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21世紀の映画女優、堀春菜から目が離せない!

キネマ旬報WEB

堀春菜のデビュー作「ガンバレとかうるせぇ」公開

映画「ガンバレとかうるせぇ」

自主映画界の女王、制服の天使とささやかれた女優、堀春菜。現在は二十歳を過ぎて大人の女優となったが、16歳のときに主演した幻のデビュー作「ガンバレとかうるせぇ」が撮影から6年の年月を経て、ようやく劇場公開される。

佐藤快磨(さとう・たくま)監督の長篇初監督作で、PFFアワード2014で観客賞を受賞。その後、かの有名な釜山国際映画祭のプログラマー、キム・ジソクに選ばれ、「ニューカレンツ」部門で海外初上映を果たした。このとき、堀春菜は佐藤監督とともにレッドカーペットを歩いた。運命的な出会いから話を聞いた。

(取材・文=編集部)

 

すべては、この映画から始まっている

――堀春菜さんの映画は、第10回田辺・弁慶映画祭でグランプリをとった「空(カラ)の味」(16年/塚田万理奈監督)や、大阪アジアン映画祭のコンペに入った「浜辺のゲーム」(19年/夏都愛未監督)は拝見していて、すごく上手いなあと思っていましたが、デビュー作「ガンバレとかうるせぇ」、略して「ガンうる」は劇場公開されていないので、観ていなかったんです。ようやくという感じですが、撮影は6年前ですよね。

堀 はい、そうなんです。中学2年のとき、事務所に所属していて、その頃に佐藤快磨監督と知り合いました。でも私は1年ほどで演技は一旦お休みして、写真表現や国際情勢などを学ぶ総合高校で学生生活をおくっていました。高校2年のときに、たまたまツイッターを始めたら、翌日、佐藤監督から「探していました。1週間後、秋田に来れますか?」と連絡があって。

――1週間前にヒロインが事情により出られなくなったそうですが、佐藤監督はその前から堀さんをずっと探していたそうですね。「ガンうる」は監督の高校時代の経験をもとに書かれたオリジナル脚本で、堀さんはサッカー部のマネージャー、菜津というヒロインの役です。脚本が気に入ったんですか?

堀 いえ、直観です。私は割と直観で動いてしまう人間で、たぶん大丈夫だと思ったんでしょうね。でも、母が「待て、待て」と(笑)。それで佐藤監督と三者面談したんですが、監督は「怪しい者ではありません」と一所懸命に言ってくれたんです。

――映画の脚本を読むのは久しぶりだったのではないですか。リハーサルはあったんですか。

堀 東京で最初に顔合わせとリハーサルがありました。でも、私以外のみんなはすでに空気が出来上がっていたので……気まずいですよね(笑)。でも、そういう運のめぐりあわせってあるのかなって。

――映画の神様が微笑むというミラクルですね。安藤サクラさんも、デビュー作「風の外側」(07年/奥田瑛二監督)の主演に決まったのは撮影の4日前でした。

堀 私の場合は、脚本の読み方も知らなかったので不安でした。小説のようにしか読むことができなくて、役をどういう風にくみ取るのか、わからなかったんです。当時は16歳でしたけど、共演した細川岳さんや布袋涼太さんが結構上だったので、同級生に見えるのかとか、いろいろと考えました。

――サッカー部のキャプテン役の豪を演じた細川岳さんと、エースの健吾を演じた布袋涼太さんですね。秋田で当日スカウトしたのかというくらい、サッカー少年でしたよ(笑)。菜津と豪は幼馴染という設定でしたね。

堀 秋田では一軒家にみんなで合宿して撮影していたので、それが良かったですね。

――サッカーはもともと好きだったんですか。

堀 はい、高校サッカーを友だちとよく見に行ってましたし、運動全般が好きなんです。3歳から小学5年生まではクラシックバレエを、市民ミュージカルに出たのを機に、高校まではジャズダンスもしていました。

私は私のデビュー作に嫉妬する

映画「ガンバレとかうるせぇ」

「ガンバレとかうるせぇ」は受験を控えた高校3年生たちが、夏の大会で負けてしまって、サッカー部を続けるのか辞めるのかという「選択」をする物語だ。自責の念で意固地になっているキャプテン、大学の進路も考えたいエース、チームを応援してきたマネージャー。辞めれば楽だが、辞められない。個人と組織、夢と現実、意地と諦念……高校生が抱えるものはサラリーマンが抱えるものと比べて、小さくも大きくもない。

――佐藤監督は堀さんの足を高くかったのかもしれない。これは運動している足だなというショットが多いですね。

堀 部活で陸上もしていましたからね(笑)。実際に高校のグラウンドで撮影ができたから、なにも準備せず現場に行けばいいという感じでしたね。制服もユニフォームも全部準備してあるし。あ、でも、プロデューサーの方が、菜津が聞いている曲というのを4,5曲用意してくれたんです。それをずっと聞いているのが、役づくりといえば役作りだったのかもしれません。覚えているのは「幸福な亡骸」というTHE BACK HORNの曲です。

――夏の終わりの歌ですね。THE BACK HORNは、「アカルイミライ」(02年/黒沢清監督)で最後に流れる「未来」という曲がありますが、青春の終わりを醸し出す歌詞がいいですよね。そして最後は駆け出したくなる(笑)。佐藤監督の演出で印象的なことはありますか。

堀 まず、リハーサルのときに「俺はこの映画にかけてるから」と、何度も何度も言っては去っていくんです(笑)。それから、撮影3日目だったと思いますが、部室で菜津が告白されるシーンは、「もう1回、もう1回」と言われて、何度もテイクを重ねました。それが悔しくて、瞬間的にスイッチが入って、その後の撮影は菜津モードで突っ走っていきました。

――誰が告白するのかは観てのお楽しみですが、男の子の足と菜津の手のカットで重大な事件が起こると分かります。加藤大志さんの撮影が光るシーンですね。その後は、菜津モードが全開になって監督に提案したところもあるとか。

堀 グラウンドでキャプテンの豪をビンタするシーンがあって。脚本にはその後部室に戻ると書いてあったんですが、「監督、ここは戻れない」と。そしたら、思うようにやってよいと言われて、乱闘するシーンになりました。

――あのシーンは、予想外でした。対等にやり合っていて本当に面白かったです。

堀 一番鮮明に記憶にあるのは、スタジアムまで走っていくシーンです。どうしていいかわからなかった。電話で監督に「できないです」と言ったら、監督が「俺も豪もスタッフも、みんなで待ってるから、走ってきて」と。無我夢中で走りました。いま思えば、訳もわからず、がむしゃらだった。あの時のそのままの自分が映っている。あんなふうにはもうできないなって、嫉妬してしまいますね。

 

佐藤快磨監督の「歩けない僕らは」

「ガンバレとかうるせぇ」はすべての始まりだった。映画を観た若い映画監督から次々と声がかかるようになる。摂食障害の女性を演じた「空(カラ)の味」は塚田万理奈監督から長い手紙をもらい、監督の自伝的な作品を作り上げた。

――今年6月に主演された舞台『プラヌラ』を見てとても驚いたんですが、日常のなにげない会話で、声を張っているわけではないのに、堀さんの声がとても通る。声と体を鍛えているし、演技レッスンでは脚本の読解を学んだそうですね。

堀 成瀬巳喜男監督の「山の音」(54年)や、小津安二郎監督の「東京物語」(53年)などは読みました。レッスンがきっかけで、相米慎二監督の「魚影の群れ」(83年)が大好きになりました。相米監督の助監督だった冨樫森監督から、あの夏目雅子さんが船の帰りを待つシーンは、実際に一夜をかけて撮影したんだと聞いたんです。そうやって時間を使えるなんて幸せな現場ですよね。

――そうして演技のレッスンを重ねた4年後の冬、佐藤快磨監督の新作「歩けない僕らは」に再び参加されますが、いかがでしたか。

堀 「ガンうる」のときに呼ばれていた「春ちゃん」って、「ガンうる」から続投したスタッフさんに呼ばれて、戻ってきたなという安心感がありました。でも、芝居してひどかったら、この数年間、何をやってたんだと思われるなって、ちょっとプレッシャーでしたよ。

――新人の理学療法士が患者さんとの接し方に悩み、自分の道を「選択」する映画ですが、ご覧になっていかがでしたか。

堀 佐藤監督の映画だなと思いました。みんな不器用で、がむしゃらに生きている。それから、人と人とのヒリッとしたすれ違いがあって悩んでいる。私が演じた幸子は、宇野愛海さんが演じた遥が同期だったから、ああいう「選択」をしたんだと思います。遥は間違ったことだと思ったら、意見を言ってぶつかっていける女の子。だから、傍で見ていて、幸子はいろいろと悔しかったりしたのかなって。

堀春菜と宇野愛海「歩けない僕らは」より ©映画『歩けない僕らは』

 

――佐藤監督は「ガンバレとかうるせぇ」でも「歩けない僕らは」でも年齢や国籍を超えた究極のテーマを描かれていますね。生きている以上は誰にだって背負うものがある。サッカーだったり、患者さんだったり、落合モトキさんが演じた柘植が抱える「何のために歩くのか」という問いであったり。その問題は決して並列ではないけれども、順位があったり大小があるものでもない。ひとりひとりの葛藤と選択を描いてドラマをつくっています。

堀 監督は「悔し涙を流すまでの距離を描いた」と言っていました。誰かキャストひとりを掬いあげるのではなく、ただそれぞれが抱えるものを、距離感をもって描いて終わるんです。映画っていう使命を与えて。

――37分という短篇ですが、佐藤監督は才能があるなあと思いました。脚本がとてもいい。

堀 お仕事を紹介するだけの映画ではないですよね。

――堀さんが抱えるものは何ですか。女優として、という変な気負いはなさそうです。

堀 女優というより、まず人間としてきちんと立っていたいなと思いますね。生きているなかで映画に関わっているという感じでしょうか。学生の頃から、カンボジア史に興味をもったり、日韓交流をしていました。いろいろな世界を知りたいと思っているんです。

――昨年は東京国際映画祭でプレミア上映された「21世紀の女の子」に出演されて話題となりましたが、新時代を仲間たちと担っているという意識は?

堀 同世代の監督や女性監督から声がかかるのはうれしいです。「ぼくらのさいご」(15年)の石橋夕帆さん、「感光以前」(16年)の竹内里紗さん、「過ぎて行け、延滞10代」(18年)の松本花奈さんなど女性監督と組むことが多いです。

――今年は、日韓台合作のパフォーマンスに挑戦されました。台湾で1カ月過ごしてきた。アジアへの感度も気になるところです。

堀 2018年に出演した日韓合作映画「大観覧車」は12月に日本で公開されます。監督のペク・ジェホ監督とは「ガンうる」が釜山で上映されたときに知り合ったんですよ。その作品もぜひ見ていただきたいですね。

 

ほり・はるな

1997年生まれ、神奈川県出身。2014年「ガンバレとかうるせぇ」で映画デビュー。主な出演映画は「空(カラ)の味」「セブンティーン、北杜 夏」「カランコエの花」(17)「大観覧車」「万引き家族」(18)「21世紀の女の子」「浜辺のゲーム」(19)など。日韓台の俳優がパフォーマンスを繰り広げた舞台『EATI 2019 in Taipei』に出演するなど、海外を視野に入れて活動している。

公式HP http://eiga24ku.jp/projects/hori-haruna.html

映画「ガンバレとかうるせぇ」

監督・脚本・編集/佐藤快磨 撮影/加藤大志

出演/堀春菜、細川岳、布袋涼太

11月23日(土)より新宿K’s cinemaほか全国にて

映画「歩けない僕らは」

監督・脚本・編集/佐藤快磨 撮影/加藤大志

出演/宇野愛海、落合モトキ、堀春菜

11月23日(土)より新宿K’s cinemaほか全国にて

 

映画「大観覧車」

監督/ベク・ジェホ、イ・フイソプ

出演/堀春菜、カンドゥ、ジ・デハン、辻凪子

12月14日(土)から新宿K’s cinemaほか全国にて

 

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