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『SXSW』凱旋ツアーで見せた、リーガルリリー現体制の無敵感

SPICE

リーガルリリーpresents『春はあけぼのツアー』
2019.4.4 渋谷CLUB QUATTRO

この公演の3日前の4月1日に『SXSW 2019』に初出演した際の短いドキュメント映像が公開された。そこでたかはしほのか(Gt/Vo)がライブハウスかどこかのダイナーか、テーブルに突っ伏している様子が気になった。映像の後半で最初のライブを終えてもう日本に帰った方がいいと思ったというほど、空振りのライブをしてしまったせいだ。が、そのライブを見て誘ってくれた飛び入りライブで3人は「ストイックになるところを間違えていた」「日本の音楽を誇りに思っていい」と気づいたとドキュメントの中で語っていた。怪我の功名は何かを持ってる人間にしか訪れない。たった1日の間にこんな気づきのチャンスを獲得できるリーガルリリーはやはり何か持ってる。

前置きが長くなったが、今回の『春はあけぼのツアー』はアメリカ公演の凱旋ツアー。帰国後、3月20日の福岡からスタートした同ツアーの前半はカネコアヤノ(バンドセット)、ズーカラデル、Saucy Dog、Age Factoryらとの対バンで、後半の名古屋、渋谷、大阪はワンマン。この7本を約2週間で行うなかなかタフなツアーだ。だが、アメリカ公演で得た確信を目撃できる貴重な時間になったと思う。


リーガルリリー



若い女性ファンも格段に増え、満員御礼のSoldoutとなった渋谷CLUB QUATTRO。オーディエンスは静かに3人の登場を待つ。演奏中は集中度が凄まじいのだが、メンバーの登場、そして演奏の最後の一音が鳴り止んだ時のフロアの感情の爆発もまた凄い。この日のオープニングはたかはしの口笛も印象的な「こんにちは。」から。海(Ba)のよく“歌う”フレーズが会場に渦を作る。そのまま「ジョニー」「the tokyo tower」とノンストップで曲をナチュラルに繋いでいく。まっすぐな視線で世界を串刺しにするようなたかはしの歌の言葉は時に大人の耳には残酷なほど芯を食っているが、リーガルリリーのライブを体験することは、自分の中の子供っぽいけれど諦めきれないまっすぐさの残存成分を確認するような側面がある。その背筋が伸びる体感は変わらない。


リーガルリリー


リーガルリリー



ツアーの説明もアメリカ公演のことにも触れずにひたすら1曲1曲に気迫を込めて演奏する3人。特にシューゲイズ的なギターが心象風景を拡張していく「ぶらんこ」では、3人の声や楽器の音の研ぎ澄まされた一つ一つに凍りつくような衝撃を受けた。間奏の途中のギターソロ、選び抜かれたメロディアスなベースライン、アウトロに向けて嵐のように重層的にとぐろを巻くゆきやま(Dr)のドラミング。全身を使って3人がステージ上で対峙する。一瞬ごとに何かを発見しながら進んでいく演奏と言えばいいのか、リーガルリリーのライブはすでにある曲の再現だと感じたことがない。じっくり3人の中で曲のイメージを立ち上がらせ、そこに向かって全力で音を鳴らす――誰にどう見られるとか、舐められてはいけないとか、気にするところはそこじゃないということをより広い世界で体得してきた今のリーガルリリーの無敵さを感じる場面だった。

濃厚な7曲を終えて、満員のフロアを心配しながらたかはしは、過去、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのライブで興奮しすぎて前方に突入し、1曲目で倒れたことを告白。それでも最高に楽しかったというのが彼女らしい。後半は軽快に「トランジスタラジオ」、そして当初の突き刺すような印象から包容力さえ身につけた「リッケンバッカー」へとビートは続く。ギターが途中で鳴らなくなるというアクシデントもあったが、たかはしは「ほんとに不思議なギターで」と言いながら、音が出るようになると「死者、蘇生」と笑わせる。オルタナティヴなサウンドに乗る人懐こい歌メロや海がつけるコーラスがいい「僕のリリー」まで、前半の緊張感とはまた違う強みを見せた。


リーガルリリー


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終盤を前に、「今回、『春はあけぼの』という特に何にちなんでいるか謎のツアーだけど、そこのベースの人(笑)に去年1ヶ月サポートしてもらったあと、メンバーになることをここ(渋谷CLUB QUATTRO)で発表したんだよね」と、たかはしが振ると、「ここで言う?」と海が返し、「それで3人で初めてのツアーをやろうと思った」ことが今回のツアーの本意であることを明かしてくれた。たかはしの決意とそれを理解するゆきやま、そして正式メンバー不在の時期が少なからずあったベースのポジションは、1年未満であるにも関わらず、海以外考えられないほど、この3人のリーガルリリーはかけがえがない。

終盤は、さらに悲しみや荒涼とした風景をまるでギターが意志を持っているようなサウンドや、スローで時折、ダブのような時空が歪む感覚さえ覚える音像の「高速道路」、そして本編ラストはこれまでの3作のアルバムの最終曲である「せかいのおわり」が軋みながら進んでいく乗り物のような迫力で爆走した。そう。終わりは始まり。10代に作った作品たちを何度もステージで演奏し、20代になった今の彼女たちはこの曲の歌詞にあるように狭い世界から前向きに逃げる。フィードバックノイズを撒き散らしながら、笑顔でライブを完走したのだった。


リーガルリリー



たかはしの決意とそれを理解するゆきやま、そして正式メンバー不在の時期が少なからずあったベースのポジションは1年未満であるにも関わらず、海以外考えられないほど、今のリーガルリリーは無敵だ。本編でギターが鳴らなくなってしまった「リッケンバッカー」を何の説明もなしに演奏した3人は最高にクールだった。

アンコール前のMCでも告知されたが、去年、海が正式加入した7月5日を記念日としてWWWで『海の日~火を手にしたこどもたち~』と題したライブも開催される。追ってゲストも発表されるので、心待ちにしたい。


文=石角友香 撮影=南風子

未掲載カット含む全ライブ写真は【 こちら

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