top_line

緊張感漲る実際の精神科病棟の中で――映画「閉鎖病棟―それぞれの朝―」 平山秀幸監督インタビュー 全2回【前編】

キネマ旬報WEB

死刑執行が失敗して生きながらえている男
幻聴に苦しむ元サラリーマン
DVを受ける女子高生……
精神科病棟を舞台に、居場所をなくした人々が、
出会い、癒され、自らの人生へ旅立っていく人間ドラマを
やさしく描き出す渾身の一作
作品が生まれるまでの様々なエピソードを平山秀幸監督に語っていただいた。(全2回【前編】)

 

8年越しの企画は鶴瓶さんの主演で動き出した

――「閉鎖病棟―それぞれの朝―」は、帚木蓬生氏のベストセラー小説の映画化で、信州の精神科病棟を舞台に患者さんたちの人間模様を描いた作品です。死刑囚でありながら刑の執行に失敗し病院に送られてきた秀丸さんを笑福亭鶴瓶さんが演じ、それに綾野剛さん扮するチュウさん、小松菜奈さん扮する由紀など、同じ病院の患者たちが多彩に絡みます。平山監督の映画作品としては、前作の「エヴェレスト 神々の山嶺」が2016年3月公開でしたから、本作まで3年半の歳月が経過しています。はじめにこの間の動きを教えてください。

平山 無職ですよ(笑)。映画の企画も進めたのですが、ご存じのように必ずしもうまく転がる世界ではないということで、結局テレビ(WOWOW連続ドラマW『ヒトヤノトゲ 獄の棘』2017)と舞台(『やんごとなき二人』2017)を1本ずつやっただけという感じですね。

――この作品の脚本を書かれた時期は?

平山 8年くらい前でしょうか。ある方からいくつか勧められた帚木さんの本の中にこの小説があったんです。震災のあった2011年頃に、映画化するという見込みが何もないままに、自分がやりたいことの一つみたいなことでスタートしました。

――ご自分の監督作品の脚本を執筆されるのは初めてですね。

平山 外から「こういう作品どうですか」と依頼がきた場合は、プロデューサーもまじえてシナリオライターは誰がいいだろうかといろいろ協議できますが、でも、今回に関しては自分がやりたいという気持だけで企画として成立していない段階なので、宿題でもやるように自ら少しずつ書いていきました。

――それで、東映というメジャーな映画会社で製作されるに至った要因は?

平山 やはり鶴瓶さんでしょうね。3年くらい前からこの映画実現のため一緒にやってきた三宅(はるえ)プロデューサーが僕のホン(脚本)を読んだところ、鶴瓶さんの名前が出ました。早速手紙を添えて、オファーしました。それでもスケジュールの問題などで3年くらいかかりました。それが実現のスタートです。鶴瓶さんに主役の秀丸さんを受けていただいたところから具体化していったということです。

 

――でも、今回の作品は時代の病巣を撃つ見事な作品に仕上がりました。原作は病院にいる人々の群像劇風の趣がありましたが、映画ではコンパクトに集約されておりますね。

平山 原作は精神科病院に入院している精神疾患の人たちの話です。映画として現実的な2時間という枠の中でやるとしたらどこにポイントを置けばいいのかを考えました。そんな時に秀丸さんの話からスタートしたらどうなんだろうと思いついたんです。で、原作はチュウさんが主役なのですが、チュウさんを間に置いて、秀丸さんと由紀の三人の話に絞り込んだほうが映画的にストレートじゃないかと思ったんです。

――精神疾患というデリケートな素材を扱うのですから、いろいろご苦労も多かったんじゃないですか?

平山 クランクインする1年前くらいから準備が始まったんですが、そこでまた改めていろいろ精神疾患のことを調べたんですが、そうすると「ああ、こういうところ俺、あるよね」とか「〇〇さんにそっくりだ」とか、自分の周りの人たちにも通じるようなことがいっぱい出てくるんです。そうすると、すごく落ち込んだり、かつ身近に感じたりしました。本当に他人事ではない感じでした。この映画の俳優オーディションを三宅プロデューサーとやり、四百人くらいに来ていただいて自己紹介とか台詞読みとかに加えて、喋れる範囲でご自分の周りで精神科や心療内科について語れることがあれば語ってくださいとお願いしたら、それこそかなりの方が様々な状況を話してくれました。

【後編】につづく

取材・文=鈴村たけし/制作=キネマ旬報社

 

平山秀幸(ひらやま・ひでゆき)

1950年生まれ、福岡県出身。1990年「マリアの胃袋」で監督デビュー。主な作品に「ザ・中学教師」(1992)、「学校の怪談」シリーズ(1995・1996・1999)、「愛を乞うひと」(1998/キネマ旬報ベスト。テン監督賞受賞)、「笑う蛙」(2002)、「ОUT」(2002)、「レディ・ジョーカー」(2004)、「しゃべれども しゃべれども」(2007)、「必死剣 鳥刺し」(2010)、「エヴェレスト 神々の山嶺」(2016)など多数。

 

「閉鎖病棟―それぞれの朝―」
2019年・日本・1時間57分 監督・脚本:平山秀幸 原作:帚木蓬生 撮影:柴崎幸三 照明:上田なりゆき 美術:中澤克巳 録音:小松将人 編集:洲崎千恵子 音楽=安川午朗出演:笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈、坂東龍汰、平岩紙、綾田俊樹、森下能幸、水澤紳吾、駒木根隆介、大窪人衛、北村早樹子、大方斐紗子、村木仁、片岡礼子、山中崇、根岸季衣、ベンガル、高橋和也、木野花、渋川清彦、小林聡美 配東映
◎全国にて公開中
(C)2019「閉鎖病棟」製作委員会

TOPICS

ランキング

ジャンル