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路上でひとりぼっちで炊き出しを食べる5歳の男の子。アイルランドのホームレス事情が浮き彫りに

カラパイア

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 10月に入ると外気温が一気に下がり、アイルランドでは毎晩気温が一桁台になるということは珍しくない。

 ホームレスの人々は、これから迎える厳しい冬を耐え忍んで過ごす。慈善団体のボランティアたちは各地でその支援に尽力し、定期的に炊き出しを行う団体も多い。

 そんな中、あるボランティアスタッフがひとりの男の子の姿を写真に収め、フェイスブックでシェアした。

 ダブリンの路上で、段ボールを敷いてひとり孤独に炊き出しを食べる幼い子供の姿に、ネット上では大きな反響を呼んだ。

アイルランドが抱える深刻なホームレス問題


 現在、アイルランドの住宅事情は深刻な危機に陥っている。

 欧州経済の勝ち組とも言われているアイルランドだが、特に首都ダブリンでは物価上昇に伴い、1年前と比べて家賃平均が10%近く上昇し、家賃が払えずホームレスになる人が増え、大きな社会問題となっているのだ。

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quinntheislander/pixabay

 住宅局の最新のデータによると、首都ダブリンでは3848人の子供を含む10338人が各地域の緊急宿泊施設の利用を強いられているという。

 緊急宿泊施設では、宿泊客は調理を禁じられており、施設内には調理設備もない。そのため、多くのホームレスたちは慈善団体が支援するフード・ステーション、いわゆる炊き出しに頼らざるを得ない。

 毎週火曜日、ダブリンを拠点としてホームレスらに炊き出しの支援をしている慈善団体『The Homeless Street Cafe』のボランティアスタッフが、10月15日にフェイスブックで1枚の写真をシェアしたところ、大きな反響を呼んだ。



路上でひとり、炊き出しを食べる5歳の男の子


 フェイスブックに投稿された写真は、ホームレスの5歳の男児の後ろ姿で、サム(仮名)はスタッフが用意したカルボナーラを、路上に段ボール紙を敷いて座り、食べている。

 サムは、母親と共にホームレス生活をしており、現在は緊急宿泊施設に滞在しているという。

 ボランティアスタッフいわく、「サムのケースは目を見張るものがあるが、決して珍しいことではない」そうだ。その言葉は、現在のダブリンで子供のホームレスが増加しているという事実を意味する。

 フェイスブックでは、スタッフは次のように綴っている。

やっと炊き出しを終えて家に戻ってきました。激しく疲れ、感情的になっています。今夜の光景は、全てのスタッフの心に焼き付けられたことでしょう。

今夜の炊き出しであるカルボナーラを、孤独に路上でひとり食べているサムの姿に、心を痛めています。

たった5歳の子供が、こんなふうにホームレスになるという現在の状況を、私たちは受け入れていいはずがないのです。

このような事態は間違っています。ですが、ダブリンでは現実に起こっていることで、毎週状況が悪化しています。


住宅危機に対応できない政府は“国の恥”


 同じく非営利団体の『Feed Our Homeless』スタッフが用意するフード・ステーションにもサムの姿があり、ビスケットや缶詰のパスタを食べている写真がフェイスブックでシェアされた。



これらの光景に言葉はありません。悪化するホームレス危機は、“国の恥”といえるべきです。

学校の制服を着たこの幼い子供は、数時間前に学校から戻って来て今夜はここで夕食をとっています。

この男児だけではなく、緊急宿泊施設に滞在する多くのホームレスの子供たちが、毎週夕食をここで食べることは当たり前になっているのです。

家と呼べる場所がないために、彼らは路上で段ボールに座り夕食をとっているのです。子供たちは親と一緒にテーブルについて、普通の家族のように食事をとるべきなのです。




 厳しい住宅事情に何の対応もしない住宅大臣オーウェン・マーフィーに対し、『Feed Our Homeless』の創設者でCEO(最高経営責任者)のトニー・ウォルシュさんは、「住宅危機が悪化している責任をとって辞職すべき」と非難している。


現時点ではホームレスの苦境に対する対策はなし


 アイルランドで、幼い子供がこのようにホームレス生活を強いられるという光景をソーシャルメディアで見た人々は、激しいショックを受け、先進国の悲しすぎる現状に「信じられない」という声を挙げた。

 『The Homeless Street Cafe』のスタッフは、投稿が大きな反響を呼んだ後、このように綴っている。

多くの人が、この光景が間違っていると認識していることに感謝します。

私たちの最優先事項は、毎週やってくるサムのような子供たちやその他のホームレスの人々を支援し続けていくことです。

 これらの慈善団体による投稿は、ホームレス状態と戦っている何百人もの人たちの苦境に関する認識を高める注意喚起としてなされたものだ。

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niekverlaan/pixabay

 去年12月1日には、政府への早急な住宅対策を求めて、約1万人の住民らがダブリン中心部でデモ行進を行った。

 しかしそれ以降も、ホームレスの数は増え続け、住宅危機に直面している人は後を絶たない。

 こうしたホームレスの増加問題は、アイルランドに限ったことではない。日本を含め、世界中では何百万人もの人が、家を失った状態で暮らしている。



 国の経済成長と個人の幸せは、必ずしも同等ではないということを、多くの人がダブリンの男児の背中から感じているようだ。

References:Irish Mirrorなど / written by Scarlet / edited by parumo

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