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ただ反応しているだけではない。単細胞生物は自ら意思決定している可能性(米研究)

カラパイア

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 物事をあまり考えない人のことを「この単細胞!」なんて言ったりするが、それはもしかしたら単細胞生物に失礼なのかもしれない。

 新たなる説によると、彼らは私たちが思っているよりも案外いろいろ考えているのだという。
 
 これまで科学者は単細胞生物の行動はプログラムされたもので、刺激に反応しているだけだと考えていた。だが『Current Biology』(12月5日付)に掲載された研究では、その概念をくつがえすかもしれない発見が報告されている。

単細胞生物は、自分の行動を自分で決めている


 もちろん単細胞生物に”心”はない。しかし刺激に対し、どのように反応するのかを自分で判断し、意思決定しているらしい。

単細胞生物の行動は、刺激に反応するだけのプログラムではないかもしれない。むしろ、プログラムによって自分で判断するための仕組みを与えられているようだ。

 アメリカ・ハーバード大学医科大学院のシステム生物学者ジェレミー・グーナワルディーナ氏は説明する。


Can a single cell “change its mind”?

100年以上前からある単細胞生物の行動に関する仮説


 じつはそのような仮説は100年以上前からあった。その発端になったのは、1906年のハーバート・スペンサー・ジェニングスの研究だ。

 その研究では、刺激物であるカルミンという虫を潰して作った染料をラッパムシ(Stentor roeselii)に浴びせ、苛立った彼らの反応を観察してみた。

 するとラッパムシは、体をそらしたり、繊毛を変化させたり、ボールのように縮こまったり、体を切り離したりして反応したのだ。

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 さらにカルミンを繰り返し浴びせると、まるで回避の仕方を考え直したかのように、行動を変化させることまで確認された。これは単純なはずの生物にしては少々複雑な行動だ。

 刺激物を回避しようとする単細胞生物の行動は、単なる反射として片付けることもできる。しかしジェニングスは、ラッパムシがそれぞれ別の行動で回避を試みていると主張した。

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 だが、このジェニングスの研究は、1960年代にそれを確かめてみた研究者によって再現性がないことが明かされた。つまりデタラメであるという烙印を押されてしまったのである。

 ところが、グーナワルディーナ氏はその反証研究こそがいい加減なデタラメであることに気づいた。何しろ実験で使われていた生物自体がまったく違うものだったくらいだ。

 こうして、また新たにジェニングス実験の再現が試みられることになった。


ラッパムシは確かに自ら意思決定をし、行動を変えていた


 グーナワルディーナ氏らはゴルフ場の池から手に入れたラッパムシを使い、まずはジェニングスのようにカルミンを使って刺激してみた。しかし、ラッパムシはちっとも変化しなかったという。

 そこで、カルミンの代わりに小さなマイクロビーズをぶつけてみることにした。するとラッパムシはジェニングスが最初に報告したとおりの回避行動を見せてくれたのだ。

 どのような反応を見せてくれるのかは、ラッパムシの個体やビーズをぶつけた回数によって異なるという。4種すべての行動を試みるラッパムシがいるかと思えば、いきなりボールになって体を切り離し、逃走を試みる個体もいた。

 複雑な行動をとるには複雑な多細胞生物でなければならないという常識が揺らぐような発見だ。

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個々の細胞にも自立性が備わっている可能性


 「この実験の面白いところは、単細胞がこれまでのイメージよりもずっと複雑な行動をとれることを明らかにしてくれた点です」とグーナワルディーナ氏はコメントする。

 どうやら苛立ったラッパムシは半々の確率で、縮まるか泳いで逃げるかを選んでいるらしい。それはまるでコイントスで次の行動を決めているかのようで、そうなる理由の解明がグーナワルディーナ氏の次の目標だそうだ。

 また個々の細胞にある程度の自律性が備わっているという発見は、病気の発症メカニズムの研究にも新しい視点をもたらすかもしれないそうだ。

References:Single-celled organism can ‘change its mind’ despite lacking a nervous system/ written by hiroching / edited by parumo

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