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子供向けアニメ映画「すみっコぐらし」が異色ヒット 大人も感動する理由に「生きづらさ」がテーマ【レビュー】

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子供向けアニメ映画「すみっコぐらし」が異色ヒット 大人も感動する理由に「生きづらさ」がテーマ【レビュー】

「大人が号泣」「奈須きのこさんが製作に絡んでそう」などの感想が飛び交い、SNSで大きな話題を獲得している映画があります。

それは『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』。

「すみっコぐらし」は、サンエックスの提供するキャラクター商品で、「隅っこが好き」なかわいいキャラクターたちのグッズや絵本など、様々な商品を展開しています。
今回初の劇場版が公開され、これまで「すみっコぐらし」については聞いたことがあっても詳しく知らなかった人たちも巻き込んで大きな話題になっています。

筆者も実は詳しくなかった一人だったのですが、今回の劇場版を観て、「なるほど、これはいいものだ」としみじみ思わされました。本稿ではそんな本作の魅力を紹介してみたいと思います。

隅っこが落ち着く、社会の中心で生きるのが苦手なキャラクターたち
「すみっコぐらし」のキャラクターは、どれもちょっとネガティブで後ろ向きな性格をしています。隅っこが好きという共通項からしてちょっと後ろ向きですが、キャラクターデザインもちょっと猫背で自信がなさそうです。
「すみっコぐらし」は、そんな自分に自信がなくて、後ろ向きな性格のキャラクターたちが寄り添って、部屋やカフェの隅っこで生活している様子が描かれています。

例えば、しろくまは、北極生まれにもかかわらず寒いのが苦手で引っ込み思案という設定です。寒さが苦手では北極圏に生息する白熊の群れの中では生きていけそうにありません。
他にも、とかげは、実は恐竜の生き残りで、正体がばれてしまうと捕まってしまうので、とかげを装ってひっそりと隅っこで生きているのです。

動物以外に「食べ物」のキャラたちもいて、とんかつは肉1%と脂分99%の端っこの部分だから食べられずに残されてしまったという設定で、食品なのに食べてもらえなかった悲しみを背負っているのです。
たびおかも同様に、ミルクティーだけ先に飲まれて残ってしまい、ひねくれ者になったという設定で、昨今のインスタ映えタピオカブームを考えると切ない気持ちになります。

筆者のお気に入りはざっそうです。雑草のくせにお花屋さんで素敵なブーケになることを夢見ているんです。
きっとその願いはなかなか叶わないのだろうな、と思うと胸が締め付けられるのですが、本人はすごくポジティブな性格で、そういう悲壮さを全く感じさせないのです。

「すみっコぐらし」のキャラクターたちは、そんな出自のせいか自己肯定感が低く、種族のマジョリティからも外れてしまったコたちなのです。かわいいデザインと裏腹の切なさが社会人にも受けている秘密で、社会の中で生きづらさを感じている人の癒やしになっているようです。

そんなすみっコたちの姿は、学校の教室に馴染めない、会社に居場所がないなど、何かしらの疎外感を感じた事がある人にとっては、他人事とは思えないんじゃないでしょうか。

すみっコたちの特徴を見事に活かした劇場版
今回公開された劇場版は、そんなすみっコたちのキャラクター紹介が冒頭にあるので、『すみっコぐらし』を全く知らなくても置いてけぼりになることはありません。

本作の物語は、すみっコたちが飛び出す仕掛けのある絵本を見つけ、その世界に吸い込まれ、桃太郎やアラビアンナイト、マッチ売りの少女など様々な物語の世界を体験し、その過程でどの物語出身かわからない、変わった色のひよこと出会う、という内容です。

どんな物語でも、登場キャラクターには何らかの役割があります。でも、どこの物語出身かわからないひよこには役割がなく居場所がありません。
そんな居場所を持てない切なさが、隅っこで生きるすみっコたちと共通しています。

物語は、そんなひよことすみっコたちの交流を通じて、「自分は何者なんだろうか」というアイデンティティの問題を観客に問いかけています。クライマックスに至る物語の構成も見事で、非常に巧妙に作られていていますし、セリフなしで、ナレーションとキャラクターの芝居だけで感情を伝える演出も見事です。

観終わった後は、とてもあたたかい気分になりました。しみじみ心に沁みる素敵な作品なので、ぜひ観に行ってみてください。

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