せき、息切れなど、急性の呼吸器症状を起こし、多くの患者が肺炎になる。また、消化器症状や腎不全などを引き起こすケースも報告されている。2012年9月に初めて感染が確認され、2012年4月よりヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などの中東諸国を中心に、その後ドイツ、フランス、イギリスなど欧州での感染者の報告が相次いだ。SARSコロナウイルスほど感染力は強くはないが、ヒトからヒトへの感染が強く疑われている(ただし、感染源や感染経路などはまだ解明されていない)。2015年6月までの臨床検査診断で確定した累計発生総数は1,338人、死者475人。死亡率が35%前後と非常に高いことからも、世界保健機関(WHO)などが注意を呼びかけている。

予防および個人でできる対策:
MERSの発生が報告されている地域において、咳やくしゃみなどの症状がある人との接触を避け、動物(ラクダを含む)との接触は可能な限り避けることが重要。さらにSARSと同様に、一般的な感染症対策および免疫力の向上が求められる。

●「病原体対策」「感染経路対策」および睡眠の強化

 他方、『公衆衛生マニュアル 2018』の【感染症対策】には、「病原体対策」「感染経路対策」「感受性対策」の項目ごとに、有効な対策を列挙しています。

【感染症対策】
「病原体対策」:1)消毒、2)感染源の特定、3)伝播防止(隔離、検疫、媒介動物駆除など)。
「感染経路対策」:1)直接伝播対策(患者や感染物への接触制限、予防的治療など)、2)間接伝播対策(媒介動物、空気感染などへの対策)。
「感受性対策」:1)予防接種、2)受動免疫〔他個体の産生した抗体を体内に入れることによる免疫〕(免疫血清やガンマグロブリン)、3)化学療法〔化学物質を用いて生体内の病原寄生体に対し直接その増殖を阻害・殺菌することによって疾患を治療する方法。薬物療法の一種であるが、対症療法ではなく、原因療法の一つである〕。

 以上のように、SARS・MARSと新型コロナウイルスの特長を【感染症対策】を照らし合わせてみると、喫緊の人類の脅威ともいえる3種の新しいコロナウイルスには「感受性対策」がないため、よりいっそう「病原体対策」と「感染経路対策」を強化・徹底することが基本といえるようです。

 また、2020年3月5日号の『週刊文春』においてエッセイストで作家の阿川佐和子氏と「緊急対談 新型コロナウイルスとは何か」を行った生物学者の福岡伸一氏は、「終息とはこの病気が日常化するということですね。<中略>私がこの新型コロナウイルスについて予言できるとすれば、数年後はインフルエンザのような日常的な病気になるということでしょうね。予防注射が打てるようになったり、ウイルスの増殖を抑制するような薬も開発されるでしょう」と述べています。

 さらに「誰もが罹る可能性があるし、誰もが保菌者になる可能性もある。できるだけ自分の免疫システムを信じるのがいいですよ。<中略>免疫システムの大敵はストレスなので・・・」と呼びかけつつ「あとはよく寝ることですね」「苦を去って、惰眠をむさぼっているような人は副交感神経が優位にある。つまり、瞑想ならぬ瞑想状態にあり、免疫システムがしっかりしている」と鼓舞しているように、一人ひとりの自己免疫力を強化する取り組みが、やがては社会の感染リスクを下げ、ひいては新型コロナウイルスの終息にもつながるように思います。

 新型コロナウイルスにかぎらず、人類はたえずさまざまな感染症リスクにさらされています。また、新型コロナウイルスの終息宣言ができたとしても、きっと人類のさらなる脅威となる“新型”ウイルスは誕生しつづけるでしょう。ウイルス騒動に踊らされることなく、一人ひとりがその時々の最善を尽くして対応できる成熟した社会となっていく取り組みこそが、終息にむけた次なる一歩となるのではないでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・新型コロナウイルスの大流行はいつ終わる? 生活はもとに戻るのか?
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-51974942
・『公衆衛生マニュアル 2018』(柳川洋・中村好一編集、南山堂)
・「受動免疫」『日本国語大辞典』
・「化学療法」『日本大百科全書』(柳下徳雄著、小学館)
・「重症急性呼吸器症候群」『日本大百科全書』(田辺功著、小学館)
・「重症急性呼吸器症候群(SARS/サーズ)」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)
・「中東呼吸器症候群」『日本大百科全書』(田辺功著、小学館)
・「MERS(マーズ)」『情報・知識 imidas 2018』(集英社)
・「緊急対談 新型コロナウイルスとは何か」『週刊文春』(2020年3月5日号、福岡伸一・阿川佐和子著、文藝春秋)

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