PSGが送った大失態の1年。CL早期敗退という屈辱、真のビッグクラブになれないその理由【18/19シーズン総括(3)】

PSGが送った大失態の1年。CL早期敗退という屈辱、真のビッグクラブになれないその理由【18/19シーズン総括(3)】
出だしは順調。しかし… 2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへと移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、…

出だしは順調。しかし…

 2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへと移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はパリ・サンジェルマンを振り返る。(文:小川由紀子【フランス】)

——————————

 2018/19シーズン、第33節が終了した時点で、パリ・サンジェルマン(PSG)はリーグ優勝を決めた。しかしその6日後のフランスカップ決勝戦では、レンヌにPK戦の末に敗れ、ダブル優勝を逃した。すでにリーグカップは、準々決勝でリーグ最下位のギャンガンに敗れていたから、PSGはこのシーズン、一冠のみに終わった(シーズン開幕前のスーパーカップは除く)。

 12月2日の第15節、ボルドー戦に敗れるまで、欧州の主要リーグでは初の開幕14連勝を達成。出だしは好調だった。新監督トーマス・トゥヘルを迎え、新体制下での初年度ということを考えると、これは素晴らしい成果だ。

 コントロール・フリークと言われたトゥヘルだが、パリでは、まるで別人に生まれ変わったかのような柔軟性を見せた。遅刻は厳しく罰するといった規律は重んじながらも、心身のリフレッシュを優先して特別オフ日を与えたり、トレーニングや試合に支障がない以上は、プライベートでの行動にもとくに細かく言及していなかったと聞く。

 この“緩さ”が結果的に、一冠のみというPSGにとっての大失態を招いたと、シーズン終了後、トゥヘルは非難された。若手選手の中には、常勝軍団であることにあぐらを欠き、試合によっては真剣さを欠いていた、というようなことも伝えられている。

 その真偽はともかく、2018/19シーズンのPSGにとって大きな打撃を与えたのは、3月6日、チャンピオンズリーグ(CL)・ラウンド16第2戦で、マンチェスター・ユナイテッドに敗れたことだ。

CLベスト16敗退という屈辱

 ネイマールとエディンソン・カバーニを負傷で欠いた状態で、敵陣での第1戦を0-2で勝利したPSGが次ラウンドに勝ち抜ける勝率は、100%、と算出された。おまけに第2戦では、今度はユナイテッド側に負傷者が続出。やむなくアカデミーを卒業したばかりのティーンエイジャーを引き連れて、彼らはパリにやってきた。

 メディアに15分だけ公開されたパルク・デ・プランスでのユナイテッドの前日練習の様子は、マインドコントロール効果があったのではないかとさえ思える光景だった。

 先輩たちが円陣になってボールを回す側で、所在なく立ち尽くす10代の選手たち。彼らはCLはおろか国内のリーグ戦ですらデビューしているかしていないド新人だ。その“先輩たち”でさえ、負傷明けのマルコス・ロホや、入団1年目のフレッジ、ディオゴ・ダロ、経験の浅いアンドレアス・ペレイラ等、やや頼りなげなメンバーだった。

 それは、「アウェイゴール2点のアドバンテージがある俺たちをホームで破るなんて冗談じゃない」と高をくくった選手がいても不思議ではない風景だった。

 試合は、ロメル・ルカクが早々に得点したが、ユナイテッドはパスミスも多く、「あーあー」という場面の続出だった。総計は3-2とPSGがリードでアディショナルタイムへ。ところがそこでプレスネル・キンペンベのハンドでユナイテッドにPKが与えられると、それをマーカス・ラッシュフォードが決め、劇的なエンディングで、ミッション・インポッシブルを実現してしまった。

 勝率100%を、1.5軍チームにひっくり返された屈辱。今年こそビッグチャンスだ!と言われながらまたもラウンド16でCL敗退となってしまった恥辱…。

 リーグ優勝はそれまでの貯金でほぼ安泰だったが、それもほぼ確実となった4月には、全コンペティションあわせた7戦で、2勝1分4敗と大きく負け越し。最終節のスタッド・ランス戦にも敗れて黒星でシーズンを終えるという尻つぼみなシーズンとなってしまったのだった。

PSGに足りないものとは

 他のクラブとは、予算、戦力ともに桁違いのPSGは、リーグ優勝は当たり前、それプラスなにを勝てるか、という基準で見られているから、その部分での厳しさはある。

 2年連続で、シーズン後半の、CL決勝トーナメントに突入する大事な時期にネイマールが負傷するという誤算もあった。たらればを言っても始まらないが、ユナイテッドとの第2戦にネイマールがいたらディフェンス面の負担は相当違っていただろうから、結果が変わっていた可能性は十分にある。

 ただ、今季のPSGの顛末を見て感じたのは、欧州のビッグクラブに真に仲間入りするには、まだ彼らには、歴史であるとか、それまで築いてきた蓄積が足りない、ということだ。

 勝ち抜けは不可能と言われたPSG戦の前、ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督や選手たちは、ことあるごとに「我々はマンチェスター・ユナイテッドなのだから」と言っていた。

 ファン以外の人には「ケッ」と言いたくなるセリフであるし、彼らも次ラウンドで敗退しているので、毎回効くわけではもちろんないが、過去にCL優勝はもちろん、前人未到のトレブルなど数々の栄光を実現している彼らには、ここぞというときに信じられる拠り所がある。しかしPSGにはまだ、それがない。

 いくら世界のトップスターを集めても、その空洞はそう簡単には埋められない。もちろん彼らもそれをわかっていて、その最初の一歩を踏み出すためにもがいているのだが、カタールの親方たちや、ナセール・アル・ケライフィ会長らが当初思っていたよりもずっと、その最初の一歩は難しかった。

 6月末に、PSGはナイキとのスポンサー契約が2032年まで延長されたことを発表した。価格、期間ともに大幅アップし、レアル・マドリー、バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドに次ぐ高額のユニフォームサプライヤー契約になるという。

 ナイキはキリアン・ムバッペを少年時代からバックアップしているから、ムバッペを今後もPSGの顔としてつなぎ止めておきたい意図も見え隠れするが、そういったこと以上に彼らに足りないのは、スピリッツ、といった、目に見えないものの蓄積であるような。

 周りが立派でも中が空洞のままでは、あるところまでは行けても、その先には行けない、という、同じことを繰り返すだけのような気がする。

(文:小川由紀子【フランス】)

更新日:2019年7月12日
提供元:フットボールチャンネル

Series シリーズ

Pick up ピックアップ

Ranking/人気の記事(スポーツ)

人気キーワード

Category カテゴリー

ページトップへ 
「エンタメウィーク」は一週間をもっと楽しくするエンタメサイト 誰でも今流行りのエンタメ情報を楽しめる記事をご提供します
dmenu
HOME