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危険な小惑星との衝突から逃れるには?太陽系全体を動かす恒星エンジン(ステラーエンジン)構想

カラパイア

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ipicgr from Pixabay

 世界の頭脳明晰な研究者たちは、地球へ飛来する危険な小惑星を破壊する方法や、少なくともその進路をズラす方法をすでにして考案している。

 だが万が一、たったひとつの小惑星ではなく、流星群が飛来するというとんでもない事態に地球が脅かされたらどうすればいいのだろうか? あるいは近くの恒星が超新星になり、その爆発で母なる地球を吹き飛ばそうとしていたら?

 地上で暮らす我々にはまったく実感できないが、じつはこの太陽系は猛スピードで移動しており、2億3000万年という周期で銀河の中心から3万光年離れた軌道を周回している。その旅の途中で、地球を滅ぼしてしまいかねない危険に巻き込まれる可能性が絶対にないとは言えない。

 そんなカタストロフに遭遇したら対象を破壊するなんてことはできない。生き残るには、どうにかしてそれを回避するよりないのだ。

 だが、ご安心あれ。それを可能にしてくれるのが、「恒星エンジン(ステラ―エンジン:stellar engine)」なるものだ。

How to Move the Sun: Stellar Engines

巨大なパラボラアンテナ型鏡で太陽を動かす


 もっともシンプルな恒星エンジンは「シュカドフ推進器」と呼ばれるタイプだ。

 これはいわばパラボラアンテナ型の巨大な鏡で、太陽の光を反射する。このときに反射される光子の反動によって推進力を得るのだ。反動で推進力を得るという点では、推進剤を噴射して推進力を得るロケットとまったく同じだ。

 太陽を覆えそうなほど巨大なシュカドフ推進器であるが、厚さは数ミクロン単位の極薄に作らねばならない。光子の推進力で太陽から離れる力と、太陽の重力で引き寄せられる力とでバランスさせるためだ。

 また形も重要で、太陽を完全に覆ってしまってはいけない。そうしてしまうと、反射した光が太陽に戻ってしまうので深刻な事態となる。これを防ぐためにパラボラアンテナのような形にして、一方向に光を反射しなければならない。

 さらに光に照らされて太陽系の惑星が熱くなりすぎたり、反対に太陽の熱が届かなくなったりしてしまわないように、光子を飛ばす向きは太陽の北極か南極にしなければならない。ゆえにシュカドフ推進器では、太陽の自転軸の方向にしか移動できない。

 いずれにせよ、これが太陽を動かすシュカドフ推進器の原理で、フルスロットルの状態なら2億3000万年で100光年は移動できる。もちろん太陽が動けばその重力によって他の惑星もついてくる。

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仮説上の構造物ダイソン球を利用した恒星エンジン


 だが、危機を回避するにはこれでは遅すぎる。そこで米イリノイ州立大学のマシュー・カプラン氏が設計し、『Acta Astronautica』(12月号)に掲載された論文で詳しく解説しているのが「カプラン推進器」だ。

 カプラン推進器の仕組みもまた従来のロケットに似ている。だが、その動力には「ダイソン球」という仮説上の構造物を利用する。

 ダイソン球は卵のカラのように恒星を覆い、そのエネルギーを利用する仕組みだが、カプラン推進器では日光を太陽表面に集めることでそこを超高温に熱し、数十億トンという太陽質量を浮き上がらせる。

 これをカプラン推進器で回収し、水素とヘリウムに分解。ヘリウムは推進器内部の熱核融合炉で燃焼させ、10億度近い放射性酸素を宇宙へ向かって噴出する。これが太陽を動かすメインの推進力となる。

 しかし、これだけでは推進器が太陽に突っ込んでしまう。そこで今度はヘリウムと一緒に集められた水素を使う。これを粒子加速器で太陽へ向かって噴射し、メインジェットの推進力とバランスさせる。

 このカプラン推進器ならたった100万年のうちに50光年ほど太陽を移動させることができる。これなら超新星の爆発を回避することもできるはずだ。

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Pitris/iStock

太陽系全体を巨大な宇宙船に


 太陽を燃料にしてしまうなんて、もしそれを使い果たすようなことになったらどうするのか? と心配になる人もいるかもしれない。

 だが太陽はとにかく巨大なので、この程度では表面がほんの少し削れるだけだし、じつはカプラン推進器を使うと結果的には寿命が伸びることになるようだ。太陽の質量が減り、そのために燃焼速度が遅くなるからだ。

 カプラン推進器はただの緊急回避装置としてだけでなく、太陽系全体を宇宙船に変えてしまう素晴らしい可能性が秘められている。

 天の川を周回する軌道を逆に移動することだって、途中で遭遇した星々を植民地に変えることだってできる。あるいは天の川から脱出して、別の銀河へ移住することだってできるかもしれない。

 思いついたからといってそう簡単に作れるような代物ではないが、いずれ太陽の寿命が尽きることは確実だ。人類の生き残りをかけて、早急に着手すべきプロジェクトの1つとして開発を進める必要があるのかもしれない。

References:ctvnews / sciencealertなど/ written by hiroching / edited by parumo

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