プロローグ ~義母との出会い、闘いのはじまり~/『義母ダンジョンにハマっています。』①

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5万人以上がザワついたツイートが書籍化! 2児を育てるワーキングマザー・秋山さんと、不思議な常識の中で生きる義母とのとんでもないエピソードが満載。「義母ダンジョン」の中で奮闘する秋山さんの戦いを10回連載でお届けします!

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【最初から読む】試し読み連載:『義母ダンジョンにハマっています。』

『義母ダンジョンにハマっています。』(秋山/KADOKAWA)

結婚後、義母ダンジョンにハマってしまった嫁の闘いの記録です。

 私とお義母さんとの出会いは、私が20歳の頃、学食で昼食を食べていた時に当時の彼氏(現夫)から「来週の日曜日あいてる? 両親が秋ちゃんに会いたいって」と切り出されたところから始まる。

 その話が出た時、私は率直に言って嬉しかった。優しく思いやりのある彼、そのご両親からの申し出、断る理由がなかった。「そういう時ってやっぱりヒールのある靴の方がいいよね」と服装に迷う私に彼は「ちょっと大変かもしれないからその時は言ってね」と言ってきた。この言葉を私は「普段ヒール靴を履かない私を気遣ってくれるコメント」だと、その時は思っていた。

 当日時間より少し前に行くと義父母はすでに来ていた。今でもあの時の光景を私はよく覚えている。彼らは「上品」だった。いい暮らしを思わせる服装と髪型で、人生を楽しんでいる者に見られる余裕を感じた。2人とも私に気付くと立ち上がり笑顔で手を振ってくれた。私も遅れて会釈をし、緊張しながら手土産を渡した。夫と2人で選んだ、おしゃれな店のおしゃれなパウンドケーキ。お義母さんが好きだというドライフルーツが入っている。「まあまあそんなに緊張なさらないで、おかけになって」。お義母さんはゆったり滑らかな口調で私に着席するように促した。(この優しそうな雰囲気、彼に似てる。いい人なんだろうな)と私は思った。そう思ったのは後にも先にもこの時だけである。

 席につくとメニュー表を見るより前にお義母さんは鞄からノートとボールペンを取り出した。

「それであなた…秋山ちゃんね、うちのアキちゃん(夫)と仲良くしていただいているみたいなんだけど、どちらから声をかけてお付き合いを?」

 いきなり質問が飛んできた。表情だけは先程と変わらず柔和である。

「僕だよ」と横から彼が言った。うんうんと笑顔で頷きながら何かメモを取るお義母さん。

「秋山ちゃんはお生まれはどちらなの?」

「大学進学でこちらに来ました。実家は飛行機の距離で少し田舎なんですけど」

「飛行機ぃ~!??」

 ここで義母はわざとらしい大声を出し、手を止めてまじまじと私の顔を見た。随分遠いのね、と前置きした上で

「アキちゃんが選んだお相手だからてっきり都会の方かと思ったわ。じゃあ長期休みの時にしか実家へは帰れないの?」と言うのでまあそうですね、と返すと「飛行機で何時間もかけて帰るんでしょ? 私は実家が○○(某高級住宅街)なの。○○、田舎に住んでても聞いたことはあるでしょ? 里帰りって言っても電車に乗って160円で着いちゃうの。あなたみたいに何時間もかけて里帰りってあこがれるわー、ニュースとかで見てるから」

 ここで私は思う。この人、少し失礼なのではないか。目の前にいるのは本当に彼の母なのか。戸惑いの表情で彼の方を見る。目が合った。無言で頷く彼。やはり母親はアレで間違いないらしい。

「質問はあとにして先に注文しようよ」

 彼からの提案で尋問は一時中断した。しばらくしてケーキと紅茶が運ばれてくると今まで沈黙を守っていたお義父さんが口を開いた。

「秋山ちゃんさ、僕たち、本家なんだよ」

(ホンケ?)

「本家と分家の本家。今度家系図も見てもらおうと思ってるけど、こいつ(夫)○代目だから。もし今後結婚することになれば墓を守らないといけないし、跡継ぎの問題なんかも出てくるから。そういう覚悟がある?」

 あるわけない。そもそも結婚のあいさつに来たわけでもない。ついさっき初めて会ったばかりで、将来嫁になるかも分からない20歳の女にそんな覚悟を求めてこないでほしい。この目の前にいる小太りの男は本当に私が信頼し愛情を向けた彼を育てた人間なのか。困惑の表情で彼の方を見る。目が合った。無言で頷く彼。やはりあいつも父親で間違いないらしい。

「そういう話はもっと先でいいから。今日はお互い顔を知ってもらう場なんだし、もっと楽しい話をしようよ」と彼が話題を変えてくれた。

「アキさん歌が上手いですよね。カラオケに行くとびっくりしちゃいます」

 私が彼のいいところを切り出すと義母の目の奥が輝いた。

「そうでしょ! 小さい頃は合唱団に所属してその中でも一番上手かったの! 聖歌とかも一度聴いただけで本当に上手に歌えてね~夜寝る前に歌ってもらうと私の方が先に寝ちゃったりして(笑)。小さい頃からオーケストラを聴かせていたからかしら。秋山ちゃんは歌はどうなの?」

「私は音楽の成績そんなに良くなかったです(笑)」

「じゃあ生まれてくる子はアキちゃんに似ないと困るわね(笑)」

 あ?

「母さん、でも秋ちゃんは料理が上手だよ。僕も家のことを少しできるようにしないと」

「アキちゃんのことだからすぐ上達するわよ。幼稚園の頃貝殻で作ったフォトフレーム、あれもすごく上手だったじゃない」

 いつの時代の記憶掘り起こしてんだよ。

 その後も義父母は自分たちとアキちゃんがいかに素晴らしい人間かを語り続け、私は運ばれてきたケーキに手をつけることもできず彼らの話を聞き続けた。

「あら、ケーキ召し上がってちょうだいね。あとマスカラ持ってる?」

 終盤になってようやくケーキに手をつけた私。化粧直しでもするのかと思って自分の化粧ポーチに入っていたマスカラを貸した。するとあろうことか義母はマスカラを持ったその手を頭の上にかかげ、自分の髪に塗り始めたのである。

「これ(マスカラ)白髪隠しに使えるのよ、知ってた? 便利でしょ~」

 笑顔で白髪にマスカラを塗るお義母さん。それをただ呆然と見つめる私。私の心は折れた。

「それ、差し上げます……」

 これが私と義母の出会い。出会った時から彼らは純度100%のクソだった。ここから私と義母との長い闘いが始まる。

更新日:2019年7月12日
提供元:ダ・ヴィンチNEWS

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