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中島翔哉は救世主になれるか? EL完敗で露呈したポルトの迷走、監督の明らかな采配ミス

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中島翔哉は救世主になれるか? EL完敗で露呈したポルトの迷走、監督の明らかな采配ミス

ズタズタに引き裂かれたプライド

 ポルトがヨーロッパリーグ(EL)で苦戦している。特にアウェイでは2戦2敗。7日にはレンジャーズに0-2で敗れた。セルジオ・コンセイソン監督はシステム変更に踏み切ったものの、全く機能せずに想定外の負傷者も出している。迷走するポルトガルの強豪はこの不振から抜け出すことができるだろうか。そして中島翔哉は復調へのキーマンとなり、救世主たりえるのだろうか。(取材・文:舩木渉【グラスゴー】)

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 あまりにも良いところなしの敗戦に、取材に訪れていたポルトガルの記者たちは「間違いなく今季のワーストゲーム」と口を揃えた。完全に同意する。

 現地7日に行われたヨーロッパリーグ(EL)のグループG第4節で、ポルトはレンジャーズに0-2の完敗を喫した。約5万人の大観衆が一斉に飛び跳ねて揺れるアイブロックス・スタジアムの雰囲気とは対照的に、黄色いアウェイユニフォームに身を包んだ名門の選手たちは沈黙した。

 試合前日の記者会見でポルトを率いるセルジオ・コンセイソン監督が発した言葉も、あの完敗を見せられた後だと余計に虚しく聞こえる。

「歴史的に見て、我々はチャンピオンズリーグ(CL)で戦うことに慣れていた。ELではない。だが、このELに出場できて幸せだし、ポルトは2度この大会で優勝している。(中略)私はポルトガル代表として一度スコットランドで試合をしたことがあるため、ここ(アイブロックス)の雰囲気が情熱的で特別なものだと知っている。

だが、我々のホームもこういった雰囲気があるので嫉妬はしていないし、文句もない。CLだろうがELだろうが、ポルトを代表してヨーロッパの舞台に立つことが常に名誉であると思っている。もちろんCLに出場したいが」

 コンセイソン監督は「最初からバランスのとれた質の高いチームが揃っているグループだと言ってきた」と対戦相手へのリスペクトも口にしてはいたが、「CLで戦うことに慣れている」という言葉からは、どこからELが「我々の場所ではない」と言っているようなプライドが垣間見える気がしていた。

 確かに「ELに慣れていない」とはいえ、CLもELも週に2試合をこなす過密日程になるのは一緒。そういった中でアウェイゲームを2試合連続で落としたことには、重要な意味があるはずだ。

 ポルトは国内リーグであれば基本的に支配する側に回り、自陣に引いてブロックを形成する相手を押し込んで圧倒する戦い方がメインになる。そのため力の差が少なく、ホームの声援を背に真っ向勝負を挑んでくるELのアウェイゲームの展開にも「慣れていない」。これは今季のELで苦戦する要因の1つになっているだろう。

3バックへの変更は完全に失敗

 だが、7日のレンジャーズ戦は「慣れ」では済まされない完敗だった。当初は決勝トーナメント進出の最有力候補と見られていたポルトは、2試合を残してグループ最下位に沈む。ポジティブな要素を探すのが極めて難しい試合になった。

 コンセイソン監督は大一番で今季初となる3バックでのスタートを決断した。これが最大の過ちだったことは、試合が始まってすぐに判明する。

 最終ラインに右からDFチャンセル・ムベンバ、DFぺぺ、DFイバン・マルカノを配し、MFダニーロ・ペレイラがアンカーとして構える。ウィングバックは右にDFウィルソン・マナファ、左にDFアレックス・テレス、2列目にMFオターヴィオ、MFヘスス・コロナ、MFマテウス・ウリベを並べ、最前線にはFWチキーニョ・ソアレスを据えた。

 攻撃時にはウィングバックが高い位置を取り、守備時はボールと逆サイドのウィングバックが下がって4バック気味になる変則的な布陣になっていたが、序盤から攻守にチグハグな印象は拭えなかった。

 狙いはわかりやすい。レンジャーズの強烈なカウンターに備えて後方に構える選手の数を増やしてリスクを管理しつつ、攻撃では両ウィングバックが高いポジションを取りやすくする。相手の守備陣形を横に広げてクロスに飛び込める人数も増やそうとしていた。

 コンセイソン監督も試合後の記者会見の中で「レンジャーズのウィングは内側でもストライカーをサポートするという大きな役割を果たしているため、3バックで中央の守備を堅くしたかった。そしてアレックス・テレスとウィルソン・マナファをアウトサイドに置くことで攻撃的に相手の組織を破壊したかった」と3バック採用の理由を説明していた。

 そして「相手は我々がこのようなやり方で試合に入ってくるとは予想していなかったのではないか」とも述べた。ところがレンジャーズは冷静で、積極的にパスカットを狙ってからのカウンターでポルトのゴールを何度も脅かす。後ろに人数が揃っているはずのポルトはビルドアップで中途半端なパスミスが多く、思うようにボールを前進させられなかった。

 結果的に規律やハードワークに重きを置くチームが、遅刻癖や私生活の自由奔放さで有名な「規律」とは無縁のFWアルフレッド・モレーロスに息の根を止められたのは皮肉な話だ。見事な左足シュートで69分に先制点を奪ったコロンビア代表FWは、73分にMFスティーブン・デイビスのダメ押しゴールもアシストしてレンジャーズに会心の勝利をもたらした。

「こなせる」と「機能する」は違う

 コンセイソン監督の采配ミスと言うべき極めつけは、後半開始早々に守備の要ぺぺが負傷交代してからも3バックにこだわり続けたことだ。FWルイス・ディアス投入の準備をしていたので慣れ親しんだ4バックに戻すかと思いきや、コロナを右ウィングバックに、マナファを左ウィングバックに移し、アレックス・テレスが3バックの左ストッパーに下がることでシステムを変えずに戦った。

 これによってわずかに残されていた攻撃における選手の魅力的な個性が完全に消えてしまった。その後の交代で投入されるのも空中戦の強さが持ち味のFWゼ・ルイスや、明らかに経験が足りていない17歳のFWファビオ・シルバで、力押し感が否めず。攻撃に意外性はなく、ゴールの気配はほとんどなかった。

 そもそも今回の3バックは、コロナやオターヴィオ、ムベンバといった複数ポジションに対応できる器用な選手たちがいたからこそできたものだが、彼らも「こなせる」だけであって、いきなり急ごしらえのシステムにはめられても個性がマッチせず、組織として「十分に機能する」レベルまでには至っていなかった。

 例えばウリベは普段よりもポジションを上げたことによりプレーエリアの広さやボール奪取力を発揮することができなくなった。アンカーのダニーロ・ペレイラも3000万ユーロ(約45億円)とされる市場価値の8割は卓越した守備力に対してのもので、ビルドアップにおける能力の限界を露呈した。

 ムベンバも対人プレーで軽さを見せてセンターバックとしては致命的な弱点を晒してしまった。アレックス・テレスの武器である攻撃面での影響力は、3バックの左ストッパーになったことで発揮できなくなってしまった。ぺぺの負傷が想定外だったとはいえ、控えのセンターバックをベンチに1人も入れておらず、指揮官のリスク管理に甘さがあったとも言えるだろう。

 これまで「堅守」と言われてきた守備はぺぺやマルカノにおんぶに抱っこだったことが改めて証明され、攻撃面で創造性を発揮できる選手もいなかった。負傷離脱することになりそうなぺぺの代役を同じレベルで務められる代わりの選手はおらず、今夏の移籍市場で放出された背番号10の前任者オリベル・トーレスのような、拮抗した展開の中で意外性あるプレーでボールをゴールに近づけることができるファンタジスタも現チームに存在しない。

中島翔哉は救世主になれるか

 コンセイソン監督は「0-2で負けて戦略が良かったわけがない。常に監督の私に責任がある」と悔いたが、試合前に用意したプランがどれほど間違いだったのかはしっかり検証しなければならない。最近は内容に乏しい試合が続いて停滞感が漂っているだけに、悪い流れのまま代表ウィークによる中断に入ることだけは避けたいところだ。

 これほど絶望的な状況でも「監督は会長にかなり好かれているから、すぐに解任されることはないだろう」と、あるポルトガル大手紙の記者は言った。一方で「週末のボアヴィスタ戦で負ければ状況は変わるかもしれないが…」とも含みを持たせる。

 10日には中2日でボアヴィスタとのリーグ戦が控えている。コンセイソン監督はうまくいったチームに変更を加えることは少ないが、うまくいかなかったチームはすぐに変える。指揮官が対処療法的な采配を続けてきているとはいえ、ここ数試合出番が限られている中島にとってはポルトの救世主になるチャンスがやってきたかもしれない。

 記者会見のたびに「ダイナミクス」という言葉を使ってコンセイソン監督が組織の重要性を説いてもチーム状態の劇的な改善に見通しが立たない中、創造性や意外性を発揮して勝利につながる結果を残せば背番号10のチーム内での立場が一気に好転する可能性もある。

 気温5度を下回る極寒の中でもレンジャーズのサポーターが声を枯らして勝者を称える一方で、ポルトのサポーターは途中で歌うのをやめた。試合後に歌声は少しだけ聞こえたが、ポルトの選手たちが挨拶した際のサポーターとの距離はいつもより心なしか遠かったように感じた。

 このままチームが迷走するようでは、サポーターの心も離れていってしまう。ELで決勝トーナメントに進出する望みも断たれてしまうだろう。レンジャーズ戦は前向きな要素を見つけるのすら難しく、強豪としてのプライドは打ち砕かれた。この危機的な状況をいかに脱していくか、コンセイソン監督の手腕が問われる。

(取材・文:舩木渉【グラスゴー】)

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