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『ドラえもん』奇跡の最新0巻! 6つの第1話に50年目の大発見!?

ダ・ヴィンチNEWS

『ドラえもん 第0巻』(藤子・F不二雄/小学館)

 ドラえもん50周年に、奇跡の発刊となった『ドラえもん 第0巻』(藤子・F不二雄/小学館)は、発売前から重版がかかるほどの人気で、書店でも売り切れが続出しているそうだ。

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「『ドラえもん』には6つの異なる第1話があった!!」というコピーもさることながら、「てんとう虫コミックス」版の第0巻というのが『ドラえもん』を読んで育った数多の世代にヒットしたのだろう。電子書籍版よりも紙媒体のコミックスのほうに注文が集まっているのも、うなずける話だ。

 昭和40年代生まれの筆者も、当然「それは読まにゃならん」と発売日に手に入れ、読んでみた。収録されている「6つの異なる第1話」は、実に興味深かった。

■幼児誌と学年誌と正月と

 本書に収録されているのは、『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』『小学三年生』『小学四年生』の1970年1月号に掲載された、6つの第1話だ。

 この手の幼年誌や学年誌は「年度」で連載も変わるイメージが強いが、『ドラえもん』は1月号で始まっているため、6作品のうち4つが「お正月をダラダラ過ごしているのび太のもとに、突然ドラえもんが現れる」パターンで始まっている。

 詳細はぜひ本編を読んでいただくとして、面白いのはどののび太も、机の引き出しから現れる青いロボットを、簡単には受け入れようとしないのだ。

「ひきだしから でてくるなんて きもちわるいや」(『よいこ』より)
「ひきだしから でてくるなんて、きみが わるい」(『幼稚園』より)

 そもそも、ドラえもんは「のび太のために派遣された」のではなく、「孫の孫・セワシくんの現在を良くするため」に、「のび太の目付役」としてやってくるのだ。

「ダメなお前のせいで未来で困ったことになるから、今を変えろよな」というスタンスだから、のび太への態度も、なんだかふてぶてしくて上から目線。

「いろいろべんりなものが発明されたけど、ばかにつけるくすりだけが、まだできていない」(『小学四年生』版の第2話より)

「未来の道具」も固有の名前などを紹介せずに、普通に「これを使って」と渡すので、第1話では「なんかすごいことをやっている」とはわかるのだが、当時の小さな読者たちには、少々難解な話だったような印象を受ける。

 それでもギャグマンガらしく、ドラえもんが自分の任務より「どらやき」に興味を持ってしまったり、便利な道具を使って失敗したりする姿を見せることで、小さな読者たちは「どこか間が抜けた、にくめないロボット」として、ドラえもんに興味を惹かれたのだ。

■のび家50年目の真実!?

 そして、この第1巻の『小四』版の第1話に、SNSでは「新発見だ」と声が上がったコマがある。それは、p.62の「のび太の未来のアルバム」の2枚めの写真。

1988年 父親の会社をつぐ(のび太とパパ+社員がワイングラスで乾杯)

 なんと、のび太のパパさんは「会社の社長(経営者)」であり、のび太は「けっこうなボンボン」だったのである。

 世界中で普及している、てんとう虫コミックス第1巻の第1話は、この『小学四年生』版の第1話を加筆修正したものであるが、第1巻の16ページの同じコマでは……

1988年 しゅうしょくできなくて自分で会社をはじめる

 とある。1988年はバブルの真っ只中で、起業はリアリティのある話だが、改変はもっと前で、理由は「のび太は未来で失敗つづき」を強調するためだと思われる。

 他の写真のコメントには「大学入試らくだいなぐさめパーティー」「1993年 会社丸やけ記念」「1995年 会社つぶれ借金取りおしかけ記念」とあるので、並べたときに「父親の会社をつぐ」だと、そこだけ「華やかな人生の記念日」になってしまうからだ。

 初めて読んだときから40年以上、のび太は「日本の標準的な中流家庭の子」だと思って生きてきたが、社長の息子という点では「スネ夫寄りだったのか」と驚いた。

 小学館の『ドラえもん』公式サイトでは、第1巻の第1話の試し読みもできるので、比較してみるのも楽しい。

 サッと読んだだけでも、こんな発見や驚きがある『ドラえもん第0巻』。6つの異なる第1話だけでなく、「ドラえもんの連載予告カット」や、藤子不二雄先生(当時)が、ドラえもんというキャラを生み出すまでを描いた『ドラえもん誕生』も収録されており、まさに第0巻という充実の内容となっている。

 気になったのは、解説文において、フルカラーのドラえもんの「手首と足首の色」を「肌色」と表記していることだ。肌色の定義が論じられて久しい現代において、世界中の小さな読者たちに愛されている『ドラえもん』の第0巻には、好ましくない表現だと感じた。重版以降で修正が入ることを願う。

 令和元年に第0巻が発売された奇跡と、『ドラえもん』がこの世に生まれた奇跡を、天国の藤子・F・不二雄先生に感謝しつつ。

文=水陶マコト

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