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淡々と流れる物語なのに目が離せない、そこに灯るほのかな希望…オダギリジョー主演「オーバー・フェンス」

music.jp|テレビ・映画

淡々と流れる物語なのに目が離せない、そこに灯るほのかな希望…オダギリジョー主演「オーバー・フェンス」(C)music.jp|テレビ・映画 「苦役列車」「もらとりあむタマ子」の山下敦弘監督がメガホンをとった、孤高の作家・佐藤泰志の同名の小説「オーバー・フェンス」の映画化。オダギリジョー、蒼井優、松田翔太という実力派俳優陣を迎え、地方都市で暮らす人々の姿を通して、もがきながらも生きてゆく日常を描く。

原作者は没後約20年を経て、現在再評価されている函館出身の作家・佐藤泰志。芥川賞候補に5度もなりながら1990年に自ら命を断つ。今作は2010年公開・熊切和嘉監督「海炭市叙景」、2014年公開・ 呉美保監督「そこのみにて光輝く」に続く函館三部作の最終章である。自身の故郷の函館に戻って職業訓練校に通った日々を元に描かれた。

あらすじ

東京の大手建設会社をやめ、故郷の函館に戻った白岩(オダギリジョー)。アパートと職業訓練校に往復するだけの日々を送っている。義父からは妻と子供にはもう会わないでほしいと手紙が届いている。「何の楽しみもなくただ働いて死ぬだけ」と、惰性で生きていた白岩は、ある日、鳥の真似をするおかしなホステス・聡(蒼井優)に出会う。破天荒な聡に白岩は急速に惹かれてゆく。そして通っている職業訓練校では、大工の実習とソフトボール大会の練習をしながら、何やら不穏な空気が流れていた。

普通に働いて普通に結婚して子供作って、そういう人間だと思っていた。

今作で主演のオダギリジョーが演じる白岩は、自分のことを「普通の人生を送る普通の男」だと思っている。だから妻がおかしくなった理由が今でもわからない。仕事が遅くなる日々が続いていたら、生まれたばかりの赤ん坊を抱えた妻がいつの間にか病んでいた…。「殴ってもないし、家にもちゃんと帰った。なのにどうして」と苦悩している。

「すぐだよ、すぐ。楽しいことなんかあっという間になくなるから、今のうちにたくさん笑っておいたほうがいいよ」
居酒屋でバカ笑いを続ける若い女に向かって、白岩は冷ややかに水を差す。この白岩の閉塞感をベースに、モノトーンで物語は続いてゆく。

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もう死んだみたいに生きなくていいと思ったのに!

白岩の空虚な日常に光を射し込むのは蒼井優演じる聡との出会いだ。
「もう死んだみたいに生きなくていいと思ったのに!」聡は白岩に激しく訴える。聡もまたどうしようもない孤独を抱えて生きてきたのだ。蒼井優が体当たりで演じるガチョウの求愛は痛々しく、愛を求める孤独な人の悲しさが強く伝わってくる。

聡は白岩に「奥さんがおかしくなったのはあんたのせいだ」と世の女たちの代弁をするかのように責める。「本当にわからないんだ」と言う白岩がせつない。悲しいことに男は永遠に女の求めていることがわからないのだ。
聡が、白岩の「わからない」ということを受け入れて、やさしく包み込むような顔でその言葉を聞いているシーンはとてもいい。かっこ悪くても心を開いてみせることは大切なんだということを思い出す。

オーバー・フェンス

日常はほんのささいなことの積み重ねで、ある日突然くるりと姿を変えてしまうかもしれない。その危うさがこの作品では見事に描かれている。だから淡々と流れていく物語なのに、目が離すことができない。普通の人々の普通の生活は、ただ生きていくだけでも本当は息苦しい。
しかしラストの象徴的なシーンは、そんな日々でも何かを超えていけるかもしれないと、思わせてくれる不思議な爽快感のある作品である。

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