自律神経は交感神経と副交感神経に分かれる。交感神経の働きにより膀胱に尿がたまり、副交感神経の働きが尿意をもよおす。これらが乱れると膀胱の働きをコントロールできなくなってしまう。
泌尿器に関するデリケートな問題なので、「人に相談できずに悩みを抱えている女性も多い」と堀田先生。そこで、まずは次のチェックシート(過活動膀胱診療ガイドライン:日本排尿機能学会編集〈2015年〉を基に作成)で、過活動膀胱ではないか確認してみよう。
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【1】起きている間、トイレに何回行きますか
□7回以上(0点)
□8〜14回(1点)
□15回以上(2点)
【2】就寝中トイレのために何回起きますか
□0回(0点)
□1回(1点)
□2回(2点)
□3回以上(3点)
【3】激しい尿意に襲われ、トイレに駆け込んだことはありますか
□なし(0点)
□週に1回より少ない(1点)
□週に1回以上(2点)
□1日1回くらい(3点)
□1日2〜4回(4点)
□1日5回以上(5点)
【4】尿意を我慢できず、漏らしてしまったことはありますか
□なし(0点)
□週に1回より少ない(1点)
□週に1回以上(2点)
□1日1回くらい(3点)
□1日2〜4回(4点)
□1日5回以上(5点)
【3】の質問が2点以上かつ合計点数3点以上は夜間頻尿の可能性あり。5点以下=軽度、6〜11点=中等症、12点以上=重症。
しかし、該当しても、すぐ悲観する必要はない。
「夜間頻尿の原因が過活動膀胱であれば、改善法があるんです。自律神経を整える薬を飲むという方法もありますが、口内炎や便秘などの副作用もあるので、これは最終手段。まずは、自律神経を整えることができるマッサージを試してみましょう」
まず、堀田先生が昨年編み出した「骨盤底さすり」。過活動膀胱による高齢者の夜間頻尿の症状緩和効果が認められ、国内外で注目されているマッサージだ。やり方は簡単。
「人さし指の腹で、会陰部(肛門と膣の間)約3センチの皮膚を、そう〜っと左右に10往復さするだけです。1秒間に1センチを目安にゆっくりと動かし、指先が皮膚にかすかに触れるかどうか程度の力で、優しくさすってください。この軽いタッチにより、脳やせき髄の中で、脳内モルヒネが出て、膀胱への排尿の指令をせき髄で抑制してくれるんです。眠る前にやってみてください」
ただし、「骨盤底さすり」は布などをはさむと効果は半減。何もはいていない状態で行うことが望ましい。こんなデリケートな部分を触ることに抵抗がある人や、家族の目が気になってやるのが難しい人は、「脚の裏側さすり」を試してみよう。
「膀胱に関する神経が集中している脚の裏側を手のひらで、1分間ゆっくりゆっくりさすっていきます。お尻から太もも、膝の後ろ、ふくらはぎにかけて、うぶ毛が動くぐらいのわずかな力で、少しくすぐったいぐらい優しくさすってみてください。お風呂上がり、肌が乾いてからやるのがおすすめ。心地よい状態でさすることで、自律神経を整えることができます」
堀田先生が考案したこれらのマッサージで、夜間頻尿が改善した患者は多いという。
「78歳のAさんは、失禁しかけたこともあるほど急な尿意に悩んでいましたが、『骨盤底さすり』を始めた日から、5回あった夜中の頻尿の回数が3回に減ったのです。また、多いときには一晩で5回もトイレに起きていたという80歳のBさんにも、就寝前と朝の起床後、昼すぎの3回、骨盤底さすりをしてもらいました。すると、2カ月後には夜中のトイレの回数が1〜2回に減り、ときには朝まで一度も起きずに熟睡できるようになったんです」
ただし、このケア法が効くのは、過活動膀胱が原因の夜間頻尿だけ。
「効果がない場合、血管障害、心臓疾患、内臓の機能低下など、重篤な病気を疑ったほうがいいかもしれません。健康診断や人間ドックを受けて原因を調べてみましょう」
朝までぐっすり眠りたいーー。そんな願いをかなえて、健康も手に入れよう。