えっベイル? お引き取り願おう。マンUに戻ったファーガソンのDNA。スールシャールなら大丈夫【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

えっベイル? お引き取り願おう。マンUに戻ったファーガソンのDNA。スールシャールなら大丈夫【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】
「スールシャールは適任者のひとり」ついにマンチェスター・ユナイテッドがマンチェスター・ユナイテッドらしさを取り戻り始めた。現役時代、アレックス・ファーガソン元監督の薫陶を受けたオレ・グンナー・スールシ…

「スールシャールは適任者のひとり」

ついにマンチェスター・ユナイテッドがマンチェスター・ユナイテッドらしさを取り戻り始めた。現役時代、アレックス・ファーガソン元監督の薫陶を受けたオレ・グンナー・スールシャール監督はそのDNAを色濃く受け継いでいる。来季こそ、完全復活への挑戦となるはずだ。(文:粕谷秀樹)

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「なんでスールシャールなんですか!? ビッグクラブの監督を務めた経験がないのに、ユナイテッドのボスになれるわけないですよ。しかもモウリーニョの後釜でしょ。ジダンとかブランとか、やっぱりビッグネームを招聘すべきですよ、絶対に!!」

 昨年末、同じ業界で働く彼は一気にまくし立てた(記憶がある)。二匹の猫と暮らしている私を「猫アレルギーなのに」と笑うほどデリカシーのない人間だから、放っておいてもよかったのだろう。しかし、オレ・グンナー・スールシャール監督を軽視する発言にカチンと来た私は、こうやり返した(記憶がある)。

「モイーズ、ファンハール、モウリーニョと、外部から招いた3人が立て続けに失敗しているのだから、足もとを見つめ直すためにもユナイテッドをよく知る人間の起用は当然だよ。ブランがユナイテッドでプレーしていたとはいえ、たった2年でしょ。

 ジダンは英語をしゃべられるのかどうかも分からないし、この窮地にプレミアリーグの素人を監督に起用するなんて、混乱するだけじゃん。スールシャールは長い間サー・アレックスの薫陶を受けてきたから、適任のひとりといえるんだけどね」

私のカウンターに、彼は沈黙した(確かな記憶がある)。

高まるモチベーション。選手との距離感は抜群

 スールシャール体制発足以降、公式戦は14勝2分2敗。文句なし、いやいや望外の好成績である。一時は絶望的といわれたチャンピオンズリーグの出場権獲得は現実味を強く帯び、チャンピオンズリーグではパリ・サンジェルマンにホームで0-2の敗北を喫しながら、敵地で3-1の大逆転。アウェイゴールの差でベスト8に進出した。

しかもアンデル・エレーラ、ファン・マタ、アントニー・マルシャル、ネマニャ・マティッチ、ジェシー・リンガードを負傷で欠き、ポール・ポグバが出場停止だったにもかかわらず、だ。

「逆転が難しいってことは承知している。でも、我々はマンチェスター・ユナイテッドなんだよ」

 このひと言に選手が奮い立ったという。スールシャールの前向きな発言に刺激され、パーフェクトな仕事をやってのけた。

 もしジョゼ・モウリーニョだったら、「プレミアリーグに専念するしかない」とあきらめ、モチベーションの低下を招いていたに違いない。ルイ・ファンハールは難解な戦術論を繰り返し、デイビッド・モイーズは意味不明な珍答の連続。やはり、スールシャールの登用は正解だった。

 チャンピオンズリーグの一件に限らず、スールシャールは選手を批判せず、積極的に言葉をかけている。では、ここでロメル・ルカクの証言に耳を傾けてみよう。

「監督はいつも気にかけてくれる。イージーミスをしても、あまり気にするな。次、頼むぞってね。それから体重が落ちなくて苦労していたときも、ウェートコントロールは焦ると台無しになる。スタッフと入念に話し合い、状況を逐一報告してくれ。待っているし、期待しているよ、ともいってくれた」

 サー・アレックス・ファーガソン退任後の3監督は選手との間に壁を作っていたが、スールシャールは距離感が抜群だ。この一体感はパフォーマンスに直結し、オールド・トラッフォードのノイズもフラストレーションの比率が低くなってきた。アレクシス・サンチェスの負傷(今シーズン絶望とも……)は気になるが、ユナイテッドは万全に近い形で最終盤に突入していく。

移籍市場に強いディレクターの招聘を

 読者の皆さんが本稿をチェックされるころ、スールシャールから《暫定》の二文字が外れ、公式に監督として登録されているかもしれない。前述した14勝2分2敗は短期的なショック療法ではなく、現場の長として認められてしかるべきデータである。

 依然として懐疑的な視線を投げかける者もいるが、ジネディーヌ・ジダンはレアル・マドリーに戻っていった。一部のOBがしつこく推薦するマウリシオ・ポチェッティーノは、トッテナムが手放すはずがない。ましてこのクラブの会長は、凄腕として知られるダニエル・リーヴィである。ユナイテッドの渉外担当は素人同然のエドワード・ウッドワードCEOだ。関わらない方がいい。

 しかし、スールシャール体制を支えるうえで、ウッドワードのポジションが非常に重要であることもまた事実である。

 ウッドワードは金融界でもその名を知られるビジネスマンで、ユナイテッドにも数多くの大口スポンサーを見つけてきた。ただ、フットボールの世界ではアマチュア。駆け引きが甘く、エージェントに足もとを見られるケースも少なくない。

 したがってウッドワードはスポンサー関連に集中し、移籍市場に強い人間をディレクターとして招聘する必要がある。OBで固めるのならエドウイン・ファンデルサール(現アヤックスCEO)だろうか。アヤックスと提携し、有能な若手が行き来できるようになれば、両クラブのレベルアップにつながる。

 あるいはアーセナルと契約間近と伝えられるモンチことラモン・ロドリゲス・ベルデホ、バイエルン・ミュンヘンがコンタクトを図ったズベン・ミズリンタートなど、移籍市場で実績のある有能な人間の動向にも注意しなくてはならない。

遠回り6年半…ついにリスタート態勢に

 シーズン終了後、質が不足しているCBに超一流を獲得し、層が薄いサイドバックと右ウイングを補強するためにも、目利きのディレクターが必要だ。セリエAの人種差別に辟易としているカリドゥ・クリバリ(ナポリ)がプレミアリーグ移籍を希望しているようだが、彼のエージェントはかなり怪しい。

 こうした人物評価がウッドワードは甘く、契約でミスを犯してきた。交渉中の案件を外部に漏らす失態も演じた。仮にウッドワードに権限があったとしても、「あの選手の身辺は再調査する必要があります」と進言できる側近を雇い、強化をコントロールしなければならない。

 現場はスールシャールに任せておけば大丈夫だ。しかし、選手の質はシティとリヴァプールを下まわるため、フロントが好アシストで支えなければならない。

 これまで、ウッドワードはビッグネームにこだわってきたが、プレミアリーグの若手にも逸材は存在する。右サイドバックならスピード豊かなアーロン・ワン=ビサカ(クリスタルパレス)、あるいは運動量豊富なリカルド・ペレイラ(レスター)。ウェストハムのデクラン・ライスはネマニャ・マティッチの負担を軽減できるMFであり、シティが興味津々と伝えられるルベン・ネービス(ウォルバーハンプトン)を、横取りするプランも爽快だ。

えっ、レアル・マドリーのガレス・ベイルがユナイテッド移籍を希望しているって!? ケガばかりで稼働率が低いにもかかわらず、年俸は20億円オーバー。お引き取り願おう。

6年半ほど遠回りしたものの、ユナイテッドはサー・アレックスのDNAを受け継ぐスールシャール監督により、ようやくリ・スタートの態勢が整った。来シーズンはプレミアリーグ奪還がメインターゲットになる。件の彼には、黙って見守ってもらうことにしよう。力づくでも──。

(文:粕谷秀樹)

(更新日:2019年3月15日)

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