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ショパン、ビートルズ…名曲の共通点とは? 音楽の不思議な力を文化功労者が考えた!

ダ・ヴィンチNEWS

『音楽ってなんだろう? 知れば知るほど楽しくなる』(池辺晋一郎/平凡社)

 CDが売れなくなった現在においても、人々は音楽を求める。食事や睡眠のようになくなって困るものではない。けれども音楽がないと、世界が寂しいものになる。何かが欠けた気持ちになる。

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 そもそも音楽とは、どんなものだろうか? 歌手が高らかに歌い、楽器がきらびやかな音を奏でる、目に見えない空気の振動に、なぜ私たちはこんなにも心ひかれるのか。

 それを解き明かそうとするのが『音楽ってなんだろう? 知れば知るほど楽しくなる』(池辺晋一郎/平凡社)だ。著者は、数々の音楽賞を受賞する文化功労者、池辺晋一郎さん。2004年には、芸術文化分野における優れた業績を残した人贈る紫綬褒章も授与された。

 本書では、その成り立ちや歴史、仕組みや関わる人々など、あらゆる方向から音楽を見つめていく。

 読者にとって「名曲」とは、どんな存在だろう。ポップス、ロック、クラシック、ジャズなど、様々な音楽ジャンルに名曲が存在する。どれにも共通しているのは「メッセージがはっきりしている」ことだ。

 言葉に置き換えられない漠然とした色彩が頭に浮かんだり、気持ちをどこか遠くの世界へ連れて行ってくれたり、そうした何かを示唆するのが名曲だ。

 これは文学や演劇、絵画でも同じことがいえる。芸術には、何かを喚起する役割がある。今この瞬間を生きている人間の五体の感覚をグっと広げて、過去を思い出し、未来に思いをはせ、今を全身で感じる。心を無限に解放してくれるのが芸術ではないか。

 池辺さんは本書でこんな指摘もしている。名曲として知られるショパンの「英雄のポロネーズ」には、彼の祖国への思いが込められている。といわれているが、ショパンはこの曲にタイトルをつけたわけではない。

 この曲を書いた時期やショパンの行動などから、「彼の祖国への思いが込められているのではないか」と、誰かが想像してつけたそうだ。だから「英雄のポロネーズ」を聴いて、無理に英雄を感じなくてもいい。もっと自由に、理屈を取っ払って、心ゆくまで楽しめばいいのだ。それが音楽である。

 ちなみに音楽には、作者がタイトルをつけていない「絶対音楽」と、作者がタイトルをつけた「標題音楽」がある。たとえばチャイコフスキーの交響曲第六番「悲愴」は、チャイコフスキー自身がタイトルをつけた標題音楽なので、どこに「悲愴」が表現されているのか楽しむといい。

 本書の中盤からは、音楽の歴史の解説が始まる。中世のヨーロッパで、バッハやベートーヴェンをはじめとする偉大な音楽家たちが誕生し、芸術分野に音楽という新しいジャンルが確立された。

 そして音楽の先人たちは、様々な実験を行った。音とは空気の振動のことであり、つまり数学や物理の分野で考えることもできる。ドレミをはじめとする音階、ピアニシモやフォルテシモなどの強弱、そして音の長さと短さ、それらを組み合わせてどのように一曲に収めるのか。

 人々に愛される「普遍性」と「調和」、かつてない新しい仕組みを求めて、音楽家たちはあらゆる音を探求し、成功と失敗を繰り返した。その歴史が本当に興味深い。

 このほかにも、ビートルズが優れたポップスである理由、テレビドラマで流れる音楽が作られるまで、音が音階になって楽譜が発明された経緯など、池辺さんはあらゆる方向から音楽を見せてくれる。

 本書を読んでいると音楽的な知識が増えるというより、心が豊かになる感覚になる。音楽が持つ力そのものを噛みしめているようだ。

 時代が進めば、人間も変わる。人間が変われば、生み出される芸術も変わる。しかし本質は何も変わらない。たとえCDが売れない時代でも、音楽は人間を感動させる存在だ。音楽とは、人間が生み出した心の豊かさの象徴ではないか。

文=いのうえゆきひろ

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