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インドじゃない?!ゴダイゴが描くユートピア「ガンダーラ」を探して

UtaTen

ゴダイゴ最大のヒット曲『ガンダーラ』。

華やかな『MONKEY MAGIC』とはうってかわって、寂しげなメロディのこの曲が、なぜ日本人の心を捉えたのでしょうか。

当時の時代背景と共に考察します。

ドラマ「西遊記」の衝撃


画像引用元 (Amazon)
ドラマの「西遊記」と言えば、2006年に「月9」で放映された香取慎吾バージョンを思い浮かべる方も多いと思いますが、そのオリジナルは、1978年から1980年に放映された、堺正章主演の「西遊記」と「西遊記II」です。

元祖「西遊記」は、色々な点で衝撃的なドラマでした。

まず、煮えたつマグマの中から一つの岩が現れ、その岩が破裂して、中から孫悟空が誕生するオープニング。

そのインパクトたるや半端ではありませんでした。

毎週日曜、夜8時。子供たちは転がる岩をドキドキしながら見ていたものです。

次に、ハマり過ぎのキャスティングです。孫悟空=堺正章、 猪八戒=西田敏行(後に左とん平)、沙悟浄=岸部シロー、そして、女優、夏目雅子演じる美しすぎる三蔵法師。

みんなこのドラマのために生まれてきたと言っても過言ではありません。

また、日本テレビ開局40周年記念ドラマだったこの作品は、オープニングの悟空誕生シーンを始め、当時まだ珍しかった特撮映像や、日本のテレビドラマ初となる中国ロケの敢行などで、裏番組のNHK大河ドラマに勝負を挑みます。

こうして、民放が総力をあげて作り上げた「西遊記」は、魅力的なキャラクターたちが織りなす、笑いあり涙ありの心温まるストーリーが視聴者の心を掴み、NHK大河ドラマと視聴率を二分する国民的ドラマとなったのです。

ゴダイゴ・マジックが日本を席巻



ドラマ「西遊記」大ヒットの一翼を担ったのが、ゴダイゴによる音楽です。

「西遊記」のオープニング、「アチャー!」で始まるエレクトリックで摩訶不思議な『MONKEY MAGIC』は、人々をアッという間に虜にしました。

“ゴダイゴって後醍醐天皇のこと?”“やたら発音のいい英語で歌うボーカルの「タケカワユキヒデ」は何故カタカナ表記?”“キーボードの「ミッキー吉野」のミッキーって一体?”“あの外人2人は何者?”…

そんな謎のインターナショナル感に満ちたゴダイゴは世間の注目集め、彼らが生み出すどこか宗教的で希望を感じる曲は、世代を問わず親しまれます。

そして、優しい笑顔で歌うタケカワユキヒデがアイドル的人気を博してヒットを連発。ゴダイゴは一時代を築きました。

「ガンダーラ」で交差する夢と現実



『ガンダーラ』は、ドラマ「西遊記」のエンディングテーマでした。

当時の人々は、この曲を聴きながら、何を考え、感じていたのでしょう。

その答えを、古代シルクロードの世界へ探しに行きましょう。


1970年代終盤は、久保田早紀の『異邦人』に代表されるような、シルクロードを連想させる無国籍ソングが流行しました。

今ほど簡単に海外に行ける時代ではなかった1970年代、海外旅行は日本人の憧れでした。

人々は皆、日曜日の朝の人気番組「兼高かおる世界の旅」を見て、海の向こうに想いを馳せていたのです。

そんな時代背景が、無国籍ソングが人気を集めた理由だったに違いありません。

異国情緒溢れる『ガンダーラ』も、出だしからリスナーをシルクロードへと誘います。



「西遊記」で三蔵法師一行が経典を求めて目指しているのが天竺(インド)だったため、当時はガンダーラ=天竺と思っていた人も多い事でしょう。

しかし、ガンダーラとは、紀元前6世紀頃から紀元後11世紀頃に、現在のパキスタン北西部に存在した古代王国。

実はインドではなかったのです。

紀元後1世紀頃、仏教が盛んだったここガンダーラで、仏教美術のガンダーラ美術が開花します。

なんと、仏教にはもともと「仏像」がなく、私たちが今、お寺で当たり前に目にしている「仏像」は、このガンダーラ美術から生まれました。

ガンダーラは、地理的に西洋とも交流があり、ギリシャ彫刻の影響を受けて仏像が誕生したのです。

ポータブルな仏像効果で、仏教はシルクロードを経て、中国、朝鮮半島、そして日本へと、急速に広がって行きました。



ガンダーラ=天竺でないとなると、なぜこの曲をドラマに起用したのでしょうか。

それは、ガンダーラはインドへの入り口に当たり、三蔵法師も実際にそこを通ってインドへと入ったからです。

「西遊記」は架空の物語ですが、三蔵法師は実在の人物でした。

中国の西安からガンダーラまで、列車すらない時代には、気の遠くなるような長い旅路です。

三蔵にとって、インドへの入り口ガンダーラが一つの目標であった事でしょう。

本当に生きてたどり着けるのか、悟りを開いた三蔵法師と言えども、誰かに問いかけたくなったに違いありません。



毎週日曜日、楽しい「西遊記」が終わると流れて来る『ガンダーラ』。

どこか寂しげなその曲に、視聴者は三蔵法師が遠い昔に旅したシルクロードを思い描き、それと同時に、自分自身を重ね合わせました。

1970年代、豊かになった日本で、仕事や勉強に追われながら、“苦しみのない自由な国、そんな理想郷がどこかにあればいいのになぁ”と。

ギリシャ語で「どこにもない場所」という意味のユートピアが、この世に存在するはずはないと知りながらも…。

古代ガンダーラ王国が東西文化の交差点であったように、この曲の中で人々は夢と現実を行き来しました。

希望と諦念、それを繰り返しながら人は生きて行きます。

その二つを感じさせるこの曲は、辛抱強く生きる日本人の心の琴線に触れました。

大人も子供も、『ガンダーラ』を聴きながら日曜日の終わりにブルーになりつつ、来週の「西遊記」を楽しみにして、新しい朝を迎えたのです。

生き続ける「ガンダーラ」伝説



1985年、ゴダイゴはインターミッション(活動休止)に入ります。

しかし、その作品は日本の音楽界に多大な影響を与え、『ガンダーラ』は現在に至るまで数多くのカバー曲が誕生しました。

MONKEY MAJIK、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉、ANIMETALなどなど。

また、ゲームのイメージソングにも起用されるほどの人気ぶり。

1990年代に入るとゴダイゴは再評価され、2006年には恒久的な再始動を宣言しました。

古代のガンダーラ王国は消滅しても、ゴダイゴの『ガンダーラ』は、彼らと共に新たな歴史を刻んで行きます。

TEXT 岡倉綾子

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