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28億の音楽ホール建設も…ココイチ帝国を築いた男の慈善活動

SmartFLASH

店舗の近所を清掃中の宗次氏

 

 いまや国内に1264、海外に180店舗と他の追随を許さない、外食カレーの王国「カレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)」を、一代で築いた男・宗次徳二氏(70)。

 

 ココイチのカレーは、宗次氏の妻・直美氏の実家の味をもとにしたもの。最初の店「バッカス」でカレーを出すにあたって、さまざまな家庭用固形ルーを試したが、試食した従業員たちが「いちばん美味しい」と一致したのが、のちにココイチが傘下に加わることになる、ハウス製品だった。

 

 

 そこに直美氏がアレンジを加えていき、完成したものが現在のココイチカレーだ。「家庭的な、なんでもないカレー」(宗次氏)だが、トッピングと合わせやすく、毎日食べられる。それが成功の原点となった。

 

 独自開発したルーやトッピングを武器に、フランチャイズ展開をすすめるココイチでは、独立オーナーの経営継続率がなんと90%。数ある飲食チェーンのなかでも、最高レベルの安定度だ。

 

 その秘密が「ブルーシステム」。ほかのFCと異なるのは、まず正社員として壱番屋に入社するのが必須であること。安定収入を得ながら、経営ノウハウを身につける。

 

 開業時には債務保証があり、食材を同社から仕入れるルールはあるが、ロイヤリティはない。早ければ2年、平均しても5年で社員たちは独立し、年収1000万円もザラだという。

 

 そうして社員たちが働きやすい環境を整えた宗次氏には、大切にしているものがある。それが、店舗に設置されていて、送れば抽選で3000円分の食事券が当たる、アンケートハガキだ。
宗次氏は現役時、毎朝3時間かけてそのすべてに目を通し、店舗で起きていることをつぶさに把握したという。

 

 現在、本社に届くハガキの数は、月に3万枚を超える。料金受取人払になっており、毎月数百万円の経費がかかるが、そんなやり取りの集積が、年商985億円の巨大企業を築いたのだ。

 

 8月のとある朝6時。名古屋市・栄の広小路通を、宗次氏は毎朝欠かさず掃除し、自ら植えた花を手入れする。ここは、かつて養母が屋台を引いていた通りだ。

 

 2007年、宗次氏は私財28億円を投じ、この場所にクラシック専門の「宗次ホール」を開館した。昼や夜の公演では、開演30分前からホール前で観客を出迎え、終了後には見送る宗次氏の姿がある。

 

 経営者時代には「飲み屋にも行ったことがない」ストイックな生活を続けてきた宗次氏の日々は、引退した今でも大きな変化はないようだ。

 

「いえ、ココイチのカレーを食べる回数はめっきり減りました(笑)。月に5、6回ですね。今はホール上階で暮らしていて、自分でカレーを作ったりしています。ココイチより美味しいかもしれない(笑)」

 

 現在の宗次氏の活動は、慈善事業が中心だ。イタリアの名弦楽器「ストラディバリウス」などを買い取り、音楽家に無償で貸与する一方で、愛知県内の小中高校の吹奏楽部に、やはり億単位の楽器寄贈を続けている。

 

 自らを “変人” と称する宗次氏。思いつきを信じてきた年月が、こんなに大きな花を咲かせた。

 

(週刊FLASH 2019年9月3日号)

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