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福田雄一(上演台本・演出)が語る、ムロツヨシ主演舞台『恋のヴェネチア狂騒曲』の魅力

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2009年『バンデラスと憂鬱な珈琲』(マギーとの共同脚本)、2015年『才原警部の終わらない明日』(作・演出)で既にシス・カンパニーと組んできた福田雄一が、今度はなんと18世紀のイタリア古典喜劇に挑む。“近代喜劇の原点”ともされているカルロ・ゴルドーニ作『2人の主人に仕えた召使』は、2017年にはこれを原作とする『One Man,Two Guvnors(一人の男と二人の主人)』が英国のナショナルシアターライブ(NT Live)として日本公開され評判となったことでも知られる傑作だ。今回はタイトルを『恋のヴェネチア狂騒曲』とし、2人の主人に仕えようと奔走し周囲の人々を引っ掻き回す召使にムロツヨシが扮する、福田テイストが加えられた爆笑喜劇となる。上演台本と演出を手がける福田に、話を聞いた。


――この企画のオファーを、福田さんが引き受けるに至ったいきさつは。

シス・カンパニーの北村明子プロデューサーから「この原作でやってみない?」というお話をいただいたのが最初です。もともと、これが原作のニューバージョンといえる『One Man,Two Guvnors(一人の男と二人の主人)』という作品のことは知っていたので、ぜひぜひ!という流れになりました。

――福田さんが自ら上演台本も書かれるということですが、シチュエーションを書き換えたりするんですか?

いえ、シチュエーションは基本的に変えません。

――では、原作に忠実に。

そうですね。やっぱり原作自体がすごくよくできていたので、そんなに大胆に変える必要もないなと思ったんです。

――上演台本を書くにあたって、一番意識したことはなんですか。

物語はよくできているんですけど、人物造形を考えるとやはりもっと役者さんの個性を活かしたいので、キャラクターの幅や厚みをさらに持たせたいなというのがあったので。そういう点に気を付けて、より面白味が出るように書かなければということは考えました。

――二人の主人を持つお調子者の召使役を今回はムロツヨシさんが演じます。もちろん、これまで映像でも舞台でも何度もご一緒されているわけなので、大好きな俳優さんだということはよくわかっていますが(笑)。改めて、福田さんから見たムロさんの舞台役者としての魅力とは? また映像の時と舞台では違うんでしょうか。

違うかな?……、いや、やっぱり映像も舞台も別に変わらないな(笑)。ムロくんのどこが好きかというと、映像でも舞台でも同じように結局、ムロくんの持っている雰囲気、いわゆるなんともいえないあの脱力感と、隙があったらいたずらしてやろうというあの野心めいたところが彼の持ち味だと思うので。ただ、舞台では目の前にお客さんがいるから、より、お客さんのリアクションが確実にもらえるものを、ちゃんとセレクトしてくれているように思いますね。


――そして今回、キャスト陣が大変豪華な顔ぶれになっています。

ホント、豪華です。ちょっと贅沢過ぎるくらいですよね。

――それぞれ、どういう役回りになるんですか?

堤真一さんと吉田羊さんは、フロリンドとベアトリーチェというワケありの恋人同士で、羊さんが堤さんに会うためにヴェネチアに来ているという設定になります。そして結婚しようとしている若いカップルのほう、シルヴィオとクラリーチェは賀来賢人くんと若月佑美ちゃん。その佑美ちゃんのお父さんが高橋克実さんで、賢人くんのお父さんが浅野和之さんという配置です。

――堤さんとは『バンデラス~』や『才原警部~』だけでなくテレビドラマ(『スーパーサラリーマン左江内氏』2017年)などでもご一緒されていますが。

今回の物語では、堤さんと羊さんの恋愛、賀来くんと若月の恋愛がそれぞれにとても真剣なものなので、基本的にはお互いが徹底してシリアスでいるほうが、逆に笑いを生むと思うんですよね。だから特に堤さんには、これはいつも言っていることなんですけど「今回も『クライマーズ・ハイ』(映画、2008年)でお願いします」と言うつもりです。

――『バンデラス~』も『才原警部~』もオリジナル脚本でしたが、今回は古典作品の原作があるということで、またちょっとニュアンスが変わってくるんでしょうか。

ここにきてだいぶ、変わってきた気がします。というのは実は今日、初めての美術打ち合わせだったんですが早速、北村プロデューサーから気合を入れられたので。僕が手掛ける翻訳モノというとミュージカルが多いんですが、元の作品から逸脱した笑いをふんだんに盛り込んで結構メチャクチャなことになっていくというイメージがあると思うんです。だけど「今回、それはアカン!」と(笑)。

――封じられたんですか?

いきなり初日にして、封じられました(笑)。

――原作を大事に、と?

それはもちろんなんですけどね。一応、上演台本は自分としては結構おとなしめに手を入れたつもりだったんですよ。それで、これだと遊びが足りないって言われるかもなあ、なんて思っていたら……、逆でしたね。

――そんなに遊んではダメだと?

はい。自分では、おとなしめのつもりだったのにも係わらず。きっと、マヒしてるんでしょうね(笑)。だけど僕が関わる翻訳ミュージカルの時はいつも台本の段階でだいたいこのくらいは変えておいて、さらに稽古で5割増しくらいで手を加えているんですよ。だから今回は、そのあたりをどういう方法でやっていこうかなと考えているところです。


――では、稽古でどんどん変更させていくやり方が今回は使えない?

いや、使います。使いますけど、その分、たくさんカットしないといけなくなるかも。しかし僕がカットをする作業がとても苦手なもので。まあ、得意な作家さんはいないと思うんですけどね。もちろん面白くないところはカットしますよ!とプロデューサーに言ったんですが「いや、ことによったら面白いところもカットせなあかんかもしれんねんで!」と言われてしまいました。それで今、非常に心が揺らいでいるんです。とはいえ、もともと今回はみんなを大暴れさせるというよりは、ちょっと上品なコメディに仕上げたいなとは思っていたので、このくらい厳しくしてもらっておいたほうがちょうどいいのかもしれません(笑)。

――演出的にはどういうところを狙っていこうと思われているんですか。

演出はいつもと同じようにやろうと思っています。ミュージカルの時もそうなんですけど、役者さんには好きに動いてもらって、みんなして大騒ぎしながらその面白いところをチョイスしていく。そのやり方で今回も進めるつもりなんですけど、これだとどうしても尺が増えそうなんですよね……どうしよう(笑)。

――賀来賢人さんとも、映像、舞台でしょっちゅう組まれていますよね。ここのところは特に、一緒にいる時間が長そうですね。

そう、確かに最近ちょっと多いですね。でもこの舞台のオファーをしたのは『今日から俺は‼』(テレビドラマ、2019年)よりもだいぶ前の話だったので。まさか『今日俺』でアイツがここまで大人気になって、このお芝居に戻ってきてくれる形になるとは到底思っていなかった。これは、うれしい誤算でした。どうやら今回の舞台に出るにあたって「誰にも負けないくらいふざけたい」と言っているらしいので、尺の問題としては彼も危険かもしれない(笑)。

――ムロさんだけでなく、賀来さんも危険人物(笑)。

危険ですよ、ホントにもう。『水戸黄門』じゃないですけど、ムロさんカクさんは相当危険な二人です。彼らを僕がどううまくコントロールしていくかが、今回の鍵だと思いますね。


――そして女優陣、吉田さんと若月さんに期待することは。

羊さんとは僕、初めてご一緒するんですよ。羊さんは、このお芝居の中では一番マジなモチベーションを持った役なので、それはそれはシリアスに徹してほしいなと思っています。なんだかんだいって羊さんが太い軸ですからね、このお芝居って。羊さんの想いこそが、いろいろな人を巻き込んでいくことになるので。そして若月とは舞台(『スマートモテリーマン講座』2017年)を一緒にやっていますし、『今日俺』にも出てもらっているので、もう慣れたものですけど。彼女もコメディをやる時にとても器用なほうなので、そこは存分に活かしていきたい。でも原作のままだとあまり暴れどころがない役なので、そこはこちらである程度ふくらませようかなと思っています。

――高橋克実さん、浅野和之さんという重鎮二人に関してはいかがですか。

そうですね、重鎮二人には思いっきりふざけてほしいと思っています。二人とも、ふざけても大丈夫な役なので。克実さんも暴れますからね~、僕の現場にくると。『ナイスガイinニューヨーク』(2016年)の時も、ホントすさまじかった(笑)。そして僕、浅野さんとはも今回が初めてなんです。浅野さんもやはり危険人物なので、それは楽しいことになるんじゃないでしょうか。その点も、ものすごく期待しています!

――お客様に、ここは見逃さないでほしい!というところはありますか?

なにしろ、今回はムロツヨシの記念すべきシス・カンパニー初主演作ですから。そのムロツヨシがムロツヨシたる活躍をして、シス・カンパニーの芝居に恥じない舞台を作り上げる姿をぜひ目に焼き付けていただきたい。もう、その一点でございます!(笑) もちろん僕としても一切、手を抜かずにがんばりますよ!!


取材・文=田中里津子
写真撮影=池上夢貢

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