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生きたクラゲに推進システムを搭載、高速遊泳可能なサイボーグ・クラゲが誕生(米研究)

カラパイア

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Xu and Dabiri 2020, Science Advances

 神秘的で、優雅で、それでいて儚げなクラゲだが、意外や意外。彼らは24時間年中無休でエサを求めて水中を泳ぎ回る力強さがある。

 クラゲが移動するときに消費される酸素量から推定すると、その平均移動コストは他の泳げる動物よりも48%低いのだとか。ああ見えて動物界のいかなる種よりも効率的なスイマーなのである。

 確かに猛スピードで泳ぐわけではないが、同じサイズに換算すると、優雅なイルカや勇猛なサメよりも少ないエネルギーで移動することができる。

 だが、スピードの点でもイルカやサメもうかうかしていられないかもしれない。スタンフォード大学の研究グループが、高速遊泳可能なサイボーグ・クラゲを誕生させてしまったからだ。

電気刺激で筋肉を収縮させる防水型推進システムを搭載


 『Science Advances』(1月29日付)で発表されたサイボーグ・クラゲは、米カリフォルニア州カブリロ海洋水族館で飼育されていたミズクラゲ(学名 Aurelia aurita)に推進システムを組み込むことで誕生した。

 防水型の推進システムは、リチウムポリマー電池、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、電極で構成されたもの。これを爪楊枝のような木製のピンでぐさっとクラゲの体に固定する。

 推進システムを稼働させると電極から電気が放たれ、それがクラゲの筋肉を収縮させる仕組みになっている。

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)B:推進器の各パーツ C:組み上がった状態の推進システム
Xu and Dabiri 2020, Science Advances

遊泳速度がほぼ3倍にスピードアップ。エネルギー効率は1000倍


 実験ではまず普通のクラゲと、サイボーグ化手術を施されたが電源はオフのままのクラゲとで比較してみた。ここから推進システムがクラゲの動作をほとんど邪魔しないことが確認された。

 次いでシステムを作動させてみると、クラゲはぐいぐいと泳ぎ出し、1秒で体長0.15分だった遊泳速度が0.45分とほぼ3倍にスピードアップすることが確認された(各クラゲの大きさの差を考慮し、体長の割合で速度変化を計測したとのこと)。

 だが、すごいのはこれだけではない。スピードアップしても代謝は2倍にしか上昇していなかったのだ。

 推進システムに必要な電力が10ミリワットであることを考えると、これまでに報告されてきたロボットよりエネルギー効率が10~1000倍も高いという。


Bionic Jellyfish Swim Faster, More Efficiently

クラゲは無事。将来的には海洋のモニタリング調査に


 なお、ミズクラゲには中枢神経系がないので、サイボーグ化手術によって苦痛を感じるようなことはないそうだ。

 だからといって、研究グループがクラゲを手荒に扱ったというようなことはなく、手術には細心の注意が払われたとのこと。クラゲから推進システムを取り外すと、傷は自然に治癒したようだ。

 同研究グループは今後、さらなる速度とエネルギー効率の改善に取り組みたいと述べている。将来的にはサイボーグ・クラゲを海洋のモニタリング装置として利用するといった応用が考えられるそうだ。

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iflscience/ written by hiroching / edited by parumo

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