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水泳用グッズが役に立つ。催涙ガスから身を守るための7つのポイント

カラパイア

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image credit:Pixabay

 香港、エクアドル、チリ、バルセロナ、レバノンなど、世界では抗議運動がかつてないほど相次いで発生している。世界人権宣言第19条は人々が意見および表現の自由を有することを認めており、世界の大部分では抗議が許されているが、抗議者たちが警察や軍により暴力的に鎮圧されるケースがよく見られる。

 その時に使用されるのが催涙ガスだ。催涙ガスは特に子どもに大きな影響を及ぼす。11月23日、香港では催涙弾の使用などに反対するデモ行進が行われた。

 対岸の火事と侮ることなかれ。いつ何時活性化している抗議デモに巻き込まれ、催涙ガスに直面する可能性はゼロではない。ここでは催涙ガスから身を守るための7つのポイントを見ていこう。水泳用のグッズは役に立つようだ。

痛みの受容体に結びついて体内に取り込まれる催涙ガス


 催涙ガスはガスと言っても厳密には結晶性粉末、つまりは粉だ。

 1928年に米国人科学者ベン・コーソンとロジャー・ストートンによって開発され(ゆえに頭文字をとって「CSガス」と呼ばれることも)、ベトナム戦争中に米軍によって採用されたが、今日では警察などが暴動鎮圧用に利用している。

 有効成分は「クロロベンジリデンマロノニトリル(2-chlorobenzylidenemalononitrile)」で、人体に備わった「TRPA1」という痛みサインを神経に送信する受容体に結びつく。

 催涙ガスの缶が爆発すると中につまっていた粉末が舞い上がり、あらゆる水分に付着する。この性質があるために目の涙や肌の汗、頭皮の脂、唾液や口や気道の粘膜から体内に取り込まれる。

 そうなると灼熱感や結膜の充血が生じ、涙や鼻水が止まらなくなる。また気道を刺激するために呼吸困難となり、そのせいで胸が締め付けられるような感覚がある。

 咳や鼻水が止まらず、口からも唾液や粘液がダラダラと出る。これは人体の防衛メカニズムなのだが、皮肉にもそのおかげで催涙ガスの苦痛はいっそうひどいことになる。

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Image by SERCAN ERTURK/iStock

 催涙ガスを浴びせられた人からは、自分の分泌物で溺れ死にそうな感じだという感想も聞かれる。

 さっさと催涙ガスの煙から脱出しないとますますたくさんのガスが粘膜に付着し、よりいっそう悲惨なことになる。

 抗議の内容を伝える横断幕やら拡声器やら抗議集会にはさまざまな道具が持ち込まれるだろうが、万が一に備えて次のような身の回りのもので身を守る準備をしておくのも大切なことだ。


1. スカーフやバンダナを持参しておこう


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 万全を期すならばガスマスクが一番効果的だが、普通の人はそんなもの持っていない。そこで口や鼻を覆うことができるスカーフやバンダナを持参する。

 それを水で浸しておくならなおいい。これでガスが気道に侵入するのを防ぐことができる。

 スカーフやバンダナは、頭まで覆えるような大きいものの方が望ましいだろう。なければ帽子やニット帽でもいい。

 とにかく頭を何かで覆っておく。また髪の長い人なら、編んだりお団子にしたりしておくと、後で洗い流すときに楽だ。


2. ゴーグル


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 別にオシャレなやつでなくてもいい。水泳用やスキー用のゴーグルがあれば、ガスから目を守ることができる。

 そんなもの持っていないし買いたくもないというのなら、眼鏡やサングラスもありだ。まっすぐ飛んでくる粒子しか防げないが、ないよりはずっとマシである。


3. 長袖の衣服


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 肌の露出はできるだけ控えること。暑い日の抗議活動では少しキツいだろうが、催涙ガスの備えとするのなら、できるだけ分厚い布で可能な限りたくさん肌を覆っておくのが望ましい。

 ただし、それで安心しきってはいけない。催涙ガスは服にも付着するので、脱出したらなるべく早く着替えることも大切だ。


4. リュック(バックパック)


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 荷物はリュック(バックパック)で運ぶのがいいだろう。ハンドバッグやショルダーバッグでは、いざというとき走りにくくてしょうがない。

 また肩紐一本だけのバッグは混乱の中で切れてしまったとき、やはり体の動きを大きく制約する。万が一に備えて、逃げやすい格好をしておくことを忘れてはいけない。


5. 水


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 飲むにせよ顔を洗うにせよ、ペットボトル1、2本分の水は所持しておくべきだ。また抗議やデモを行う会場の近くで、綺麗な水を手に入れられる場所を確認しておくのもいい。

 どんな状況になっても噴水や池のようなところの水には触れてはいけない。そうした水は催涙ガスによって簡単に汚染されてしまう。


6. メイクはしない


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 マスカラやリップは避けるべきだ。どんな艶やかな新色のリップであっても、それは水分や油分が含まれている。

 先述したとおり、催涙ガスは水分に付着する。そのために、そうしたメイクにもくっついてしまうのだ。


7. コンタクトレンズはしない方が良い


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 メイクと同じ理屈で、コンタクトレンズもしない方が無難だ。コンタクトレンズと眼球との隙間に催涙ガスが入り込んでしまったときのことを想像してみよう。

 世界を見るつもりで、地獄を見るハメになるのはあなただ。


催涙ガスに巻き込まれてしまったときに大切なこととは?


 もし本当に催涙ガスを浴びせられてしまったら、とにかく冷静さを保つことだ。落ち着いて用意しておいたバンダナやゴーグルなどで身を守り、周囲の状況を観察しよう。

 催涙ガスは重いために、一度舞い上がった粒子はやがて地面に降り積もる。そのため地面に近いところほど、催涙ガスの濃度が高くなりがちだ。

 倒れている人やしゃがんでいる人がいれば、呼吸ができるところに連れていかなければならない。

 また催涙ガスを実際に浴びせられた人たちのほとんどは、どうにか耐えられるレベルの苦痛であると証言している一方、子供や老人、あるいは妊婦や喘息のある人など、特に危険性が高い人たちもいる。

 そうした人たちにも手を貸してやれるといいだろう。周囲に助けを必要とする人がいなければ、長居は無用。あなたもさっさとトンズラしなければならない。

 ただし、いくら本能が走れ! と告げてきても、その声は無視することだ。走ろうとすれば、それだけたくさん酸素を吸い込まなくてはならない。

 いくらバンダナを着用していても、催涙ガスをも吸い込むハメになる。走らず、それでいて素早く脱出するのだ。


ガス缶の発火装置を消して催涙ガスの散布を止める方法



image credit:How Hong Kong’s Protesters Evade Police and Keep the Demonstrations Alive | Visual Investigations


 断っておくが、これは逃げるよりもずっと危険な方法だ。催涙ガスを舞い上がらせているガス缶に近寄らねばならないからだ。

 それでも万が一、あなたの足元にガス缶が落ちてきたら、周囲の人たちを守るために内部の発火装置を消してガスの散布を食い止めることは可能だ。

 ひとつにはカラーコーンを使うやり方がある。工事現場でよく見かけるあれだ。そいつをガス缶にかぶせる。そして、てっぺんのところの開口部から水を注いで、ガス缶の火を消してしまう。

 ただ、これをやるにはかなり水が必要になるので、その点には注意が必要だ。

 もうひとつの方法は、危険性が高いので細心の注意を払って行わねばならない。と言うのも、高温に熱されたガス缶に直接触らなければならないからだ。

 やり方は簡単で、水入りの金属製の水筒か何かの中に入れて、発火装置の炎が消えるまで振ってやるのだ。

 繰り返すがこれをやるには耐熱性のグローブなどを着用し、ガスに巻かれないようそれ以外の部分もきちんと防護した上で行わねばならない。

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対抗手段になり得るのは科学的に見て重曹溶液だけ


 ネットを検索してみれば、催涙ガスを浴びてしまったときの処置法が紹介されている。

 2014年、米ミズーリ州ファーガソンの抗議者は牛乳で顔を洗った。2011年、アラブの春に追従したエジプトの抗議者はコカコーラでバンダナを洗浄。

 さらに昨年、パレスチナ人は玉ねぎと酢で催涙ガスに抵抗した。チリでは、ガスが喉や器官に入ってしまったとき、レモンをかじって酸っぱい果汁で洗浄する。

 香港では、水240グラムに対してティースプーン3杯の重曹を入れた水溶液入りのスプレーボトルを携帯し、顔や口に付着した催涙ガスを中和しているという。

 かようにさまざまな対抗手段が実践されているが、科学的な根拠があるのは重曹溶液だけだ。

 2003年の研究によると催涙ガスの分子はかなり不安定で、加水分解酸化というプロセスによってやがては分解してしまう。

 重曹のような中性かアルカリ性のものを使えば、そのプロセスを加速させることができるようだ。

 催涙ガスから無事逃れて自宅にたどり着くことができたら、最初にやるべきはあなた自身を洗浄することだ。

 まず靴は家の外で脱ぎ、室内に催涙ガスの粒子を持ち込まない。衣服も十分に換気されているところで脱ぎ、清潔な衣服と混ざらないようにする。

 洗濯するのは48時間が経過してからで、必要ならば複数回洗おう。催涙ガスの成分は5日間は効果が持続するので、汚れた服をまた着るとしてもそのことを忘れてはいけない。

 そしてあなた自身は20分以上冷たいシャワーを浴びることだ。こうすることで皮膚の灼熱感を抑えられる。

 ニオイを落とすには何度かシャワーを浴びねばならないかもしれないが、痛みや灼熱感は一度のシャワーでずいぶん和らぐはずだ。

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政府が引用する催涙ガスの安全性データは50年前のもの


 なお催涙ガスの安全性に関して政府が引用するデータは、主に1950~60年代になされた研究からのものがほとんどだ。

 政府が主張していることは50年も前の知見に基づくもので、最新の技術や分析手法を用いた安全性の検査はなされていないことも覚えておいた方がいい。

 ちなみに、公開されているもので最新の調査は2014年に米軍が実施したもの。

 それによると、クロロベンジリデンマロノニトリルに長時間暴露した結果、肺に損傷ができることが明らかになったそうだ。

References:Popular science / Oxford academic / Springer linkなど / written by hiroching / edited by usagi

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