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芸能人はテレビとネットをどう行き来するのか? 放送作家・鈴木しげきの「テレビを読む」

テレビドガッチ


人気グループ・嵐がSNSを解禁した。Twitter、Instagram、Facebook、Weibo、TikTokの5つを開設。YouTubeチャンネルの登録者は230万人を突破している(2019年11月15日現在)。これ、スゴイ数字だ。
女優の本田翼さんもYouTubeチャンネルを開設しており、その登録者は120万人以上。あげている動画はわずか3本だが、チャンネル開設1周年記念イベントを開催すると、会場のさいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナに計1万7000人が来場。大好きなゲームを通じてファンと交流を楽しんだ。
芸能人からYouTuberになった人もいる。“カジサック”ことキングコング梶原雄太さんだ。そしてオリラジ中田敦彦さんもYouTubeを新メディアとして捉え、主戦場にしている。2人とも大成功を収めている。

が、有名な芸能人だからといってYouTubeで必ずしも成功するとは限らない――これは、あちこちで語られていることで、実際に「テレビの人気者」がYouTubeデビューしてもさほど反応がなかった、という例は少なくはない。

この時代、「テレビの人たち」がネットを下に見ているという感覚はさすがに減ってきているが、まだそう思っている「テレビの人」がいるのも事実だ。
そんな中で上記の芸能人たちがネットでも好評なのは、彼らが本気だからだろう。嵐は本気でファンにメッセージを届けたいと思っているし、本田翼さんがゲーム好きなのはガチだし、カジサックや中田敦彦さんはテレビを捨ててもネットで目指すエンターテイメントをやってみたかった。だから受け入れられた。

これに対し、その逆はどうだろうか。ネットからテレビへの流れだ。
これまでYouTuberが地上波のテレビに出るのはあまりメリットがないのではないか、そんなふうに言われてきた。
まず、ネットで大変な人気者なのに、テレビへ行くとルールや勝手が違って“扱い”がよくなかったり、自由度が少なかったり、はたまたファンであるネットユーザーがテレビ出演自体を快く思っていなかったり……。そんな点からテレビ出演には消極的な人が多かったように見える。
しかし、これも変わり始めるかもしれないと思ったことがあった。

息のあった掛け合いで視聴者を楽しませている男女2人組の人気YouTuberヴァンゆん(ヴァンビくん&ゆんちゃんのコンビ)が、筆者の構成する『ダウンタウンDX』に出てくれた。
彼らはYouTuberのプロダクション「UUUM」(ウーム)」所属だったが、現在は芸能プロダクション「太田プロ」(有吉弘行さんや劇団ひとりサンらの事務所)に移籍している。チャンネル登録者が100万人を超えるYouTuberが大手芸能事務所に所属するのは初めてのケースだろう。
彼らを取材した番組スタッフによると、「自分たちはテレビでもやれることはやっていきたい」「テレビに出ることで自分たちを知らなかった人たちにも知ってほしい」と語っていたという。
ネットとテレビを対立させて考えていないようだ。それぞれで視聴者を楽しませる方法があって、どちらにも対応していきたいという姿勢だった。
もちろんそれはひとつの挑戦だと思うが、ヘンに肩ひじ張らない姿勢が今っぽい印象だ。

以前からトップYouTuberのHIKAKINさんは地上波のテレビ出演に対応しているが、これからはそんなスタイルの人も現れるのかもしれない。もちろん自分はYouTubeが好きでテレビに興味がないという人もいる。活動のスタイルは様々になっていくだろう。

そんな中、テレビの人がネットに参入するには「本気」が必要だが、ネットの人がテレビに対応していくには「テレビ作法の会得」がカギと言えるだろう。なにせ、テレビは集団エンターテイメントだからだ。

お笑い第7世代はテレビとネットを対立させていない

お笑い界の若手たち――例えば、霜降り明星、四千頭身、宮下草薙、ハナコ、Aマッソら……を指して「お笑い第7世代」と呼んでいる。何をもって第7世代なのか明確な定義はないらしいが、なんとなくその括りはストンッと理解できる。
彼らはテレビ出演の際にガツガツしないで、平温の自然体で挑んでいる(ように見せている?)。実際は下準備をしっかりして意気込みも十分だろうが、そう見えないのだ。前の世代に比べると。

さらに特徴をあげると、デビューまもない頃から企画やネタ動画をネットにあげている者もいて、テレビとネットは別物だと思っているけど対立するものとは考えていない点だ。それぞれでメリットのある露出をしたい、ウケたい、そんな感じだろうか。

しかし上の世代の芸人たちはちょっとばかり壮絶な戦いを経て、ネットに活路を見いだしており、そこは時代の巡りあわせというしかない。
カジサックはテレビを捨ててYouTubeに全力を注いでいるし、オリラジ中田さんもテレビでは発揮しづらい自らの可能性を武器にネットで活躍している。彼らはテレビで苦い経験をしたからこそネットに対して誠実になれ、成功した。

そして、ロバート・秋山竜次さんが気鋭のクリエイターを紹介する動画「クリエイターズ・ファイル」も、当初はテレビバラエティ的な演出から始まっている。が、すぐに「スタッフ笑いはいらない」「ツッコミは不要」などネットへの最適化をした。

すでに見本はある。先駆者たちの恩恵に与れるのは新しい世代の特権だ。第7世代はテレビもネットも(ライブもラジオもビジネスも……)使えるものは自由に活用し混ざっていく。いろんなタイプが出現しそうで楽しみだ。

だからといって、暗中模索だったネット先駆者である先輩芸人を凌駕するか否かはまた別問題だろう。苦労人はいつの時代もしぶといから(笑)。

芸能人のホワイト化は進む……さて、芸能人ってなんなのか??

テレビに制限が増え、自由度の高いネットに活路を見いだした世代がいれば、自分で始められるネットから出発してテレビを目指す世代もいる。
今、テレビは世間の声でやれることの幅が狭まっていると言われるが、要は「社会悪は厳禁」「不快なことはしないで」と視聴者が求めているだけだ。これは多くの人が視聴する以上、至極まっとうなことだ。
そして今後、その波はネットにも及んでくると思われる。多くの人が楽しむコンテンツにはそういったルールのラインが生まれるだろう。
ますます、テレビとネットはつながっていく。

テレビであろうが、ネットであろうが、そこで活躍する人たちには今以上に“ホワイト化”が求められるに違いない。かつて、酒に溺れる、女遊びをする、博打するといったハミ出し者こそが芸人だった時代があるが、真逆になった。人を傷つけない、お手本のような人。それが大衆の求めている姿だ。

もちろん、我々大衆にそんなことはできない。
人を傷つけてしまうし、失敗もする。けど、表舞台に立つ人にはそれを求める。
その犠牲の上で、多くの人を楽しませているのが芸能人なのかもしれない。
そんなリスクを背負っているから、我々は彼らから目が離せないのだ。
つくづく芸能人とは不思議な仕事である。

【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。

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