東京行きを決めたのはいいけど、就職先は
正月になっても父親は帰ってこなかった。送金が途絶えた谷田部家の財政事情は厳しい。私が東京で働いて、送金する。谷田部みね子(有村架純)はそう決心する。
新学期、みね子から東京行きを聞かされた助川時子(佐久間由衣)と角谷三男(泉澤祐希)は浮かぬ表情で顔を見合わせる。一緒に東京に行くことになったのに、なんで喜ばん!? のん気に問うみね子にふたりは言う。だって、就職先は!? あ……。就職シーズンはとうに終わっていたのだ。
担任の田神先生(津田寛治)が力になってくれた。東京の会社に片っ端から電話をかけ、追加募集がないか問い合わせる。欠員が出た会社から折り返し電話があった。そこは東京・向島にあるラジオ工場。時子と同じ会社だった。
卒業式の日。みね子は、一足の靴をおろす。それは父親からもらったもの。いつものように時子と三男と一緒にバスに乗り込む。今日は泣かない。どうせ泣くくせに。軽口を叩きあう。数時間後、高校では笑顔と涙で顔をくしゃくしゃにした3人の姿があった。
奥茨城村の名わき役たち
NHKの連ドラは脇役を丁寧に描くことで作品に深みをもたらすのが常だが、今作においてもその伝統はしっかり守られている。奥茨城編の最後に、そうした村の人たちにも触れておきたい。
時子の母・助川君子(羽田美智子)は、みね子の母・美代子(木村佳乃)の幼なじみ。昔はふたりして村一番の美人を争っていたというのが口ぐせ(笑)。大黒柱不在の谷田部家を心配して心づけを持参するが美代子に固辞されると、ならばと大量の生活必需品を持ち込んだ。困ったときはお互い様。かつての日本にあった互助精神を体現する心優しき女性だ。
三男の母・角谷きよ(柴田理恵)はリンゴ農家の嫁。口が悪く、農作業に追われているため、子どものことはほったらかしにすることも。しかし、三男が卒業する日には、美代子のもとを訪ね、母親としての心情を涙ながらに明かす。作品に笑いをもたらす存在として描かれているが、子どもに太郎、三男などと名付けるあたり、この時代の農家の典型的な存在ともいえる。
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みね子の叔父・小祝宗男(峯田和伸)は、イギリス国旗をなびかせたバイクに乗り、モッズ風ファッションに身を包んだ、田舎ではいわば異端児。彼は、東京に出ることになったみね子に語り掛ける。あまり背負い込まず自由に生きろ、と。自由という概念は都会で生まれるもの。このころ自由を口にした日本人は多くなかっただろう。ところで宗男さんは恐妻家という設定。シャドーボクシングをする妻を想像しては震えていた。妻は、静ちゃんこと山崎静代で、ボクシングシーンでのみの登場だった(笑)
そのほかにも語っておきたい脇役はいっぱいいるのだが、長くなりそうなのでこのへんで。
集団就職列車で東京へ
村を出ていく日がやってきた。バスに乗り込んだみね子、時子、三男は、迎えに来た家族らの姿を窓越しにいつまでも見つめ続けた。
三人は駅で田神先生と合流。集団就職列車で東京へ向かう。そこで青天目澄子(なばためすみこ・松本穂香)と同席になる。福島から来たという彼女も、みね子たちと同じ向島電機に向かっていた。
東京の玄関口・上野に到着した。いよいよ東京での生活が始まる。
「ひよっこ」はNHK総合で毎週月曜〜土曜の午前8時から放送
NHK連続テレビ小説「ひよっこ」は、NHK総合で毎週月曜〜土曜の午前8時から放送。
公式サイト(http://www.nhk.or.jp/hiyokko/)