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戦いと裏切り渦巻く「バラ戦争」を再現した『Blocks!: Richard III』でイングランド内戦を体験【デジタルボードゲームで遊ぼう!】

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戦いと裏切り渦巻く「バラ戦争」を再現した『Blocks!: Richard III』でイングランド内戦を体験【デジタルボードゲームで遊ぼう!】

「デジタルボードゲームで遊ぼう!」ではボードゲーム要素やカードゲーム要素、TRPG要素のある魅力の新作ゲームを特集。今回は15世紀にイギリスで起きたランカスター家とヨーク家の王位継承争い「バラ戦争」をテーマにした戦略ボードゲーム『Blocks!: Richard III』をお届けします。

本作はAvalon Digitalによって、10月10日にSteamで配信されました。本作の元となっているのはコロンビアゲームズ社のボードゲーム「リチャード3世(Richard III:The Wars of the Roses)」。コロンビアゲームズ社はナポレオン戦争や南北戦争など様々な戦略ボードゲームを多数発売しており、正方形のブロックをコマに使うことから「積み木(Block)ゲーム」などとも呼ばれています。

本作の舞台であるバラ戦争の原因となったのは、フランスとの間で長年続いた「百年戦争」。ヨーロッパ大陸での旗色が悪くなってきたイングランドは、和平派の「ランカスター家」と主戦派の「ヨーク家」との間で対立が深まっていきました。

百年戦争に敗れた後、イングランドの国王ヘンリー6世は精神疾患になり、ランカスター家とヨーク家の争いに歯止めが利かなくなりました。1455年に両陣営は武力衝突し、それから30年に渡る内乱が勃発。ランカスター家が赤いバラを、ヨーク家が白いバラを徽章にしていたことから後年「バラ戦争」の名前が付きます。紅組vs白組で、日本で言うところの源平合戦をイメージすると分かりやすい(?)かもしれません。

『Blocks!: Richard III』のトレイラー
イングランド王位継承権をかけて争われたバラ戦争は、第一次内戦時にはヨーク家がランカスター家に勝利。国王ヘンリー6世は幽閉され、ヨーク家の「エドワード4世」が新国王になります。このエドワード4世の弟が、本作のタイトルにもなっている「リチャード3世」です。

リチャード3世は兄亡き後、イングランド国王となります。しかしランカスター派のヘンリー・テューダー(ヘンリー7世)がフランスから攻め込んできます。リチャード3世は自ら戦いに出るものの味方の裏切りにあい、最後は敵陣に突撃して戦死。これによってバラ戦争は終結します。ちなみにイングランド史上、戦死した国王はリチャード3世が「2人目」であり「最後」でした。

こののちヘンリーは、ヨーク家の王女エリザベスと結婚して和解、「ヘンリー7世」としてテューダー朝を開きました。本作では、このバラ戦争の戦いと裏切りをボードゲーム上で見事に再現してみせています。何と言ってもバラ戦争の主要人物たちが登場し、史実に合わせて忠誠度などが設定されています。いったいどんなゲームなのか、さっそくプレイしていきましょう。

王位継承権をかけた戦い

「1460年」「1470年」「1483年」の3つからプレイするシナリオを選択。それぞれコマの初期配置に違いがあります。「1470年」と「1483年」は追加シナリオなので、初プレイ時は「1460年」がいいかと。2人プレイで、ランカスターかヨークのいずれかの陣営を選びます。


1460年シナリオではヘンリー6世率いるランカスター陣営(赤)がイングランドを支配しており、ヨーク陣営(白)が海外から攻勢をかけるというシチュエーションです。ご覧の通り、イングランド上はすべて赤のコマです(正式には「ブロック」と言いますが、本稿では分かりやすいように「コマ」とします)。

マップの右下や左上、左下にもコマが置かれていますが、これは海外を意味します。右下に6個の白いコマがある位置はフランスのカレー。左上に3個の白いコマがある位置はアイルランド。左下に赤いコマがあるのがフランス本土です。これらのコマは海外に亡命中という意味です。


コマはこのようになっています。コマの上にある黄色い四角が兵力(=振れるサイコロの数)、下に書かれているA2やB1といった文字は行動速度と戦闘力です。戦闘ではA、B、C、Dの順で兵力の数だけサイコロを振り、サイコロの目が攻撃力以下の場合に攻撃成功になります。例えば「兵力3のA2」なら、「3個のサイコロを振って2以下が出た数だけ攻撃成功」です(戦闘については後述)。

コマは大きく分けて、王や王位継承者、貴族、教会などの「人物コマ」と、傭兵や徴集兵などの「兵士コマ」があります。人物コマも戦えますが、戦闘で殺されるとそのままロストになります。また貴族は寝返ることもあります。王位継承者(王も含める)は各陣営に5人で、全員殺された時点で即ゲーム終了です。


リチャード3世のいるヨーク陣営でスタート。ランカスター陣営のヘンリー6世が国王なので、こちらは王位僭称者側になります。官軍と賊軍の関係ですね。ゲームは7ターンを1戦役として、3戦役行います。ゲーム開始時にカードが7枚配られ、各ターンに1枚ずつ出していきます。

1戦役が終わるごとに政治ターンがあり、イングランド上にある人物コマの数が多い方が国王側になります(僭称者側は国外追放)。領土をいくら占領していようと関係ありません。貴族や教会から支持されることが重要なのです。

ゲームスタート時は、ヨーク陣営の人物コマはイングランド上に1個もないので「0点」ということになります(画像上部の「10-0」という表示が両陣営のスコア)。7ターン内にイングランドに送り込まないといけませんね。前述したように人物コマは殺されるとロストするので、いかに維持するか(そして敵の人物コマを葬るか)を考えなければなりません。3セット目の最後に国王側になった方が勝ちです。


1ターン目。各プレイヤーは好きなカードを1枚出し、左上の数字(AP(行動力))が大きい方がそのターンの先手になります。同じ数だった場合は王位僭称者側が先手なので、ここではヨーク側(筆者)が先手ですね。

イングランドに攻め込め!

行動力4のカードを出したので、4回行動ができます。行動にはコマを動かす「移動」と、ボード上にないコマを置く「配置」があります。王位僭称者であるヨーク側は、とにかく人物コマをイングランドに送り込まないと始まりません。

アイルランドのコマを海上移動させます。海上移動は行動力1で、同じ海域内の港マークのあるエリアにコマ2つを送ることができます。3つコマがあるので、全部送ると行動力2必要です。


行動力は残り2なので、カレーにいる4つのコマもケントに上陸させます。これで行動力をすべて使い果たしたのでターン終了。ちなみにこのボードゲームの何がすごいかというと、人物コマすべてに名称が付いており、史実がしっかり反映されていることです。

例えばヨーク側の王位継承者の5人ですが、1位がヨーク公リチャード(リチャード3世の父親)、2位はマーチ伯エドワード(リチャード3世の兄。のちのエドワード4世)など。グロスター公リチャード(リチャード3世)は5位です。順位の一番高い者がその陣営の代表となります。4位と5位はゲーム開始時には登場せず、3位以上が死ぬと補填されます。

また貴族コマもそれぞれウォリック伯やバッキンガム公などと名称があり、ウォリック伯は王位継承者にしかできない寝返りコマンドを使える(しかも特定の貴族を説得しやすい)など、史実に沿った人間関係が設定されています。

ちなみにウォリック伯は名家の貴族で、のちに「キングメーカー」と称さる人物です。エドワード4世はウォリック伯を味方につけたことにより、第一次内戦でランカスター家に勝って国王になりました。しかしそののち対立が起こってウォリック伯が反乱。ランカスター家に寝返ってエドワード4世を追放し、ヘンリー6世を国王に復位させるなど、キングメーカーどころかブレイカーな気もします。バラ戦争時代のトリックスターとも言えます。


ランカスター側の移動が終わると、次は戦闘処理。敵領地に侵入したコマがある場合、戦闘になります。しかし今回は戦闘がないのでスキップ。最後に補給処理をしてから次のターンに移ります。

本作では各領地に補給限界があります。コマが4つより多ければ(城マークのあるところは5つ)、多い分は補給処理で兵力を1減らさなくてはなりません(どれを減らすかは自分で決められる)。兵力がなくなったコマはボードから取り除かれます。


北側から攻め入った部隊に王位継承者の1位と3位がいるせいか、敵が補給限界を無視して部隊を集めてきました。ロンドンがガラ空きになったので、エドワード率いる南側の部隊で占領。ロンドンを支配していると勝利点1がカウントされます。

ちなみに本作では軍人将棋のように、互いのコマが何かは戦闘時以外は見ることができません。敵の王位継承者がどこにいるのかなど、読み合いが発生します。殺されてもかまわない兵士コマを使って、相手の人物コマを攻撃していくのがいいでしょう。


敵部隊の一部がロンドンを取り返しにきて、戦闘が発生しました。本作は守備側有利で、守備側の速度Aのコマから攻撃が始まります。またコマに描かれた盾マークが領土の盾マークと一致すると戦闘力+1となります(守備側のみ。王位継承者は王冠マークのある領土でも同じ効果が得られる)。

戦闘では、一番兵力のある敵のコマを攻撃しなければなりません。しかし王位継承者は攻撃対象を選択できる「チャージ」が可能。兵力の少ないコマを狙うことができます。戦闘は4ターン行われ、2ターン以降は退却することも可能。この戦闘では敵を倒しきることができました。

敵の貴族を寝返らせろ!

予備の貴族や兵を配置することもできます(行動力1消費)。コマには管轄領土や出身地があり、コマの盾マークと同じマークのある領土にしか配置できません(敵がその領土にいたら置くことができない)。孤立した位置からの出撃は敵の各個撃破対象になってしまうので注意。


7ターンが終わって1戦役が終了。5対12と圧勝したので、次のターンでは国王側になります。敵の王位継承者は国外からのスタート。それ以外の貴族たちは自分の領土(盾マークが同じところ)に配置されます。また兵士コマはボードから取り除かれます。


ウォリック伯が1人孤立しているところへ、敵が2部隊で攻めてきました。ちょっとピンチですが、ウォリック伯は前述したように「寝返りコマンド」を使えます。敵には忠誠度があり、その数だけサイコロを振って「すべて偶数」が出たら寝返り工作成功です。

例えば忠誠度2の場合は、サイコロを2個振ってどちらも偶数を出せば成功。幸い敵に忠誠度1がいたので寝返らせることができました。これでこちらが2部隊と、形勢逆転です。残った敵を撃破して勝利。


2戦役目も勝利し、最終ラウンドの3戦役目へ。3戦役目で国王になった方が勝ちなのでまだ油断はできません。カードには「行動力カード」以外に「疫病」などの特殊カードがあります。疫病カードは指定した敵領地内のコマ全部の兵力を-1にする効果があります。本作では減った兵力を回復する手段はないので強力なカードです。


敵のコマが集結する前に各個撃破していき、3戦役目も取りました。これでヨーク側の勝利。本作は慣れれば比較的短時間で決着を付けられるので、バラ戦争に興味のある方(特にマニアの方)はぜひともプレイしてみてください。

洗練された歴史ウォーゲーム
本作は一見複雑そうですが、「7ターン中に、いかにイングランド本土に人物コマを置くか(そして敵の人物コマを排除するか)」と、ルール自体は簡単です。また1ターンでやることは、基本的にはカードを出して、その行動力分だけコマを動かす(もしくは配置する)こと。

この手の戦略ボードゲームは、複雑にしようと思えばいくらでも複雑にできます。しかしそうなるとカードやコマなどが増え、準備も大変になります(前回紹介した『Axis & Allies 1942 Online』も準備が大変なタイプですね)。

本作はカードとコマ(ブロック)のみですっきりとしており、準備も簡単。にもかかわらず、バラ戦争の歴史的背景まで伝えてしまうという偉業を成し遂げています。ボードゲームデザイナーのセンスが光る一品と言えるでしょう。


1460年以降のシナリオでは、史実に合わせて死亡した人物は登場せず、コマが減っています。1483年では、ヨーク側の王位継承者は国王のリチャード3世のみ。殺された瞬間にゲームが終わります。

ランカスター側もヘンリー・テューダーのみ(フランス亡命中)。史実通りにテューダー朝を開くことができるか、それともヨーク朝がそのままイングランドを支配するか、といった熱い戦いが展開されます。歴史背景を知ると楽しさが倍増するので、マニアの方はもちろん、バラ戦争に興味のなかったゲーマーも本作をきっかけに好きになるかもしれません。

日本語対応はありませんが、ルールが分かればプレイに問題はないかと(ボードゲームの日本語マニュアルは公式サイトからPDFでダウンロードできます)。ただ現在のところAIがあまり強くなく、オンライン対応をしていないため、今後のアップデートに期待したいと思います(もしくは実物を購入して友達と遊ぶとか)。

製品情報
『Blocks!: Richard III』
開発・販売:Avalon Digital
対象OS:Windows、MacOS
通常価格:2,570円
サポート言語:英語、フランス語、スペイン語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/887090/Blocks_Richard_III/

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。人生の理念は「あまり知られていないけど、知っていると人生が面白くなるもの」を発掘・提供すること。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。

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