松尾スズキ「魅力というものを出し終わったときが、夫婦の終わりの始まりなんだろうと思います」

松尾スズキ「魅力というものを出し終わったときが、夫婦の終わりの始まりなんだろうと思います」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、初めて監督・脚本・主演に挑んだ映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』がまもなく公開される松尾スズキさん。紹介してくれ本『つかこうへい正伝 1968-1982』と、映画製作の裏側について聞いた。

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、初めて監督・脚本・主演に挑んだ映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』がまもなく公開される松尾スズキさん。紹介してくれ本『つかこうへい正伝 1968-1982』と、映画製作の裏側について聞いた。

野村周平「どんな出会いでも、人はそれによって変われると思います」

松尾スズキまつお・すずき●1962年、福岡県生まれ。88年、主宰として大人計画を旗揚げ。97年に「ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~」で岸田國士戯曲賞受賞。2004年に『恋の門』で映画監督デビューし、以降の監督・脚本作品は『クワイエットルームにようこそ』『ジヌよさらば~かむろば村へ~』など。
ヘアメイク:遠山美和子(THYMON Inc.) スタイリング:安野ともこ(コラソン) スーツ17万4000(デ ペトリロ)、シャツ2万5000円(エリッコ フォルミコラ)、ネクタイ1万4000円(フマガッリ)、チーフ6800円(エレディ キャリーニ)(すべてビームス 六本木ヒルズTEL03-5775-1623)

 松尾さんが東京に出てきたときには、すでに『劇団つかこうへい事務所』は解散しており、当時のつかさんのお芝居を見ることができなかった。だから評伝『つかこうへい正伝 1968-1982』は待ちに待った1冊だった。

「つかさんってあんなに作品残してるのに、実際どういう人だったのかって他の人が書いているものってほとんどなくて。この本を読んで、やっぱり『蒲田行進曲』の銀ちゃんだったんだなって思いました。銀ちゃんに自分を投影している。でも、その自分自身の姿も意図的に作り上げたものだったのかな、という感じもしますよね。作った自分を周囲に見せていた。そういう意味では非常にトリックスター的な人だったのかなと思います」

 70年代にブームを作ったつかさん。そして現在の演劇界を牽引する松尾さん。この時代の演劇・芸能界に松尾さんは何を思うのか。

「もう少し世間、というかマスコミが、演劇に顔を向けてくれたらと思いますね。昔はどんな雑誌にも演劇のコーナーがあったじゃないですか。一般の人が演劇に興味が持てる環境だった。でも今は、演劇の中からスターが生まれにくい状況になっている。それは打開できないかなと思います。なんか、俳優さんの武者修行の場になってるみたいな感じもあって。僕はそれがすごく悔しいと思います。きちんとしたお芝居を作りながら、演劇でもまあまあ儲かるんだぜ、と言ってやりたいですよね。演劇も夢があることもあるんだぜと」

 松尾さんの監督・脚本・主演映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』は、10月25日より公開される。主人公の脚本家・海馬は、妻が若いダンサーとの恋をSNSに綴っているのを知り、108人の女を抱くという復讐を思いつく。フリと落ちが緻密に計算され、作り込まれた喜劇作品だ。松尾さんの好きなシーンは?

「病院でお父さんが死ぬシーンがあるんですが、そこですね。LiLiCoさん、栗原類君、秋山菜津子さん、坂井真紀さん、出演者全員がパンチラインを持っていて、順番に笑わせていく、もはや死んでいく役の福本清三さんすら面白い。あと、“女の海”も印象的ですよね。50人以上もの男女が入り乱れる。事前に部屋を借りて、どれくらいローションがぬるぬるするか実験したんですよ。そうしたら、ぬるぬるし合ってるうちに腰痛が治ってね(笑)。絶対体悪くすると思ったんだけど、なんか調子よくなった。確実に体幹は鍛えられましたね(笑)」

 喜劇であると同時に、少し悲しい男女の話でもある。

「この映画は実はだいたい5年前くらいから企画が始まっていて、当時結婚することが決まっていていたんですね。それで男女というか、夫婦に対していろいろ思うところがあった。男と女は別の生き物だと言いますけど、夫婦は圧倒的に他人ですよね。その他人同士が一緒の生活するのって、フィクショナルじゃないですか、虚構を二人で作っていかなきゃいけない。その虚構を持続させるのが、結婚の目的なんです。お互いに緊張感を失った瞬間に、その砂上の楼閣は崩れていくわけです。それは前の結婚の失敗でも思ったことなんですけど(笑)。だから今、緊張感を持って生活してますよ(笑)。魅力というものを出し終わったときが、夫婦の終わりの始まりなんだろうと思います。同じ部屋にいるからって、魅力を出し惜しみしたらえらい目にあいますよ(笑)」

 松尾さん自身が完成した映画を見ての感想は?

「昨日、取材のために家で改めて観たんです。そしたら普通に自分でもゲラゲラ笑っちゃって。カミさんも横で観ててちょっとヒヤヒヤしたんですけど、笑ってました(笑)」

(取材・文:松井美緒 写真:干川 修)

 

『つかこうへい正伝 1968-1982』

長谷川康夫 新潮社 3000円(税別)

著者は学生時代につかと出会い、1982年の『劇団つかこうへい事務所』解散までずっと、その演劇や執筆活動を支えた。つかの大学時代に始まり、『熱海殺人事件』の誕生、風間杜夫の登場と『蒲田行進曲』……。平田満や風間をはじめとした関係者に徹底取材し、つかの人間像を描き出した傑作評伝。

※松尾スズキさんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ11月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』

監督・脚本・主演:松尾スズキ 出演:中山美穂、大東駿介、土居志央梨、栗原 類、LiLiCo、岩井秀人、坂井真紀、秋山菜津子 配給:ファントム・フィルム 10月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
●脚本家・海馬五郎は、妻の綾子がSNSに若いダンサーへの恋心を綴っているのを知ってしまう。その投稿についた「いいね!」はなんと108。そして海馬は、「いいね!」の数だけ女を抱いて復讐するという計画を思いつく。
(C)2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会

更新日:2019年10月9日
提供元:ダ・ヴィンチNEWS

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