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野球殿堂入りした恩師のように――。早大・小宮山監督、慶大・大久保前監督が語る思い出

週刊ベースボールONLINE


1月14日、故・前田祐吉氏(元慶大監督)と故・石井連藏氏(元早大監督)が特別表彰で野球殿堂入り。早大・小宮山悟監督(右)と慶大・大久保秀昭前監督(左)は、恩師の写真の横で感激の表情を見せた

 指導者と選手の絆は永遠である。

 1月14日の野球殿堂入り通知式。故・前田祐吉氏(元慶大監督)と故・石井連藏氏(元早大監督)が特別表彰で野球殿堂入りした。2人同時に栄誉を手にしたことに、大きな意義がある。

 前田氏(60~65年、82~93年)、石井氏(58~63年、88~94年)とも2期にわたり母校を指導し、しかもほぼ同時期にユニフォームを着た。1960年秋の「早慶6連戦」からちょうど60年のタイミングである。通知式に列席した当時の早大の主将・徳武定祐氏が「感無量です。60年を迎えた今年に表彰とは幸せです」と言えば、慶大のエース・清沢忠彦氏が「2人が一緒でないと、単独ではおかしいですよ。負けたほうはあまり(早慶6連戦の思い出を)口にしませんが、その場に携われたことは光栄です」と、第1期の教え子たちは感慨深げに語った。

 石井氏は2015年9月27日、83歳で他界。背中を追うように前田氏は翌16年1月7日に85歳で逝去した。切っても切れない好敵手である。

 野球殿堂通知式のゲストスピーチは、第2期の教え子が務めた。早大・小宮山悟監督、昨秋まで慶大を率いた大久保秀昭監督(現JX-ENEOS監督)とも、恩師が旅立った際の寂しそうな表情を思い出す。師弟関係を超越する、父子に近い間柄であったからだ。

「『鬼の石井』と皆さん言っていましたが、私からすれば仏のような方で、言っていることに一点の曇りもない。間違いはなかった。芝浦工大柏高校(千葉)から浪人(2浪)までして早稲田に入って、メジャーにも行っている。すべて石井さんのおかげです」(小宮山氏)

「朗らかで、大好きな人。時には、真剣に怒ってくれた。私からすればお父さんのようで、同じ時間を共有できたのは幸せでした。指導理論、野球観、すべて前田さんが基になっています。『エンジョイ・ベースボール』の精神を説いてくれた。全員がベストを尽くす。仲間への気配り。自ら考えて行動すること。この3つを大学指導の柱として、生かしてきました」(大久保氏)

 慶大監督として在任5年で3度のリーグ優勝。昨年11月には明治神宮大会を19年ぶりに制して有終の美を飾った。神宮での実績だけでなく、マネジメント能力に長けた大久保氏は180人近い大所帯の中でも「ファミリー」と同様の結束力ある集団を作り上げた。昨年の主将・郡司裕也(今季から中日)も「お父さんのような包容力があった」と明かし、前田氏のイズムをしっかりと継承していたのである。

 小宮山氏は母校監督就任2年目。昨年は春、秋とも優勝を逃し、2015年秋以来、栄光から遠ざかっている。「石井さんと同じ立場になって、シビアな戦いをしている」と、学生と日々、真正面から向き合う日々だ。小宮山氏が石井氏を心酔したように、現役部員にも「あの監督から教えを受けて良かった。将来『良い人に巡り合えて良かった』と振り返るときがくるように、目標としているのが石井さんという男です」。

 小宮山氏と大久保氏に通知式後、恩師の写真の前でポーズ写真をお願いした。いつか偉大な先輩を超える。こうして、伝統がつながれるのだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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