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王者マリノス、連覇への船出。新戦力も期待大、攻守で魅力的に圧倒する「最強」への挑戦

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王者マリノス、連覇への船出。新戦力も期待大、攻守で魅力的に圧倒する「最強」への挑戦

「何も変わらない」新シーズンのスタート

 横浜F・マリノスは11日に新シーズンに向けて始動した。昨季は最終節にFC東京を振り切って15年ぶりのJ1リーグ制覇を成し遂げ、今季は連覇に挑む。さらにACLなどの戦いも重ねる中で、アンジェ・ポステコグルー監督率いるチームはどこを目指すのか。選手たちの視線はすでに同じ目的地を捉えていた。(取材・文:舩木渉)

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 昨季15年ぶりのJリーグ制覇を成し遂げた横浜F・マリノスが、連覇に向けて始動した。アンジェ・ポステコグルー監督が率いる3シーズン目が幕を開けようとしている。

「チャンピオンになった昨年はもう過去のこととして、最初のステップからスタートするのはこれまでと変わらず、昨年と同じように練習からハードワークをし、我々のサッカーをすることだ。何も変わらない。

過去にしがみつくことなく、我々は前を向いて、後ろを振り返らず、目標達成に向けて集中しなければならない。自分たちが何をするのか、何が起こっても前を向き続けることができるかが何よりも重要だ」

 11日にシーズン最初の練習を終えたポステコグルー監督は、そう言い切った。選手たちも優勝に満足や慢心はなく、すでに心も体もフレッシュな状態で連覇に向けて照準を合わせている。日本代表にも定着するなど大きな飛躍を遂げたDF畠中槙之輔は「チャンピオンを獲ったから自分たちが追われる立場とは、みんな思っていない。また上を目指して、下から上り詰めるという意識で臨みます」と力強く語った。

 昨季キャプテンを務めたMF喜田拓也の言葉も印象的だった。

「僕らは変わらなくても周りが変わっていくと思うので、自分らが前年チャンピオンだというマインドみたいなものはいらないと思っています。前年チャンピオンという称号が保証してくれるものは何もない。今年は今年で厳しい戦いが待っていると思いますし、本質を見て、あまり周りに踊らされすぎずに。

自分たちはどんな時もチャレンジャーなので、自分たちのサッカーを出すとか、自分たちがやるべきことをやる方が比重的には全然大きい。逆にそれを出せれば結果がついて来るというイコールなところも自分たちの中にはあるので、あまりそういうもの(前年優勝という結果)には、自分たちから縛られにいかなくてもいいんじゃないかなと思います」

 話を聞いた選手が皆、「優勝は過去」「今年は今年で」といった表現で前を向いていたのは、リスタートの時点でチームの意思統一が取れていて非常にポジティブな状態にあることを象徴していると感じた。

充実の前線。J1二桁得点者が4人に

 マリノスの今季の強化方針は「アタッキングフットボールの継続・進化」と「ACL」だ。選手
スタッフともに入れ替わりはあったものの、昨季の主力は軒並み残留で、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)での厳しい戦いも想定した新戦力の獲得にも成功した。

 何よりも大きかったのは、昨季ベストイレブンに選ばれたDFチアゴ・マルチンスと、左サイドバックとして劇的な進化を遂げたDFティーラトンを、期限付き移籍から完全移籍に切り替えられたことだろう。

 さらにほぼ前半戦のみの稼働でリーグ戦11得点を挙げたFWエジガル・ジュニオと後半戦に加入して優勝に大きく貢献したFWエリキの2人も期限付き移籍のままマリノスに残ることが決定。リーグ戦15得点でW得点王に輝いたFW仲川輝人とFWマルコス・ジュニオールも含め、強力なアタッカー陣の顔ぶれも変わらない。

 ある程度完成されたチームの基盤を壊すことなく、そこに加わる新戦力たちも頼もしい。昨季のJ2で10得点7アシストを記録したMF仙頭啓矢は「何も持たずに挑戦しにきたわけじゃない」と覚悟を持ってマリノス移籍を選んだ。

 育成組織出身で10シーズンぶりのマリノス復帰となったMF水沼宏太は、かつて「2度とマリノスなんて行ってやるか!」とも考えたというが、離れていた9年半での成長を再評価されたことでトリコロールのユニフォームをまとうことに改めて喜びを感じ「マリノスの一員として、点を取っているイメージはできている」と言葉に力を込める。

 徳島ヴォルティスから加入のMF杉本竜士も「自信がなかったら来ていない」と意欲満々。また「このサッカーで自分がどう結果を残せるのかとかも考えて決めました」と言うFWオナイウ阿道の加入で、マリノスには昨季のJ1で二桁得点を挙げた選手が4人になった。

 チャンピオンチームに入っても臆することなくポジション争いに勝っていこうという強い意気込みを持った彼らの存在は、様々な意味でチームにポジティブな影響を与えるだろう。

守備陣にも頼もしい新戦力が続々

 DFドゥシャンやDF広瀬陸斗といった心強いバックアッパーたちが抜けた守備陣にも、ツエーゲン金沢でパワフルな守りを見せていたDF山本義道や、レノファ山口で図抜けたクレバーさを発揮していたDF前貴之が加入している。

「俺のプレーを見てくれていたのか、というのにびっくりした」と語った山本も、金沢で過ごした2年間での成長が認められたのは間違いない。「相手の起点になる選手にボールが入った時に潰しにいくというのは金沢でもやっていて、マリノスでも自信を持って潰しにいけると思う」と手応えを得た守備面だけでなく、「練習から試合を想定してやっていく」とビルドアップ時の貢献の仕方も学びながらディフェンスラインに欠かせないセンターバックへの成長を誓った。

 サイドバックやセントラルMFなど複数ポジションに対応でき、状況判断に優れた前も「チームの足りないところを埋められる選手も必要だと思うので、与えられた時に、与えられたポジションでいいプレーをできるように常日頃から、いろいろな人のプレーを見たり、いろいろ勉強しながらやっていきたい」と、マリノスの独特なスタイルの習得に意欲を燃やしている。

 彼ら新戦力に共通していたのは、加入前からマリノスのサッカーを「魅力的だと感じていた」と語ったことだ。それぞれ見方に違いこそあれど、自分のプレースタイルとの共通点を見出していたという。クラブとして限られた予算で最大限の効果を生み出す補強を実現するため、映像からの情報や印象だけでなく、細かいデータなども参照した上でチームのスタイルと合致するか慎重に判断して動く中で、相思相愛となり獲得に至ったということだ。

 ポステコグルー監督が「ACLに限らず、どの大会でも最強のチームを作るつもりなので、我々にとって新たな挑戦になる。今季は東京五輪による中断期間もあるので、とても忙しい日程になる」と認める通り、今季はリーグ戦だけでなく過酷な移動もともなうACLへの挑戦があり、追われる立場になっての連覇を目指す戦いになる。それでも勝ち続けるのは極めて困難なミッションと言えるだろう。

Jリーグ連覇への鍵…実は「堅守」?

 新体制発表会で2年連続の得点王と年間MVP獲得を宣言した仲川も「厳しく、きついシーズンというのは心得ている」と気を引き締める。

 昨季の優勝によって「厳しい、研究される、サッカーをやっているのであれば、それは普通のこと」という中で、「それを楽しみながらというのもあるし、ブレない自分たちのサッカーをやって、勝利だけじゃなくて、内容が良くないとスッキリしないというのが、選手個々に芽生えてきている」と仲川はアタッキングフットボールの真髄を極めるべくさらなる進化を追い求めていくつもりだ。

 マリノスは今季、5冠を狙える立場にいる。対戦相手からのマークも厳しくなるが、J1連覇、ゼロックススーパーカップ、ACL、YBCルヴァンカップ、天皇杯と全てのタイトル獲得を目指すのは当たり前。そのために勇猛果敢なアタッキングフットボールを貫き通して勝ち続けるには、何をより伸ばしていけばいいのか。そのヒントはGK朴一圭の言葉の中にあった。

「攻撃ばかり着目されるのって、守備陣からすると結構寂しいことで。昨年はリーグ戦で38失点でしたけど、34試合あるので今季は失点率で『1』を切る。それを目指していけば優勝が絶対に見えてくるので、自分の中で意識していきたいなと思います。クリーンシートも増やしたいですし、そこに今年は昨年以上にこだわっていこうかなと。リスクあるサッカーをする中でも、しっかり守るところは守るという、堅守を見せられればと思います」

 広大な守備範囲をカバーして名をあげた叩き上げの守護神は、「消極的になっちゃうとうちのサッカーはいいものが出てこない。いい意味でリスクを恐れずに、前に前に行くから、ああいう面白くて、魅力があって、攻撃的なサッカーが生まれると思うので、そこを失わずに貫き通すことと、対策を練られたときに打開できるか、崩していけるか、こじ開けられるかというところにフォーカスしていければ、結果はついてくるんじゃないか」とも語る。34試合で65得点を奪った攻撃力を昨季よりも引き上げ、失点を減らせれば勝ち星が増えるのは間違いない。

 一度タイトルを獲得すると、その瞬間の喜びをまた味わいたいと思うのは選手にとって当たり前のことだ。新たな仲間を加えた今季のマリノスは観る者を魅了したアタッキングフットボールの本質を見失うことなく、さらに圧倒的な勝利を重ねることで、昨年以上に強く大きな王者になることを目指し“出港”した。

(取材・文:舩木渉)

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