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勘違いの当たりは真中満監督だけじゃない。氏名をセックスと例えられた選手…。ドラフト珍事を振り返る

野球太郎

 2015年のドラフトの珍事は記憶に新しい。

「三拍子そろった選手。チームを代表する選手になってほしい。慣れ親しんだ神宮球場で一緒に頑張りましょう」

 テレビカメラに向かって、こう語ったのはヤクルト・真中満監督(当時、以下同)。意中の高山俊(明治大)を2分の1の抽選で引き当て、渾身のガッツポーズを決めた。

 しかし、実際には引いたくじには「交渉権確定」の印が押されておらず、NPBのマークを「当たり」と勘違い。コメント直後に阪神が当たりくじを引いていたことが発覚。今度は阪神・金本知憲監督が大はしゃぎした。

 だが、この勘違いは初めての出来事ではない。2005年のドラフトでも同様の事件が起きている。辻内崇伸(大阪桐蔭高)の抽選を巡って、オリックス・中村勝広GM(当時)が外れを当たりと勘違い。陽仲壽(現・岱鋼、福岡第一高)の抽選を巡って、ソフトバンク・王貞治監督も同じミスを犯している。

 この注目度の違いはネット文化の発展を鮮やかに映し出している。

 ちなみに2015年はドラフトのテーブル上に「当たり」「外れ」を明示した注意書きが置かれていた。真中監督がその後、ネタにして笑いを取っていることが救いだが、チームが日本シリーズに臨む直前に「変な空気」にしてしまった……。なお、2016年以降、外れは白紙になっている。

◎パンチョ伊東の一言で成績が忘れられた益山性旭

 かつて、ドラフト会議の名司会者として鳴らしたのはパンチョ伊東氏(伊東一雄)。MLBジャーナリスト、解説者として知られるが、1976年から1991年にかけてパ・リーグの広報部長を務めていた。

 特に名物だったのは、モニター導入前の漢字の例え方。書き込みの係に選手名を伝えるためのテクニックがすごかった。

 1987年に芝草宇宙(帝京高)が日本ハムから指名を受けた際は「ひろしは宇宙、コスモ」と指示を出している。

 そんななか、不利益(?)を被ったのは、大阪福島商高・益山性旭。1972年に大洋(現・DeNA)からドラフト4位指名された際、伊東氏が「性旭のせいはセックスの性」と例えてしまい会場は大爆笑。何とも失礼な話であるが、ドラフト珍事件として歴史に刻まれることになった。

 伊東氏はアメリカにもたびたび足を運んでおり、英語も堪能。「性別」のつもりで言ってしまったと後悔していたそうだ。

 今ではパンチョ伊東氏のエピソードとセットになってしまった益山性旭だが、大洋の指名を断り、帝京大に進学。首都大学リーグで通算78試合に登板し、450奪三振を挙げた。

 1976年には阪神にドラフト1位で指名され入団。今度は野球の実力で知られていたため、名前はすんなりと書かれたそうだ。プロ通算成績は167試合11勝27敗1セーブ、防御率4.63。1軍クラスの左腕であったことを今一度覚えておきたい。

◎史上初の野球とアメフト両方で「1巡目指名」

 MLBドラフトにも目を向けてみたい。昨年から今年にかけて、すごい男が出現した。彼の名はカイラー・マレー(オクラホマ大)。俊足巧打の外野手として知られ、昨夏アスレチックスから全体1巡目で指名された。

 一時は仮契約に合意したマレーだったが、一つの問題があった。マレーはアメリカンフットボールでも結果を残していたのだ。2018年はアスレチックスに許可をもらい、即入団せずにアメフトを継続。全米大学アメフト界のMVPであるハイズマン・トロフィーを受賞した。

 アメリカにはボー・ジャクソン(ロイヤルズほか)やディオン・サンダース(ブレーブスほか)のようにMLB、NFLの兼業「二刀流」で結果を残したレジェンドもいる。

 しかし、もう一つの問題はマレーがアメフトではクォーターバックだったことだ。これまでのレジェンドたちはバックス&レシーバーズのポジションだったが、アメフトの花形であり、戦術の要であるクォーターバックは兼業が難しい。

 結局、マレーは今年2月にアスレチックス入団を破棄し、アメフト専念を発表。4月のNFLドラフトでアリゾナ・カージナルスから1巡目指名(全体1位)を受けた。MLBとNFL双方のドラフトで1巡目指名を受けた選手は史上初だった。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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