top_line

困難に直面したとき、あなたは何を選ぶのか―スイッチ向けサイコロジカルホラーADV『Tokyo Dark -Remembrance-』プレイレポ&インタビュー

インサイド

困難に直面したとき、あなたは何を選ぶのか―スイッチ向けサイコロジカルホラーADV『Tokyo Dark -Remembrance-』プレイレポ&インタビュー

2017年にインディースタジオ・Cherrymochiよりリリースされたホラーアドベンチャー『Tokyo Dark』が、『Tokyo Dark -Remembrance-』と題し、11月7日よりニンテンドースイッチ向けに配信されました。

もともとSteamで配信されていた『Tokyo Dark』は、都市伝説からヒントを得たストーリーと複数のエンディングが楽しめるサイコロジカルアドベンチャーゲームです。プレイヤーは伊藤絢美刑事となり、行方不明となった彼女の相棒・田中刑事を見つけるべく、東京の街を捜索します。

既にオリジナル版のリリースから2年が経過していますが、本稿ではコンシューマー版で新たにプレイする方に向けたレビューを行います。また、開発と移植に携わった方々のインタビューもあわせてお届けしていきます。

あなたの選択が絢美の人生を変える
実際にプレイしてみると、本作が非常に独特な雰囲気を醸し出すアドベンチャーゲームであることがわかります。ひどく重苦しい雰囲気の中で始まる物語は、程なくして狂気を孕んだシーンに行き着くのです。

冒頭シーン。不気味な表情をした少女の顔に、つい視線を送ってしまいます。
プレイヤー扮する絢美の目的は、パートナーである田中刑事の行方を探すこと。まずは薄汚れた夜の繁華街で聞き込みを開始しますが、ここでプレイヤーは、本作の特徴的なポイントを味わうことになります。

というのも、バーのママやサラリーマンに話しかけるといくつかの選択肢が表れるのですが、ここで何を選択するのかによって、その後に取れる行動がガラリと変わるのです。仕事中だけど、バーのママに勧められるままお酒を飲んでしまうのか。サラリーマンから情報を得るため、強い態度を取るのか、あるいは色仕掛けを使うのか。プレイヤーの決断が、絢美の行動につながるのです。

ちなみに本作オリジナル版はポイントアンドクリック形式のゲームでしたが、同様の作品に見受けられるパズル要素はありません。例えばゲーム冒頭に「鍵がかかったゴミ箱」を開けるシーンが出てきますが、開け方は複数パターンが用意されています。謎解きに横槍を入れられることなく、プレイヤーはダークなストーリーを存分に堪能することができます。


本作では、プレイヤーが取った選択肢によって、絢美のステータスに変化が生じます。ステータスにはSanity(正気、いわゆるSAN値)、Professionalism(職業倫理)、Investigation(探索能力)、Neurosis(ノイローゼ)の4つがあり、何かを選択するごとにいずれかの値が上下していきます。

4つの頭文字を取ってS.P.I.Nと呼ばれるこのシステムは、ストーリーの進行に大きな影響を及ぼします。この値によって、絢美の行動や各キャラクターとの関係性が変化していくのです。

このS.P.I.N値は、プレイヤーによってある程度コントロールすることも可能です。例えば、部屋にある精神安定剤を服用することでSanityが改善されますが、Investigationは減少します。そして、この薬はひたすら飲み続けることもできるのです。

こうなると要所要所でセーブしながら分岐を探してみたくなりますが、本作ではプレイ1周目はオートセーブされるため、絶対に後戻りができません。これが非常におもしろく、プレイヤーの人格、選択が、そのまま絢美の行動とS.P.I.N値に、そしてエンディングに影響することとなります。大げさかもしれませんが、プレイヤーの人生観が反映されると言っても良いのではないでしょうか。

「Remembrance」での追加要素と変更点
そのエンディングですが、オリジナル版で用意されていた11種類に加え、「Remembrance」では新たに2種類のエンディングが追加。新エンディングは、2周目以降にプレイできる「New Game+」で見ることができます。

また「Remembrance」ではエンディング以外にも、いくつかのエピソードが追加されています。オリジナル版では見られなかった絢美と田中の過去も描かれており、二人の関係性や絢美の動機が鮮明になって、より没入できるストーリーとなっているのです。

システム上では、フォントを含めテキストがさらに読みやすくブラッシュアップ。また作中で見られるグラフィックや背景も、移植に際し日本人アーティストのアドバイスを受けて、より日本人に馴染みやすくなっています。

ちなみに、本作にはゲーム内に配置されている「招き猫」を回収する隠し要素があり、ニンテンドースイッチ版では招き猫の近くに移動してXボタンを押すと回収できます。全部回収すると「ねこエンディング」なるものが見られるのだとか。その内容は、ぜひ皆さんの目で確かめてみてください。

音楽、演出、すべてが「東京の闇」へと誘う

これまでシステム上のポイントを挙げてきましたが、本作一番の魅力は、その空気感にあります。

キャラクターアートは“日本的”で、ともすれば可愛らしくも見えるのですが、物語は至って重厚。また日本に拠点を置く外国人デベロッパーが制作しただけあって、「外国人から見た日本」が描かれているアートは特徴をよく捉えており、同時に示唆的でもあります。取材を重ね、日本人アーティストの助言を受けてブラッシュアップされたイラストは、背景も含めてぜひじっくり見ていただきたいところ。

独特な空気感を醸し出す要因は、アートだけではありません。個人的に惹かれたのは、プロのミュージシャンが担当したというサウンドトラックです。ゲームに限らず、シーンを彩る上で音楽は欠かせないものですが、本作のサウンドトラックは各シーンに非常にマッチしており、彩るというよりは、音楽が一気にその世界を形作っているとさえ思えるのです。

アートや音楽、またアニメーションも駆使した演出も含め、すべての要素が同じベクトルを向いて制作されている本作。PVを見たり、この記事を読んでいただいたりして興味をもった方には、マッチする確率が高い作品なのではないでしょうか。

我々が生きる人生と同じように、伊藤絢美刑事も、「一度しか選べない選択」を行うことになります。謎を解明することができるのか、正気を失ってしまうのか……困難を前にして、自身が選ぶ選択と、その物語を楽しんでみてはいかがでしょう。

開発者に訊いた『Tokyo Dark -Remenbrance-』の魅力とは?

『Tokyo Dark -Remenbrance-』が描いたものとは?
さて、ここからはCherrymochiのCo-founder兼Producerのウィリアムズ真保氏(もう一人のCo-founderは夫でありディレクターのジョン氏)と、コンシューマーへの移植を担当したメビウスのプランナー・喜多村明夫氏へのインタビューをお届けします。

ウィリアムズ真保氏
――『Tokyo Dark -Remenbrance-』はいくつかのイベントで試遊出展されていましたね。反応はいかがでしたか?

ウィリアムズ:オリジナル版をプレイした方が来てくださったのはうれしかったです。初めてプレイした方も、ハンドヘルドがゲームに合っていると言ってくださいましたね。操作性も上がっていて、プレイしやすくなったようで良かったです。

――移植に際して、表現の修正はありましたか?

ウィリアムズ:ありました。メビウスさんに移植をお願いしたときに、まず日本人アーティストの方にアートを見ていただいて、キャラクターにより深みが生まれるよう改良したり、より日本らしく見える背景に修正していただきました。その上で、変えておいたほうがいい点は喜多村さんの目でチェックしていただきましたね。

喜多村:どこで怒られるかは大体わかっていたんですよ。表現的に引っかかりそうなところは修正したんですが、それでも引っかかりましたね(笑)。

――文章でも変更した箇所はあったのでしょうか?

ウィリアムズ:日本語の文章もより読みやすく、かつきちんと辻褄が合うようになっています。意味が同じでも違う語彙で表現したり、柔らかくされていますね。

喜多村:攻撃的な会話が多いのも、ある意味で今の東京っぽいんですよね。

――移植も含めて、開発の経緯を教えてください。

ウィリアムズ:オリジナル版は4人の外国人で開発していました。ジョンだけ日本にいて、キャラクターアーティストがイタリア、音楽担当がイギリス、スクリプトライターがアメリカにいます。


もともと、2Dに特化した「Construct 2」というゲームエンジンを使って開発していました。「Unity」などと比べると小さなゲームエンジンです。ただ、Construct 2はコンシューマーへの移植が難しいと言われているゲームエンジンなんですね。他の会社さんからもお話をいただいたんですが、「やっぱり無理です」と断られたこともありました。

なので、cherrymochiの中でコンシューマーへの移植はほぼ諦めていたんですが、メビウスさんからお話をいただいて、オリジナル版を引き継いですべて開発していただきました。

喜多村:難しくないだろうと考えていたのですが、1年半くらいかかってしまいましたね……。

ウィリアムズ:最初からUnityで作り直すより、Construct 2のスクリプトを使った方が早いだろうと進めたのですが、予期しなかった問題が多々出て、発売が延びてしまったんです。

喜多村:Construct 2で作っていたものをUnityに持ってきたときに、バグが発生するケースがありまして、それが一番大きかったですね。

――最終的にはUnityで開発したんですか?

喜多村:そうです。Nintendo Switch版もPS4版もほぼ同時期にリリースできるのはそのためです。

――具体的にはどういった点で苦労されたのでしょうか?

喜多村:一部ぼかされたようなエフェクトや、水面のゆらぎを表現するエフェクトをUnityに持ってくることですね。Construct 2ではほぼデフォルトで表現できるんですが、Unityだと難しいんですよ。

ウィリアムズ:提案されたものも、私たちが「雰囲気が違うから」とNGにしたものもあって、時間がかかりましたね。

喜多村:逆にビジュアルなどはほぼ一発OKでした。エフェクトに苦労しましたね。

――そこはぜひユーザーさんに見ていただきたいですね。

ウィリアムズ:そうですね。普通にゲームをプレイしていたら気づかないところなんですが、あるのとないのでは深みが変わってくるので、妥協はしたくなかったんです。

東京のコントラストを描く
――改めて、『Tokyo Dark』のコンセプトを教えてください。

ウィリアムズ:ジョンは、外国人から見た日本を創作物に落とし込みたかったようです。日本の文化やビジュアルノベル、アニメスタイルを盛り込みつつ、彼が子どもの頃からプレイしていたポイントアンドクリック形式を(オリジナル版で)取り入れるなど、自分の興味の対象を融合させたものを作りたいという思いがありました。

――物語は海外の刑事モノのような重さ、深みがありますね。刑事モノになった理由は何ですか?

ウィリアムズ:強くて、独立した女性を描きたいという考えがありました。あとは『攻殻機動隊』の大ファンということもあります(笑)。ミステリーとして刑事モノは入りやすく、話を進めやすいということもあったと思います。

――序盤からハードなシチュエーションだったのが印象的でした。

ウィリアムズ:ジョンは、最初の30分でプレイヤーを物語に引き込まないといけないと考えていました。物語を事件発生から淡々と描くのではなく、印象的なシーンを最初に持ってくることはディレクションで狙ったところだと思います。

――鎌倉も含めて、首都圏のさまざまな場所が登場しますね。

ウィリアムズ:私たち夫妻が住んでいた鎌倉や横浜、東京で、自分たちの身で感じたことをふんだんにゲームの中に取り入れています。

最後のシーンで東京の地下に潜る場面があるんですが、先日の大型台風のときにも活躍した“地下神殿”(首都圏外郭放水路)に実際に行ってきました。長い階段を20分くらいかけて下っていくんですよ。暗くてジメジメしていて、圧迫感があって、その雰囲気も取り入れました。

――明るい街中とのコントラストがよく出ていますね。

ウィリアムズ:日本の社会や街並みを見せるためにも、秋葉原などのポップなイメージの場所と、暗くて圧迫感のある場所の両方を取り入れたかったんですね。


――神社や能面が出てきますが、日本文化を積極的に取り入れたいという考えもあったんですか?

ウィリアムズ:自宅兼オフィスが鎌倉にあったので、週末には鎌倉周辺をよくハイキングしていたんですね。そこでジョンが大好きになった場所が、北条氏の一族が集団自決をしたところで。そういう陰惨な歴史に惹かれて、鎌倉の歴史を勉強したり、平家物語を読んだりして、日本の歴史を取り入れました。

――ゲームボリュームはどれくらいですか?

ウィリアムズ:読むのが早い方で5時間~6時間ですね。ただ選択肢によってプレイ時間も変わりますね。最後のエンディングもどれを選ぶかで1時間くらい違ってくると思います。

強く、自分の道を切り拓く女性
――絢美はどのようなイメージで描かれたのでしょうか?

ウィリアムズ:ジョンが海外の人間というのもあると思いますが、絢美は彼が考える刑事像、女性像をふんだんに取り入れていますね。強くて自分の道を切り拓いていける女性というイメージがありました。外見も、ジョンのイメージをキャラクターアーティストに伝えて、3パターンくらい出してもらいました。

――ボイスも変わっているのですか?

ウィリアムズ:コンシューマー版では大原さやかさんに演じていただいています。私は『ファイナルファンタジーXIV』の大ファンで、ルキアの声を聞いて「この人が絢美をやってくれたら夢みたいだ」と思っていたんですが、メビウスさんが実現してくださいました。レコーディングは感動モノでしたね。


――メインキャラクター以外の人物も、とても日本人らしいですよね。電車に乗っている小学生とか、見覚えがあります。

ウィリアムズ:開発スタッフは4人とも外国人ですが、全員日本に住んだことがあるか、長く滞在したことがあるんです。キャラクターアーティストも日本に長期間いながら、ずっと渋谷などでスケッチをして、それを元にアートを作っています。

――アニメーションも入っていて、演出にかなり力を入れていらっしゃいますね。

ウィリアムズ:アニメーションは当初のプランでは入っていませんでした。Kickstarterで予算を集めていた中に、「日本のアニメーション会社が制作したアニメが入る」というストレッチゴールがあったんですが、あっという間にそこまで行ったんです。

海外には、日本の会社が作るアニメーションの熱烈なファンがたくさんいらっしゃいます。彼らの熱い気持ちが、アニメーション制作につながりました。

制作はグラフィニカさんです。ジョンがラフなストーリーボードを考えて、それを元にグラフィニカさんが制作してくださっています。アニメーションを各所に散りばめることでゲームとしての重みも出ましたし、良いものに仕上がりましたので、グラフィニカさんにはとても感謝しています。

――お気に入りのキャラクターはいますか?

ウィリアムズ:私はメイドの「♪♪あいこ♪♪」ちゃんですね。


喜多村:日本文化を感じさせる言葉を話してくれる子ですね。

ウィリアムズ:あのぶっ飛んでいる感じが大好きです。

喜多村:僕は駅員の間明(まぎら)さんですね。会話パートで、かみ合わないながらも頑張って話そうとするところが笑いを誘います(笑)。

――ありがとうございます。最後に、このストーリーで描きたかったことを教えてください。

ウィリアムズ:ジョンの根底にあったのは、困難に直面したときにどう乗り越えるのか、他者に対して自分が何ができるか、だと思います。ぜひ最後までプレイしてみてください。

TOPICS

ランキング

ジャンル