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宇宙の形は巨大風船のように湾曲し、ループしているという新説が登場(英・伊共同研究)

カラパイア

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Image by metamorworks/iStock

 宇宙の形についての常識がくつがえるような新説が発表された。新しい研究によると、宇宙は平らではなく、巨大な風船のように湾曲しているのかもしれないそうだ。

 『Nature Astronomy』(11月4日付)に掲載された研究では、「宇宙マイクロ波背景放射」から得たデータを分析。その結果は、従来の見解とは異なるものだった。

宇宙はループしている?


 もし本当に宇宙が湾曲しているのであれば、それは緩やかに曲がっている。そのために、私たちや太陽系、あるいは銀河といったものの周辺を移動する際には大した問題とはならない。

 しかし、それよりもっと向こうに広がる宇宙の闇の奥深くへと進むなら、真っ直ぐに進んでいるはずがループして最初の地点に戻ってくるという妙な事態が発生する。
 
 こうした宇宙を「閉じた宇宙」という。

 この概念自体は昔から存在するが、従来の宇宙理論に矛盾が生じてしまうのであまり支持されず、主流派の見解はどこまでいっても境界なく広がる「平坦な宇宙」だった。

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image by:NASA/ public domain

開いた宇宙と閉じた宇宙


 研究グループの1人、ローマ・ラ・サピエンツァ大学のアレッサンドロ・メルキオーリ氏によると、閉じた宇宙と開いた宇宙の違いは、ベッドにまっすぐ敷かれたマットと膨らんだ風船との違いに似ているという。

 どちらの宇宙も膨張しているが、マットのような形が膨張したときには、あらゆる地点が互いにまっすぐ遠ざかることになる。

 しかし風船のような形が膨張した場合、表面の各地点が互いに遠ざかるのは同じであっても、風船の湾曲のために遠ざかり方はもっと複雑になる。

 また開いた平坦な宇宙では、ふたつの光が並行して移動するなら、どこまで行っても交わったりはしない。しかし、閉じた宇宙では、並行して移動する光が交わることもある。


インフレーション理論の平らな宇宙


 従来のインフレーション宇宙理論は、宇宙が平らであることを示している。

 このモデルによれば、宇宙の膨張を過去にさかのぼり、ビッグバンから0.0000000000000000000000001秒後という始まりの時点まで巻き戻してみると、宇宙が無限小の点からグワッと爆発的に膨張する瞬間が見られると考えられる。

 ほとんどの専門家が平らな宇宙を支持する最初の理由はこれだ。もし宇宙が平らでないのならば、この原始のメカニズムがぴったりと収まるように物理を細かく調整しなければならなくなってしまう。

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Image by maraqu/iStock

宇宙マイクロ波背景放射の異常で宇宙の湾曲がわかる


 だが新しい研究によれば、そんな必要はなかったのだという。なぜなら宇宙マイクロ波背景放射に異常があるからだ。

 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)は宇宙が誕生したときの名残りだと考えられている。宇宙で観察できるものとしては最古のもので、全宇宙を満たしている。

 古くまた宇宙全体に広がっていることから、宇宙の歴史や振る舞いを調べるうえでは最重要なデータのひとつだ。

 そして最新のデータから、これまで想定されていたよりもCMBの重力レンズが多いことが明らかになった。このことは重力がCMBのマイクロ波を従来の物理学で説明できる以上に曲げているらしいということだ。

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image by: ESA and the Planck Collaboration

 この最新データは、CMBの詳細な観察を目的とする欧州宇宙機関のプランク・コラボレーションからもたらされたもの。

 メルキオーリ氏らは、この想定外の重力レンズを解明するために、「Aレンズ(A_lens)」という新しいパラメーターを宇宙の形成モデルに付け加えることにした。

 このAレンズは物理学とは関係がない――つまりアインシュタインの相対性理論にはないパラメーターだという。

 その結果、正の湾曲を持つ宇宙ならばAレンズを説明することができた。そして、こちらこそが、一般相対性理論で説明することが可能なより物理学的な解釈と言えるのだそうだ。

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image by: ESA and the Planck Collaboration

ただし別の最新結果は平坦な宇宙を支持


 ただし、この見解は仮説であって決定的なものではない。物理学的に結論を出すためには、まだ統計の精度が足りないからだ。

 しかし、このこと以外にも疑わしい点があると主張する研究者もいる。そうした1人であるスタンフォード大学のアンドレイ・リンデ氏は、この研究は最近公開されたケンブリッジ大学の研究グループからの報告を考慮していないと指摘する。

 その研究では、プランク・コラボレーションのデータに加えて、初期宇宙に関するまた別のふたつのデータセットをあわせて分析したが、その結果はむしろ平坦な宇宙を示唆するものだったという。

宇宙理論はくつがえるのか?


 仮に湾曲した宇宙が正しいのだとすると、これまでの初期宇宙に関する観測結果とさまざまな矛盾が生じるようになるそうだ。これは天文学者としてはそう簡単に受け入れられないだろう。

 だが宇宙に関するホットなトピックが誕生したのだとしたら、それを端から見ている素人としては面白いかぎりだ。宇宙の常識がくつがえるのも悪くない。これからどんな激論が交わされるのか楽しみに待っているとしよう。

References:newscientist / livescience/ written by hiroching / edited by parumo

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