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実の娘とその恋人による夫婦殺害。切り刻まれコンクリート詰めされた残虐な事件の謎が18年後明らかに…?

ダ・ヴィンチNEWS

『坂の上の赤い屋根』(真梨幸子/徳間書店)

 ドロッとねばっこいイヤミスの名手・真梨幸子氏。その期待を裏切らない新刊『坂の上の赤い屋根』(徳間書店)では、凄惨な殺人事件を中心に不快感MAXの人間模様を描き出す。

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 本作の舞台は、世間を震撼させた殺人事件の18年後。「文京区両親強盗殺人事件」と呼ばれるそれは、人格者と評判も高かった夫婦が実の娘・青田彩也子と、その恋人・大渕秀行によって身体中を切り刻まれ、コンクリート詰めにされた事件だ。

 当時、高級住宅街で起こった凄惨な殺人事件はマスコミを賑わせたが、大渕秀行に死刑、青田彩也子に無期懲役の刑が確定したことで一件落着となった。

 事件発生から18年。この事件をモチーフにした小説を週刊誌で連載するため、作家と編集者が関係者に取材をおこなってみると衝撃の真実が明らかとなる――、というあらすじだ。

 実行犯の刑が確定している「文京区両親強盗殺人事件」は、世間的にはすでに“終わった”事件である。しかし実は公判中、彩也子と大渕それぞれの言い分は大きく食い違っており、実際は“どちらが主犯だったのか”はっきりとしていない。

 当時は大渕が“清楚な美人女子高生”の彩也子を洗脳し、金銭目的で夫婦を殺したという記事が多く出回っていたが、ふたりの裁判を見た法廷画家によると、彩也子の容姿は“かなり質の悪い不良ギャル”だったという。このように調べれば調べるほど、当時報道されていた内容と食い違う情報がポロポロと出てくるのだ。真相を追うどころか、謎は深まるばかりなのである。

 互いに「自分は主犯ではない」と主張するふたり。大渕にいたっては獄中で再審請求をはじめている。いったい、どちらの言い分が正しいのか――、この謎にはラストを読むまで大いに振り回されることになる。読めば読むほど、人間の悪の本性に迫るようで、イヤーな気分が増していく。

 また、大渕がいわゆるイケメンであることもイヤミス濃度を高めるスパイスのひとつ。大渕を巡る女たちの嫉妬、欲望、狂気は胸やけを起こすほど強烈だ。ああ、こんな女には近づきたくもない。そう感じさせる嫌悪感、不快感は、さすが真梨作品である。

 そしてタイトル『坂の上の赤い屋根』についても、触れておかなければならない。坂の下から見上げた、“空を下から突き刺すような。まるで血まみれのナイフのような”赤い屋根。これは殺害された夫婦の自宅の屋根を指すが、ある“象徴”にもなっている。

 その象徴とつながる「わたしが人殺しになったのはこの街のせい。」という帯のコピー。この意味を知る時に触れる感情は、どこか自分にも身に覚えがあるものかもしれない。そしてラストには期待通りの「これぞイヤミス!」と震える結末が待っている。

 あーイヤだイヤだ。とんでもないものを読んでしまった。これから赤い屋根を見つけたら、ぞっとして足を止めてしまいそうだ。

文=ひがしあや

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