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21世紀枠候補に選出された伊香(滋賀) 滋賀学園に金星をあげることができた理由【前編】

高校野球ドットコム

 秋の滋賀大会で4位となり、21世紀枠の近畿地区候補に選出された伊香。エースの隼瀬 一樹(2年)を中心に守り勝つ野球を繰り広げ、初戦で滋賀学園を破るなど印象に残る戦いを見せた。

 滋賀県最北端の高校である伊香はJR木之本駅から徒歩15分のところにある。今年は暖冬ということもあり、取材日に雪は降っていなかったが、例年は豪雪に見舞われる地域だ。

 約3万人の地元住民の尽力で開校された歴史から校訓は「三萬一心」となっているが、それはグラウンドにも表れている。スコアボードやベンチなどは地元住民の手によって作られたもの。地元の後押しを受けて甲子園出場を目指している。

隼瀬を中心とした投手力

21世紀枠候補に選出された伊香高校(滋賀)

 就任7年目の小島義博監督に新チーム結成当初について聞くと、「手応えは全然なかったです」と予想外の言葉が返ってきた。3年生は1年生大会で近江と同校優勝を飾るなど、力のある世代だったが、夏は2回戦敗退。彼らが抜けて、選手18人と人数が大幅に減り、戦力的にも厳しくなった。

「最初の方はゲームプランが立たない状況でした。選手にも『夏休みは全敗しながらでも少しずつ上手になったら良い』と言っていました」

 その中でも140キロの速球を投げる隼瀬にタテのカーブを武器とする藤井大智(2年)と二人の好投手がいることが救いだった。投手力の高さを生かすべく、経験のある選手をセンターラインに固めて、守備力の向上を図った。

 それでも打球が野手のところに飛ぶ時点で失策のリスクはある。そこで「隼瀬にはストレートで三振を取れるような考え方、配球を伝えてきました」と勝負所では三振を狙うことも求めた。こうした苦しいチーム状況が隼瀬を投手として成長させた一要因にもなったことだろう。

滋賀学園に金星 ”1対0″で勝つ試合を

隼瀬一樹(手前)と藤井大智

 秋は初戦で夏4強の滋賀学園と対戦することになった。旧チームから公式戦を経験している選手が多く、この大会の優勝候補と見られていた。多くの人が滋賀学園の勝利を予想する中で小島監督は選手にこう呼びかけたという。

「周りが期待してないからこそ、ここで勝つことによって、君たちの自信にもなるし、地域や学校の目を掌返しのようにできることもあるから、絶対に勝とう」

 実際に勝つためには1対0しかないと小島監督は考えていた。組み合わせが決まってから試合までの2週間は選手たちに「奇襲をかけて勝つぞ」と暗示をかけて、勝つイメージを徹底的に叩き込ませた。

 試合は先発の隼瀬が3回まで無失点ときっちり試合の流れを作る。4回表に2番の竹原壮吾(2年)が内野安打で出塁すると、思い切って初球に盗塁のサインを出して、見事に成功。走者を二塁に進めると、180センチ96キロと大柄な3番の久保田大成(1年)にセーフティバントを決めて、無死一、三塁とチャンスを広げた。

「全員にセーフティバントの練習を1週間させていて、久保田のやり方がすごく良かったんです」と明かした小島監督。長距離砲の雰囲気を漂わせている久保田に対しては相手もさほど警戒していないこともあり、簡単に決めることができた。続く4番の狩野広志(2年)が犠牲フライを放ち、1点を先制。このリードを守り切って、思惑通り1対0で勝利を収めた。

「彼らが人生の中で経験しようにもできない成功体験を積んでくれたのは良かったと思います。それまではマジメな子たちでしたけど、ネガティブな雰囲気があったのですが、それを覆して結果で伝えることができました」

 強豪相手に勝利したことでチームは自信をつけ、準決勝まで勝ち進んだ。3位まで近畿大会に進めるため、2試合のうち、1試合でも勝てば近畿大会出場となったが、2戦とも完封負けを喫してしまった。

「結局打てないこととエラーですね。僕らとしてはやれることはやったんですけど」と悔しさを滲ませた小島監督。近江戦では11回裏に一死一、二塁からファーストライナーを弾いて、一塁に送球しようとしたのが、悪送球となりサヨナラ負け。3位決定戦の綾羽戦では1回裏の二死二塁から後方へのレフトフライに追いつけず(記録は二塁打)、先制点を献上した。投手力は県内トップクラスであることを示したが、打力と勝負所での守備力に課題を残した。

 目標だった近畿大会出場を逃したものの、幸いなことに21世紀枠で甲子園出場のチャンスを得た。甲子園に選ばれる可能性は9校中3校だが、小島監督は「僕らはいい意味で滋賀学園戦と同じように暗示をかけているので、甲子園に行けるものだと思わせています」と出場する前提で冬の練習に取り組んでいる。さらに出場するだけで満足するつもりはなく、その先を見据えている。

「選手には『甲子園に行ったときに勝てるチームを作りたいよね』という話をしていますし、彼らには春だけでなく、2季連続の甲子園を考えてチーム力を上げていかないといけないということを伝えています」

 前編はここまで。後編では21世紀枠候補として甲子園出場へ、ある「欠かせない思い」についても紹介していきます。後編もお楽しみに!

(文・馬場 遼)

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