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『AIR』『CLANNAD』etc.──「元祖泣きゲー」ブランド・Keyの軌跡! 今でも褪せぬ魅力の秘密に迫る

ダ・ヴィンチNEWS

『Keyの軌跡』(坂上秋成:著、Key:監修/講談社)

 2019年の邦画興行収入は、新海誠監督の長編アニメ映画『天気の子』がトップだった。話題作であり、多くの人が鑑賞したわけだが、その感想の中で「『天気の子』を観て『AIR』を思い出した」というものがあった。『AIR』とは株式会社ビジュアルアーツのブランド「Key」から発売された美少女ゲームであり、大きな人気を獲得して、後に映画化やテレビアニメ化した作品だ。ゲームが発売されたのは2000年のことだが、先述のような感想が挙がるほど、現在でもファンは多い。実はそれは『AIR』に限った話ではなく、この「Key」というブランドの作品自体に、多くのファンがついているのだ。『Keyの軌跡』(坂上秋成:著、Key:監修/講談社)は、なぜ「Key」にこれほどの魅力があるのか、詳細に検証している。

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 まず先述した「美少女ゲーム」というのは18禁マークのつく、いわゆる「エロゲー」を指す。そう、「Key」とはアダルトゲームのブランドだったのだ。しかし本書の著者はあえて「エロゲー」などの言葉を使わずに、「ビジュアルノベル」という性的表現を極力廃した表現で文章を構成している。それは「Key」作品の本質は、アダルト部分ではないことを伝えたかったからだ。実際「Key」のゲームは「泣きゲーの元祖」とも呼ばれるほど、泣かせるシナリオが好評を博したのである。もちろんシナリオだけでなく、グラフィックや音楽に至るまで、泣かせる要素が緻密に計算されたものであったのだ。

 そしてその「泣かせる」要素に欠かすことのできない存在が、「Key」作品のほぼすべてに携わってきたクリエイターである麻枝准氏だ。麻枝氏は『AIR』など多くの作品でシナリオライターとして参加しているが、実はサウンドクリエイターとしても多数の楽曲を手がけている。シナリオの本質を理解している本人が、そのシーンにふさわしい音楽をクリエイトするのである。著者もこの部分が、クライマックスで多くのプレイヤーを号泣させた理由であると指摘。また麻枝氏自身も「それこそが自分の最大の強み」だと考えているという。

 さらに現在も人々の話題にのぼる『AIR』だが、そのテレビシリーズを手がけた「京都アニメーション」(以下「京アニ」)の存在も忘れてはなるまい。『AIR』『Kanon』『CLANNAD』といったKey作品をアニメ化した京アニだが、そのクオリティの高さは大きな反響を呼んだ。それまで美少女ゲーム界隈を中心に評価されてきたKey作品が一般のアニメファンにまで浸透していったのは、間違いなく京アニの力によるところが大きいといえるだろう。

 このようにKeyは多くのファンから多大な支持を得たが、すべてが順風満帆というわけではなかった。Keyの中軸たる麻枝氏が、心臓に大きな難病を抱えてしまったのである。またアニメの面で貢献した京アニに関しても、卑劣な事件で多大な被害を蒙ったことは記憶に新しい。しかし麻枝氏は現在でも創作活動を続け、新作ゲームの制作も発表されている。京アニも国内外から多くの支援が集まり、その復活が待たれているのだ。Key作品では多くの「奇跡」が描かれ、人々に感動を与えてきた。なればこそ、我々は新たな「奇跡」が必ずや起こるであろうと思えるのである。

文=木谷誠

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