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沈まない船ができるかも?蜘蛛とアリからヒントを得た水に浮く金属が開発される(米研究)

カラパイア

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University of Rochester

 水より重い物は沈み、軽い物は浮かぶ。一定の体積あたりの重さを密度と言うが、基本的に物の密度が水より大きい場合は沈み、小さい場合は浮かぶのだ。なので水より密度の高い金属は沈んでいくはずなのだが、新たに開発された金属は水に浮くという。

 アメリカ・ロチェスター大学の研究グループが開発した水に浮く金属の秘密は、ミズグモやヒアリからヒントを得て作られた超撥水性なのだそうで、無理やり水に沈めても浮かんでくるし、穴をあけたり壊したりしても沈むことはない。

 これを使えば、絶対に沈むことのない船や穴があいても沈まないデバイス、あるいは長期間海上に放置されても耐えられる監視機器なんてものが作れるかもしれないそうだ。

Unsinkable Metal

蜘蛛やアリから着想を得た超撥水性の金属


 『ACS Applied Materials and Interfaces』(11月6日付)で発表されたその金属構造は、レーザーをわずかフェムト秒(10-15秒)だけ閃かせることで、表面にミクロスケールやナノスケールのパターンを刻みつけて作り上げる。

 刻まれた溝には空気がたまるために、表面は超撥水性を発揮。平たく言えば、水を弾くのだ。この性質のために、普通なら沈んでしまう金属が水に浮かぶようになる。

 ところが実験では、ずっと水に沈めておくと徐々に超撥水性が失われてしまうことが判明した。

 一方、蜘蛛やアリの中には水面にずっと浮いていられる仲間がいる。

 たとえばミズグモは同じく超撥水性を備えた足やお腹に空気を取り込み、それを水中に運ぶことで、空気で満たされたドーム状の巣を作る。

 同様に、ヒアリも超撥水性の体に空気を捕らえて集団で”イカダ”を形成し、水に何週間も浮いていることができる。




多面構造を施した金属を組み合わせることで超撥水性を実現


 研究グループのグオ・チュンレイ氏がそんな彼らの様子から気づいたのは、超撥水面を多面構造にすることで大量の空気を取り込めるということだった。

 そこで、2枚のアルミプレートをレーザー処理した面が内側になるよう並行に組み合わせ、ハンバーガーのような構造を作ってみた。

 こうすると、超撥水面がすり減ることを防止できるし、隙間にたっぷりと空気をたくわえておくことができる。

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左:水面に浮かぶ超撥水性金属構造、右:重りで水中に沈められた超撥水性金属構造。2ヶ月経過後、重りを外すときちんと浮かび上がってきた。
image credit:University of Rochester

 両アルミプレートの隙間が適切な距離であれば、超撥水面が水の侵入を防ぐために、プレートを無理やり水に沈めても、手を離せば何事もなかったかのようにぷかりと浮かんでくる。

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左:2枚のプレートの適切な隙間を把握するための実験。隙間にはプレートを浮かせるだけの十分な空気が保持されなければならない。右:3ミリ穴6個と6ミリ穴1個をあけても浮力は失われない。
image credit:University of Rochester

様々な金属や素材にも応用可能


 なおレーザーによる表面処理はアルミだけでなく、どんな金属にも使えるし、金属以外の素材でも応用可能だとのこと。

 最初は2.5 × 2.5センチの範囲を処理するのに1時間かかったそうだが、現在ではそれも改良されて商業利用向け大量生産の実現性も高まっているという。

 生物の構造や機能、生産プロセスを観察、分析し、そこから着想を得て新しい技術の開発や物造りに活かす科学技術はバイオミメティクスと呼ばれており、様々な生物には人間が技術を開発するうえで、思いもよらぬヒントが隠されているのだ。
 
References:Spiders and ants inspire metal that won’t sink : NewsCenter/ written by hiroching / edited by parumo

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