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急増する「貧困専業主婦」 経済格差の原因は!?/『2億円と専業主婦』⑦

ダ・ヴィンチNEWS

はたらく妻の生涯賃金は2億円!

いま、編集部注目の作家

共働きでリッチに暮らすか? “下級国民”予備軍になるか?
100年生きてしまう時代、あなたはどちらを選びますか。

半日で34万ビュー、コメント1000件の炎上本『専業主婦は2億円損をする』がバージョンアップして登場!

『2億円と専業主婦』(橘玲/マガジンハウス)

◉パワーカップルとウィークカップル

「共働きは貧乏で、専業主婦はお金持ち」という常識はいまや過去のものになりました。この変化を論じたのが、経済学者の橘木俊詔さんと迫田さやかさんの『夫婦格差社会 二極化する結婚のかたち』(中公新書)です。

 図は橘木さんらが、1982年、1992年、2002年の10年ごとに、夫の所得階級別の妻の有業率をまとめたものです。

 これを見ると、1982年(昭和の時代)には、夫が年収100万円から200万円程度の低所得では6割以上の妻が働いており、夫の年収が700万円以上になると妻の有業率は4割以下まで下がります。この当時はまだ、「共働きは貧乏で、専業主婦はお金持ち」という常識は維持されていました。

 ところが1992年(平成の時代)になると、大きな変化が起こります。ひとつは夫の年収が200万円未満の低所得者層で妻の有業率が下がった(専業主婦が増えている)ことで、もうひとつは夫の年収が高くても妻の有業率が下がらなくなった(共働きが増えている)ことです。こうした傾向は2002年も変わらず、低所得者層の妻の有業率がさらに下がった結果、専業主婦かどうかは夫の所得にほとんど関係なくなりました。こうして「貧困専業主婦」が急速に増えることになったのでしょう。

 低所得でも専業主婦の世帯と、高所得でも共働きの世帯が増えれば、当然のことながら、経済格差は拡大していきます。橘木さんらは前者を「ウィークカップル」、後者を「パワーカップル」として、所得がもっとも低いグループ(夫が低所得で妻が無業)と、もっとも高いグループ(夫と妻がともに高所得)で、年間800万円以上の所得の差が生じるとしています。資産は毎年の収入から余剰(利益)を積み立てたものですから、この状態が10年、20年とつづけば、パワーカップルとウィークカップルの資産格差はとてつもなく大きなものになります。

 夫が高所得でも、高い能力や専門性をもつ妻が自己実現のために働きつづけるようになったのはわかるとして、夫が低所得のウィークカップルで、妻の有業率はなぜ下がっているのでしょうか。これについてはっきりしたことはいえませんが、

①妻の学歴が低く、働いてもたいした収入が見込めない
②子どもの数が多くて、働くことで保育料などの費用がかかる
③家族に介護が必要な者がいて働くことができない
④身体的・精神的な疾患があって働けない

 などの理由が考えられます。

「好きで専業主婦をやっているわけじゃないけど、バリバリ働きたいわけでもない」「いまの生活はそれなりに幸福だけど、不満がないわけじゃない」というのが、日本の専業主婦の本音なのかもしれません。

◉世の中が間違っていることを前提に、どうすれば幸せになれるかを考える

 ここまで述べてきたことで、「女がそんなに稼げるわけがない」と「好きで専業主婦をやってるわけじゃない」という「炎上」の背景はひととおり説明できたと思います。

 ここで強調しておきたいのは、このことで専業主婦を責めているわけではないということです。「専業主婦は2億円損をする」のは、「働かなければ収入は得られない」という単純な事実でしかありません。「家族がゆたかに暮らす」というのは、経済的な側面からいうならば、「生涯の世帯収入を最大化する」ことですから、そのためにすべきことは「夫婦が協力し合いながらできるだけ長く2人で働く」に尽きます。これは、「1+1=2」のようなきわめて単純な話です。

 ところが、同じような単純な話を理解してもらえないことがあります。

 私はTwitterでたまに人生設計についてつぶやくことがあるのですが、「人生100年時代には生涯現役が当たり前になる」として、「60歳から年収300万円で10年間働けば総収入は3000万円、20年働けば6000万円になる」と書いたとします。当たり前の話だと思うでしょうが、驚いたことに、これにたくさんのお叱りが来るのです。その理由は、「高齢者に年収300万円の仕事などあるわけがない」「病気になったらどうするんだ」というものです(最近はずいぶん減りましたが)。

 このような「炎上」を見ると、日本人は国民性として、自己評価が著しく低く将来に対して悲観的なのではないかと感じることがあります。しかし、「できない」理由をどれだけ積み上げても問題は解決しないし、状況は改善しません。

 これは「専業主婦問題」も同じです。

 医学部の入学試験で、女子の合格者を減らすために得点が操作されていたことが明らかになったように、ジェンダーギャップ指数が世界最底辺の日本では、女性がいきいきと「活躍」するにはいまだに高いハードルがあります。「セクハラ」「パワハラ」「マタハラ」などのハラスメントが日常的に行なわれている会社も、残念なことに、まだまだたくさんあるでしょう。

 こうした差別をすこしでもなくしていくことはもちろん大事ですが、日本社会が北欧のようにジェンダーギャップのない社会に変わるのを待っているだけでは、何年(あるいは何十年)かかるかわかりません。

 理想の社会などどこにもありません。だからこそ、「世の中が間違っていることを前提に、どうすれば自分と家族が幸せになれるかの戦略をつくる」必要があるのです。

 ではこれから順を追って、「幸福な人生のための土台」のつくり方を考えていきましょう。

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