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最も使われた曲は?平成の音楽使用料ランキング

日刊ホントの話


 2019年4月17日、「平成」期に作詞家・作曲家・音楽出版社などへ支払われた著作物使用料を、日本音楽著作権協会(JASRAC)が集計した、「平成元年から31年までの著作物使用料分配額TOP100」および「利用分野別分配額構成比」等の参考資料(以下「ランキング」)が発表されました。ランキングには、CDや配信による売上だけでなく、コンサート・カラオケ・放送・配信など、あらゆる場面での利用が反映されています。つまり“最も平成に聴かれた音楽ランキング”ともいえます。

 堂々の第1位はSMAP「世界に一つだけの花」(作詞:槇原敬之/作曲:槇原敬之)、第2位は五木ひろし・木の実ナナ「居酒屋」(作詞:阿久悠/作曲:大野克夫)、第3位はアニメ「エヴァンゲリオンBGM」(作曲:鷺巣詩郎)という結果でした。ベスト10までの結果は、以下のようになっています。

●「平成」期の音楽使用料ベスト10

「平成元年から31年までの国内作品分配額上位10作品」(出典:JASRAC)
 作品名(作詞者名、作曲者名、音楽出版社名、アーティスト名)※「-」はブランク
1.世界に一つだけの花(槇原敬之、槇原敬之、㈱ジャニーズ出版、SMAP)
2.居酒屋(阿久悠、大野克夫、㈱テレビ朝日ミュージック、五木ひろし・木の実ナナ)
3.エヴァンゲリオンBGM(-、鷺巣詩郎、㈱セブンシーズミュージック、-)
4.川の流れのように(秋元康、見岳章、スカイラーク音楽出版㈱、美空ひばり)
5.残酷な天使のテーゼ(及川眠子、佐藤英敏、㈱テレビ東京ミュージック、高橋洋子)
6.ふたりの大阪(吉岡治、市川昭介、㈱プロデュースハウス都、都はるみ・宮崎雅)
7.I LOVE YOU(尾崎豊、尾崎豊、㈱グランドマザー・ミュージックビジョン、尾崎豊)
8.酒よ(吉幾三、吉幾三、㈲幾三音楽出版、吉幾三)
9.乾杯(長渕剛、長渕剛、㈱ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、長渕剛)
10.涙そうそう(森山良子、BEGIN、㈱アミューズ、森山良子/BEGIN/夏川りみ)

 ベスト3それぞれのヒットの理由については、1)「世界に一つだけの花」はカラオケのほかにもCDや社交場など多様な形で広く親しまれたこと、2)「居酒屋」はデュエットソングでありカラオケでの利用が群を抜いて多いかったこと、3)「エヴァンゲリオンBGM」は本来のアニメでの使用にとどまらずDVD・ゲーム・パチンコ台などで多角的な分野で使用されたこと、などが挙げられています。

 それぞれのヒットの理由をみてみると、ヒットという現象は同じながらも内容は違っていることがよくわかります。ランキングでは参考資料として、トップ10ならびに10年ごとといった「利用分野別分配額構成比」も発表されました。このうち10年ごとの「各年度の利用分野別分配額構成比」を考察すると、音楽産業の移り変わりもよくみえてきます。

●「平成」期の10年ごとの分配額構成比

「平成元年度、10年度、20年度、30年度、各年度の利用分野別分配額構成比」(出典:JASRAC)
 種目(平成元年・1989年度、平成10年・1998年度、平成20年・2008年度、平成30年・2018年度)
演奏会等(2.8%、2.4%、3.4%、8.0%)
社交場(4.5%、2.6%、1.8%、2.0%)
カラオケ(4.1%、13.7%、12.1%、11.2%)
放送包括(13.2%、12.1%、24.6%、27.6%)
CM等(0.0%、1.8%、5.4%、4.2%)
ビデオ等(14.4%、7.7%、14.7%、12.9%)
広告目的複製(0.0%、0.8%、1.3%、1.2%)
外国入金(0.4%、0.6%、0.6%、0.5%)
CD等(45.9%、43.1%、18.3%、9.4%)
出版(3.2%、2.5%、1.3%、0.8%)
レンタル(10.5%、5.1%、3.2%、1.7%)
通信カラオケ(0.0%、5.8%、5.3%、6.2%)
配信(0.0%、0.0%、7.6%、14.3%)
その他(0.9%、1.8%、0.4%、0.1%)
【分配額_合計(51,807,888,435円、97,429,268,959円、115,518,377,835円、112,647,692,325円)】

 メディア業界における音楽産業は、CDの売り上げ枚数が最大になった平成10年頃を頂点に、平成初期(元年代)に全盛期を迎えました。また、テレビドラマの主題歌のヒットなどによるCDの利用が大きな比率を占める一方で、昭和に生まれた楽曲が平成に入ってもカラオケを中心に全国で歌い継がれていました。

 つづく平成中期(10年代)には、1位となった「世界に一つだけの花」を始めとしたヒット曲のほか、アニメなどの映像作品への利用が目立つようになってきます。そして、平成13(2001)年に配信利用の分配が開始されたり、平成初期に続きカラオケの人気曲も上位に入ったりするなど、“多様化の時代”を迎えます。

 さらに平成後期(20年代)には、ドラマやアニメのDVDやブルーレイを中心とした映像での利用をはじめ、CMやネット配信などにおける利用の比率が大きくなっていきます。他方、ライブエンターテインメント市場の活況や演奏会等の比率も伸びるなど“多角化の時代”へと移り、そのまま「令和」に突入していきました(「参考資料2」、『情報メディア白書 2019』)。

 平成期の音楽産業について、JASRAC広報部は「音楽の聴かれ方は、平成の前期と中期はCDが多くを占めたが、DVDなど映像での利用が次第に増え、後期はインターネット配信での利用が拡大した」と分析しています(『日本経済新聞』)。

 平成期で全盛期から多角化を経た音楽産業は、単なる音楽産業の枠組みにとどまらない事業の多角化、つまりは“脱音楽産業化”の可能性を多いに秘めています。

 ただし、“脱音楽産業化”には、多様な分野と音楽による新たなシナジーが求められます。その際、ランキングをはじめ多様な「平成の音楽」を振り返り考察することによって、平成とは違った新たな「令和期の音楽産業」のための、大きなヒントが得られるかもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・『情報メディア白書 2019』(電通メディアイノベーションラボ編、ダイヤモンド社)
・「「世界に一つだけの花」「居酒屋」人気 平成の音楽著作権料」(『日本経済新聞』2019年4月18日付)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43878430Y9A410C1CR0000/
・「平成」期における著作物使用料分配額TOP100を発表
https://www.jasrac.or.jp/release/19/1904_1.html
・平成で一番“使われた”曲1位は「世界に一つだけの花」 カラオケ通じ歌い継がれる演歌・歌謡の名曲も多数上位に
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/52856/1/

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