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今江年晶の野球人生が苦しくも幸せだった理由

週刊ベースボールONLINE


今江の引退会見にはチームメートの渡辺直人(右)、藤田一也が訪れて花束を渡した

 10月18日、楽天の今江年晶が18年間のプロ野球生活にピリオドを打ち、引退会見を行った。目に涙をため、何度も言葉を詰まらせて伝えたのは家族やファンへの感謝の気持ちだった。

「これまで応援してくださった皆さまに、言葉では言い表せないくらい感謝しています」

 2002年ドラフト3巡目でロッテに入団した今江は05年にレギュラーを獲得。その年の日本シリーズでは8打席連続安打のシリーズ記録を作るなど日本シリーズMVPに輝く活躍で日本一に貢献した。ゴリの愛称で親しまれファンからも愛された男は、10年にも日本一に導くと、2度目の日本シリーズMVPに。06年には第1回WBCに出場して世界一も経験するなど、一気に球界を代表する選手となった。

 11年の東日本大震災以降は大きな被害を受けた福島県いわき市で野球教室を開くなど、何度も東北に足を運び子どもたちに笑顔を届けてきた。そして、いつしかその交流が自分の力になっていく。「多くの人と交流を持ったことでエールを送りたいと。それが原動力になっていた」。16年には縁のある東北でプレーすることを決意しFAで楽天に移籍。その年、通算1500安打を達成した。さらに18年には通算100本塁打も記録し127試合に出場するなど、引退は先のように思えていた。

 だが野球人生は暗転してしまう。今季のキャンプ前に目の不調を訴え出遅れると5月に一軍昇格も、7月には試合に影響するほど症状が悪化。自ら二軍に行くことを平石洋介監督に伝えた。その影響もあり26試合の出場にとどまると、引退の2文字が頭をよぎる。「やりたい気持ちはあったが、目の病気や年齢などを考えると違うチームでプレーするのは不安だった」。ゆっくりと語った引退理由は、自分に言い聞かせるようでもあった。

 会見場の外には多くのファンが集まっていた。会見後にそのファンの下へ向かい自身の言葉で感謝の言葉を伝えた。「ありがとう」「頑張れ!」。その言葉に込み上げるものがあった。「チームに貢献できず申し訳ない気持ちでいっぱい」。だがこうも続けた。「楽しかった4年間でした」。

 苦しいことのほうが多かったと振り返ったプロ野球生活。それでも今江はいう。

「幸せな野球人生でした」。

 ファンを愛しファンに愛された男は、その声援を胸に第二の人生を歩き出す。

文・写真=阿部ちはる

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