“最高のバッドエンド”が映画史を塗り替える!? 『ライフ』の素晴らしき「底なし沼」感とは
“最高のバッドエンド”が映画史を塗り替える!? 『ライフ』の素晴らしき「底なし沼」感とは
多くの映画はハッピーエンドで終わる。どんなに悲しい結末だとしても、何らかの希望を残すのが常だ。だが、そうした観客側の思い込みを意図的にハズして、唖然とさせるバッドエンドという終わらせ方も存在する。7月8日(土)からから公開された映画『ライフ』も、その一つと言えるだろう。

バッドエンディングの難しさを超越した傑作

バッドエンディングの代表的な例は、近年復活し、新シリーズも好評の映画『猿の惑星』。1968年に公開された第1作では、宇宙飛行士が事故を経て謎の惑星に辿り着き、その惑星を支配する猿人たちに追われるが、実はそこは未来の地球だった……という衝撃が待っていた。絶望に叩き落とすエンディングだが、それが上手くいけば、観客にとって凄まじいエンタメ体験になる。
しかし、失敗したら目も当てられない。ただ、不快感と嫌な思い出だけがこびりつくことにもなりかねない。だからバッドエンディングは、おいそれとは挑戦できない高いハードルなのだが、『ライフ』はその冒険に挑み、見事成功した一作。観る人によって捉え方は様々だろうが、個人的には、鮮やかさや小粋さにおいて『猿の惑星』をも超える、センスあふれる結末だと思う。ワンアイデアでここまで凄烈な余韻を残すという意味では、映画史に記録されるバッドエンディングと呼んでも過言ではない。

『ライフ』は、歴代の傑作を呑み込む“底なし沼”

『ライフ』のストーリーは、一体の謎の生命体と6人の宇宙飛行士たちが、宇宙ステーションという「密室」の中で、攻防を繰り広げる。非常にシンプルな筋立てだからこそ、様々なジャンル映画を貪欲に呑み込んでしまう「底なし沼」のような作品だ。映画『エイリアン』(1979年)に連なるパニックホラーであると同時に、極限状態の中だからこそ育まれる人間と人間の絆を描くドラマという意味では映画『ゼロ・グラビティ』(2013年)を彷彿とさせる。つまり、緊張感の高まりときめ細やかさが、同時に成立している。力強くも、繊細。そんな演出が、先の読めない物語を盛り上げていく。だが、その演出はトリッキーではなく誠実。奇をてらって、狡猾に観客心理を誘導するのではなく、あくまでもひたむきなタッチで私たちをミスリードしていく。だからこそ、鮮やかなオチに驚かされるのだろう。

騙され裏切られてバンザイ!

また、『ライフ』には、いわゆる悪人がまったく出てこない。それぞれ個性は違うが、誰もが真人間で、宇宙飛行士としての誇りと、仲間を思うことができる6人だ。女性がリーダーシップをとっている点もリアルだし、真田広之扮する日本人飛行士がまだパパになったばかりという設定は、私たち日本人に親近感を抱かせる。殺されそうな人物が出てこない。だからこそ、誰がいつ、生命体にやられるかが読めない。それがスリリングだし、またショッキングでもある。

丹念な映画の作りには、これ見よがしな下品さが皆無で、いわゆる安手の恐怖映画とは別次元。なのに、呆然とせざるをえないラストが待ち構えている。この落差。だが、騙された! と悔しがる観客はいないだろう。むしろ、快哉を叫ぶはずだ。裏切られているのに、爽快な気分になる。これは、なかなか出逢えないバッドエンディングの、新たなる代表作である。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

まだ見てないの!? 『ライフ』脚本チームが過去に手がけた話題作『デッドプール』もチェック!
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(更新日:2017年7月11日)

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