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人はいつ「ひきこもり」になるのか、人生に4つのタイミング

SmartFLASH

 

 ひきこもりの定義とは、厚生労働省では「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けてひきこもっている状態」としていて、その世帯数は約32万にのぼると推計しています。

 

 また、内閣府でもひきこもり調査を2010年と2015年にしていて、69万6000人(2010年)、54万1000人(2015年)と推計しています。この数字ではひきこもりが減っているように見えますが、実は、この調査の対象年齢が15~39歳で、40歳以上がカウントされていないからなのです。

 

 

 今までひきこもりは主に、不登校などをきっかけに起こる「若い世代の問題」と捉えられていました。しかし、実際にはひきこもりが長期化し、40代や50代のひきこもりが増加しているのです。

 

 こうした状況を受けて、内閣府は2018年度に初めて40~64歳を対象にしたひきこもりの実態調査を行いました。この調査により、40~64歳のひきこもり中高年者は推計61万3000人いて、15~39歳を合わせると100万人以上にのぼることがわかってきました。

 

 ひきこもりの期間が30年以上という人も6.4%おり、ひきこもりの長期化、高齢化が新たな問題になっています。

 

 私の指導の経験上、ひきこもりになりやすいタイミングは人生で4度あると思っています。1度目は中1、2度目は高1、3度目は浪人と大学中退、4度目は就職活動での挫折です。

 

 1度目は、いわゆる中1ギャップです。中1になると急激に不登校者が増えます。なぜ、中1に不登校からひきこもりになることが多いのでしょうか。

 

 まずは、環境の変化に適応できないということがあげられます。不登校の要因を見ると、入学・転編入学・進級時の不適応や、クラブ活動・部活動等への不適応があがっています。

 

 小学生と違い、中学生になると、部活動や委員会などで縦の関係が重視されるようになります。幼馴染みだったお兄ちゃんに、いきなり敬語であいさつしなければならなくなったりするのです。部活動では、先輩からのしごきがあったりします。こうした縦社会の厳しさに適応できないのです。

 

 次にあげられるのは、学業の不振です。不登校の原因でも21.8%と多くを占めています。なかでも英語でつまずいてしまう生徒がとても多いです。

 

 私は30年以上にわたってひきこもり不登校の子どもたちを指導していますが、当会に相談に来るお子さんの多くが、中学受験を経験しています。

 

 中学受験では国語・算数・社会・理科の4教科を受験科目としている学校が多いので、英語は勉強していません。ですから、その4教科ではものすごく力があって、算数オリンピックに出ていたり、日本史の年号は全部覚えていたりしても、英語は苦手な子も多いです。しかも、入学後は勉強するモチベーションもありません。そこで、英語だけ落ちこぼれていくのです。

 

 中1ギャップの次に来るのが、高1クライシスです。
 原因として一番大きいのは、中学と高校のシステムの違いです。中学は義務教育なので、不登校になっても在籍し続けることができ、卒業もできます。

 

 しかし高校は義務教育ではないので、たいていの学校では1年に30日以上休むと単位取得が難しくなります。すると進級できないので、留年、または退学するしかありません。そうなると、例えばゴールデンウィーク明けから徐々に学校に行かなくなった場合、9月ごろにはもう留年が決まってしまいます。

 

 なかには留年制度がなく、即辞めなくてはならない高校もあります。そのため、高校中退者は毎年約5万人(2017年は4万6802人)いますが、中退時期は高1が一番多いのです(単位制高校を除く)。

 

 以前の東京都では、高校は義務教育ではないので不登校は存在しない、という見解でしたが、近年は高校不登校者の多さとそのリスクの大きさから、調査をするようになりました。文部科学省でも高校不登校者数を2004年度から調査しています。私の指導経験上、高校不登校の生徒のほとんどが中退しているのが現状に見えます。

 

 中1ギャップ、高1クライシスに続いて、高校卒業直後がまた大きな危機です。浪人中にそのまま予備校に行かなくなり、ひきこもりになるケースも多くあります。また、大学に入ったものの授業に出ない状態が続き、中退してしまう人も多いのです。

 

 特に東京など都市部の進学校に進んだ場合、大学に進学するのが当たり前という環境に置かれます。学校は進路指導でなく出口指導になっていて、模擬試験の偏差値を見て「この大学を受験しろ」と勧める教師も少なくありません。

 

 大学・短大進学率(過年度卒を含む)は57.9%(文部科学省「平成30年度学校基本調査」)ですが、東京の進学校の場合はほぼ100%となり、本当に希望する進路が見つからないまま、とりあえず合格したところに進学すると、大学に意味を見いだせず、中退になることも多いのです。

 

 中学や高校と同じく、特にゴールデンウィーク明けに行かなくなることが多いようです。

 

 実際、大学の中退率は2.65%、休学率は2.3%となっていて(文部科学省「学生の中途退学や休学等の状況について」)、20人に1人が何らかの理由で、中退や休学をしています。

 

 その次のタイミングは就活での失敗です。就職できないまま卒業してひきこもりになる場合と、就職後に会社を辞めてそのままひきこもりになる場合があります。

 

 内閣府の調査でも、就職氷河期世代にあたる40~44歳のひきこもりの3人に1人が、20~24歳の時にひきこもり状態となっていて、就職活動がうまくいかなかったことが原因とみられています。

 

 ここ10年くらいでひきこもりは特に増えてきたと感じています。10年前というと、ADSLでインターネットが全国的に普及した時代です。時を経るごとにパソコンやスマートフォンも進化し、ネット環境へ容易にアクセスできる時代となりました。

 

 すると、部屋の中で一人ぼっちでいても疎外感を抱きにくいのです。当会へ相談に来るケースでも、ひきこもっているときはずっとゲームをしている子どもは多いです(特に男子)。
 

 例えば、あるタレントさんは昔ひきこもっていた時期があったけれども、今のようにスマホなどがなかったので、やることがなくなって外に出たとラジオで話していました。もし、今の時代に中学生だったら、ずっとひきこもりを続けてしまっていたかもしれないと言うのです。

 

 ですから、スマホやネット環境が充実した現代は、ひきこもりになりやすい側面もあると思っています。

 

 もちろん、スマホはうまく使えば便利な道具ですし、現代社会で生きていくにはネットは不可欠でもあります。ただ、その付き合い方には大きな注意が必要なのです。

 

 

 以上、杉浦孝宣氏の新刊『不登校・ひきこもりの9割は治せる 1万人を立ち直らせてきた3つのステップ』(光文社新書)を元に再構成しました。のべ1万人以上の生徒を立ち直らせてきた著者によるひきこもり問題の解決法とは?

 

●『不登校・ひきこもりの9割は治せる』詳細はこちら

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