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アイデアを書けば料金割引も!? 映画監督が尾道に作った宿「クジラ別館」

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執筆:平辻哲也

“映画の街”広島県尾道市に2019年4月、1日1組限定・1棟貸しのユニークな宿「クジラ別館」がオープンした。

オーナーはCMの演出などを手掛ける広島出身の映画監督・森ガキ侑大氏。「黒澤明監督、小津安二郎監督といった昔の巨匠は旅館にこもって、脚本を書きました。尾道は創造力がかきたてられる映画の街。クリエーターが創作活動などに使ってくれれば」と森ガキ氏は語る。

見晴らしのよい高台に建つ「クジラ別館」(撮影:蔦井孝洋)

映画の街に建つ由緒ある別荘建築「茶園」

尾道は小津安二郎監督の『東京物語』(1953)、大林宣彦監督の尾道三部作『転校生』(1982)、『時をかける少女』(1983)、『さびしんぼう』(1985)など数多くの映画が製作された映画の街だ。

そんな尾道を気に入った森ガキ侑大氏が本気で街を愛し、町おこしのために、もっと尾道を知ってもらうために、クリエーター大歓迎のユニークな宿「クジラ別館」を作った。

静かな夜には暖かなあかりが灯る(撮影:蔦井孝洋)

JR尾道駅から徒歩約25分。山陽本線沿いを東に歩き、尾道独特の坂を上がり、久保小学校近く。見晴らしのよい高台に建つ築100年以上の日本家屋は、歴史と風格を感じさせる。大正から昭和初期にかけて尾道商人が建てた「茶園」と呼ばれる別荘建築で、呉服商人の奥方が茶を楽しむ場所として使っていた。

その文化財級の建物、建具の良さを残しながらリノベーションし、1日1組限定(定員6名)の1棟貸し切り宿に。1階には庭を眺められる縁側付き客室、リビング、トイレ、キッチン、浴室、洗面所がある。

庭を望む縁側付き1階リビング(撮影:蔦井孝洋)

その他にも1間あり、美しい瀬戸内の海を眺めることができる。Wi-Fiも完備され、シーズンを通じて必要なアメニティがひと通り揃っている。

仕事場として使うのにぴったりな2階(撮影:蔦井孝洋)

「尾道空き家再生プロジェクト」で物件を購入

しかしなぜ、映像ディレクター&映画監督の森ガキ氏が宿の経営に乗り出したのか? そのきっかけは、森ガキ氏の長編映画デビュー作となる岸井ゆき主演『おじいちゃん、死んじゃったって。』が2018年4月、街唯一の映画館「シネマ尾道」で上映され、舞台挨拶で訪れたことだった。

森ガキ氏は広島出身。小さい頃に親と尾道を訪れたことはあったが、じっくり街を味わうのは大人になって初めて。斜面に建つ家々、高台から臨む瀬戸内の海や島々……。誰もがどこか懐かしさを覚える“日本の原風景”というべき風景に一気に魅了された。

森ガキ侑大氏(撮影:蔦井孝洋)

「最初、尾道でクリエーターの制作拠点となる場所を作りたいな、と思ったんです。そんなことを『シネマ尾道』の方に話したら『NPO法人尾道空き家再生プロジェクト』の方を紹介され、この物件を見せていただきました。こういう貴重な建物は後世にしっかりと残さないといけないな、と感じました。『その物件は人気物件です』と聞かされているうちに、あれよあれよ、という間に話が進んでいったんですよ」と森ガキ氏は笑う。

その後、大規模なリノベーションを行い、日本家屋を昭和初期の雰囲気そのままに蘇らせた。普段は東京を拠点に活動していることから「シネマ尾道」が協力する形で宿の経営している。

「クジラ別館」という名前の由来は、自身が所属するクリエーター集団「クジラ」の“尾道支店”という意味。宿のフロントを担当するのは「シネマ尾道」で、窓口で宿帳を記入し、鍵を受け取るというのもユニークだ。

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