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三浦春馬、アンドリュー・ロイド=ウェバー日本初演作品への強い思いとは 『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』

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三浦春馬、アンドリュー・ロイド=ウェバー日本初演作品への強い思いとは 『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』


ミュージカル界の巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーが手がけた『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』が、ロンドン・ウエストエンド初演から22年を経て遂に日本初演される。1950年代末のアメリカ・ルイジアナを舞台に、脱獄囚「ザ・マン」と、彼をイエス・キリストの生まれ変わりだと信じてしまう少女スワローを軸にした物語で、三浦春馬と生田絵梨花という顔合わせも楽しみなところ。「ザ・マン」を演じる三浦春馬に話を聞いた。

ーーアンドリュー・ロイド=ウェバー作品初挑戦となります。

「ザ・マン」という男は、闇のようなものを抱いていて、世の中を信じられず、自分の存在についてさえ疑心暗鬼になっていた。それが生田さん演じるスワローという純粋な少女に出会い、その心にふれたことで、彼の中で自分自身を肯定できる瞬間が一瞬訪れる。そんな心の浄化のようなものを、二時間半もしくは三時間という時間の中でどう演じられるか、とても興味があって、そこでやりたいと手を挙げさせてもらったという感じなんです。完全なるミュージカルをやる難しさを感じつつも、心の動きをどう表現できるか、新たな思いで取り組みたいと思いました。¬これまでにも音楽劇やミュージカルをやらせていただいてきましたが、セリフを歌に乗せるという経験はなかったんです。どのナンバーもショーアップされている、そんな演目しかやって来ていないので、そこが新たな挑戦だなと思っていて。いかに自然に、お客様にうまく届けられるか、怖い部分でもあり、楽しみな部分でもあります。​

作品についてはいろいろと映像を見ました。どのカンパニーでも、アメリカ南部の雄大な景色を表現したいのか、割と舞台装置がシンプルなので、そこを演出の白井晃さんがどう作り上げていくのか、僕としても楽しみにしているところです。ゴスペルが流れたり、宗教の流れを汲んでの演出ということは絶対出てくると思うので、キリスト教を重んじる人々を描写する上で舞台装置をどのように白井さんが演出に取り入れていくのか楽しみです。​


三浦春馬



ーーアンドリュー・ロイド=ウェバー作品の印象は?

最初に接したアンドリュー・ロイド=ウェバー作品は『オペラ座の怪人』で、20代前半にロンドンで観たんですが、ただただ圧倒されました。シャンデリアを使った演出など、劇場自体は小さいけれども、余すことなくステージングされているなと。客席の上さえ埋めるように使っている演出が忘れられないです。ただ、自分でやりたい、やれるとは想像できなかったです。当時の自分は舞台作品としては地球ゴージャスの公演を経験したくらいで、ミュージカルというジャンルで戦えるとはまったく思っていなかったですから。ミュージカルという産業で、一人のプレイヤーとして仕事できる可能性を思い描けるようになったのは、『キンキーブーツ』以降のことなんです。だからその当時は素直に「すごいな」と思っていました。​

ーー歌唱面について何か準備しようと考えていらっしゃることはありますか。

カントリー・ミュージックのようにアメリカ南部に根付いているバイブスにふれるのもいいよねと、歌唱指導の先生がおっしゃっていて。1950年代に根付いていた雰囲気やリズムを自分の中に入れておいてもいいかなと思っています。準備としては、これは『キンキーブーツ』に入る前にやっていたことと同じになってくるんですが、自主練、声出しです。今まで習ってきた基礎トレーニングを、一時間なり一時間半なりまた続けないと、舞台に立つ上での体力が続かないだろうなと。最近は映像の仕事が多くて、基礎トレーニングもなかなかできなくなっていて……。地方での撮影の合間にカラオケに行って声を出したところ、やっぱり弱っていたので(苦笑)、またやらなきゃと思っています。


三浦春馬



ーー劇中歌の一つ「No Matter What」は世界的なヒットともなっていますが、楽曲の印象についてはいかがですか。

日本語の歌詞に置き換えたとき、この作品の独特な世界観を崩さずにしっかり届けられるようにしないといけないわけで、そこは、難しそうだなと思いつつ、自分としても期待しているところなんです。楽曲全体を聴くと、飽きさせない魅力があるなと思いますし。曲調にしても、リズムにしても、バキッと変化するところがたくさんあって、お客様の集中をしっかりつなぎとめてくれるような魅力的な楽曲ばかりだと思います。転調が多かったり、しっとりとしたバラードの中にゴスペルが入ってきてまた戻っていったり、高揚感を感じてもらえるのではないかと思います。今回集まってくださった出演者の方たちも、非常に歌が上手い実力派ばかり、化け物揃いなんです(笑)。そんな中で、歌うことももちろんなんですが、僕はしっかり芝居をしないといけないなと。感情が今変わったなとか、知性が見えるような演じ方が、歌の中でどれだけできるか、そこを目指してたくさん稽古していかなければと思っています。

ーースワローを演じる生田さんの印象はいかがですか。

最近では『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』を観ました。すばらしい女優さんだと思っています。あの世代で、舞台の上に立って、はかなさもありながらも、すごく光っている。すばらしい歌と存在感で、唯一無二の光を放っている方だなと。今回一緒にお芝居するのが楽しみです。スワローは、「ザ・マン」に嘘をつかれているのに、隠れ、逃げようとしている彼を許すという、大らかで神秘的な役どころなんですね。絶対彼女の歌声にマッチすると思います。


三浦春馬



ーー白井さんの演出についてはいかがですか。

今回、ミュージカル作品ではありますが、ストレートプレイのときのような細やかな指摘、指導を受けたいと思っています。白井さんの作品では、シアタートラムで上演された『マーキュリー・ファー』を観たとき、役者さんたちの演技力もさることながら、それを引っ張っていく白井さんの演出力、発想力がすごいなと。今回の作品は物語としては割と平坦なところがあるように思うのですが、箇所箇所でぐっとエッジをつけてくださることに期待していますし、自分も白井さんの想像力を超えるようなアイディアや動きを提供できたらいいなと思っています。

ーー今年初めに主演された『罪と罰』でも神と人間というテーマが軸としてあったかと思うのですが、今回のこの作品ではイエス・キリストの生まれ変わりと思われてしまう存在を演じられます。

上演台本の前の段階のホンしか読んでいないので、まだ断定はできないんですが、今回の作品についていえば、僕が演じる「ザ・マン」は神を信じていないんじゃないかと思うんです。歌詞を見る限り、僕には祈ってくれる人もいない、誰もいないというところから入っていって、世の中の仕組みはねじまがっているということを歌い上げていく。気持ち的にひっぱくしたところのある男性像というものを、これから台本を読み込み、白井さん、生田さんと一緒に練って、創り上げていけたらいいなと思っています。台本を読んで何を感じるのか、楽しみです。

『罪と罰』では、勝村政信さんの手ほどきを受けられたこと、舞台上での動き方についてのレクチャーを受けられたことが、自分としては大きかったです。動きすぎてしまうとうるさかったりしますけれど、一連のセリフの中で、一度セリフを止めて、心情に合ったジェスチャーを一つ入れてまたセリフをしゃべる、そのテンポ感についてだったりとか、お客様を飽きさせないためのテクニックだったりを、いろいろ教えてくださったんです。それを一つひとつクリアしていく、自分の中に浸透させていく作業がとても刺激的で楽しくて。すごく論理的に教えてくださる勝村さんは、最近の自分の師ですね。​


三浦春馬



ーー「ザ・マン」の感情の動きを表現していく上で大切にしたいことは?

一度歌詞をセリフとして語ってみるとまた別のものが見えてくる、ということをよく言われます。今回の作品では特にそれをやっていかないと感情が見えづらいところがあるのかなと思って。僕が担当する箇所ではセリフがメロディに乗るところが多いので、一度セリフとしてどう相手に発するかやってみた方がスムーズにできるようになったりするのかなと思います。

樹木希林さんの本で、人の痛みにふれたり、人の思惑をしっかり考えて寄り添うことが役者には大切だと書かれていて、その通りだなと思って。なかなかそれが煩わしかったり、自分に自信がないとできなかったりしますが、この仕事を通してなら、戦えるし、恥ずかしい気持ちもなく寄り添うこともできる。今回の稽古場でも、自分の意見をしっかり話し合って、役柄を通していろいろなキャストさんとコミュニケーションをとって支え合っていけたら、いい舞台ができるんじゃないかなと思っています。本当に難しい話なんですけどね(笑)。哲学的だったり、小難しいとかということではないですが……。『罪と罰』と少しかぶるのかなと思うのは、ある男が浄化されていくということで、その浄化のプロセスをいかに観客の心に届くよう演じられるかに興味をもって挑戦を決めたことです。プロデューサーに「ザ・マン」は、ただ歌が上手いとか、芝居が上手いということではなくて、舞台の上でしっかり映える人を置きたかった。その上で、「ザ・マン」がいかに気持ちをクリーンなところにもっていくか、その芝居を観たい、ということを言われてすごくやる気になりました。最初、荒訳を読んだ状態では悩んでいたんです。自分がこの役どころを本当にやりきれるか、演じる上で高揚できるか、合っているのか、疑問だったので。でも、プロデューサーのそういった言葉によって、「ザ・マン」として、どこに救いを求めて役としての自分の感情を成立させられるのか、挑戦したいなと思って。スワローというヒロインと出会ったことで、それまで未来に希望を持てなかった彼が心洗われていく、そこに非常に興味があります。​


三浦春馬



ヘアメイク:AZUMA(M-rep)
スタイリスト:TAKAO(D-CORD LIMITED)

取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=池上夢貢

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