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『竹宮惠子 カレイドスコープ 50th Anniversary』展レポート 約150点の作品から、画業50年の歩みをたどる

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川崎市市民ミュージアムにて、『竹宮惠子 カレイドスコープ 50th Anniversary』展(会期:〜2019年4月14日)が開幕した。本展は、『風と木の詩』『地球(テラ)へ…』『天馬の血族』など、数々の名作を生んだマンガ家・竹宮惠子の原画や関連資料など約150点の作品を通して、活動の軌跡をたどるもの。


右端:(C)竹宮惠子 『風と木の詩』より「かもめ」



画業50周年を記念して企画された本展覧会は、北九州、青森、徳島、新潟を巡回し、今回、待望の首都圏初開催となる。竹宮惠子がこれまでに発表したマンガは、のべ180作品、約2万6,000ページに及び、会場では1967年の雑誌投稿作品から歴代の名作まで、編年順に肉筆原稿や複製原画を楽しめる構成になっている。


展示風景



本巡回展で初公開となる『風と木の詩』の草稿にあたるクロッキーノートをはじめ、80年代に流行したイメージアルバムのレコード、竹宮と萩尾望都が共同生活をしていた「大泉サロン」のイメージ展示など、貴重な展示も見逃せない。『風と木の詩』に登場する美少年ジルベールが来場者を出迎える会場より、本展の見どころをお届けしよう。


会場入口には、ジルベールと一緒に写真撮影ができるコーナーも


展示風景



連載前の貴重な『風木』設定資料が初公開!

『風と木の詩』は、1976年から84年にかけて『週刊少女コミック』にて連載された。美少年ジルベールと、正義感あふれる少年セルジュを中心に、フランスの寄宿舎で繰り広げられる物語には、少年たちの同性愛、近親相姦、人種差別、虐待など、衝撃的なテーマが盛り込まれていた。


左:(C)竹宮惠子 『風と木の詩』より「夏化粧」 右:(C)竹宮惠子 『風と木の詩』より「花模様」


(C)竹宮惠子 『風と木の詩』



1970年には、すでに本作の着想を得ていた竹宮惠子は、71年にプロローグ部分のコマ割りや、作品の舞台となる19世紀フランスの建築物などを研究したスケッチを、クロッキーノートに残していた。異色の題材を扱った作品だけに、なかなか編集者の同意を得られなかった本作は、構想から作品発表までに長い年月を要した。結果的に、多くの読者の心を捉え、少女漫画の世界に大きな影響を与えることになった『風と木の詩』のクロッキーノートが、本展の第1章に展示されている。


(C)竹宮惠子 『風と木の詩』クロッキーノート


(C)竹宮惠子 『風と木の詩』クロッキーノート



雑誌に掲載された作品と比較してみると、クロッキーノートに描かれたキャラクターは、「少女漫画らしい丸みが残っていて、作品が世に出るまでに、作者の画風が変化したことが感じ取れる」と、佐藤美子氏(川崎市市民ミュージアム・学芸部門長)は語る。展示ケースの上段には、1976年発表時の複製原画も展示されているので、じっくり見比べてみたい。


(C)竹宮惠子 『風と木の詩』クロッキーノート



作家本人がプロデュースした、精巧な複製原画を一挙展示

会場に展示されているモノクロ原画はすべて肉筆原稿だが、カラーイラストは「原画′(ダッシュ)」と呼ばれる複製原画になっている。これは、コンピューターにマンガ原稿を取り込み、綿密に色調整を重ねて印刷されたもの。色あせや汚れ、ホワイトの修正部分や、原画本来の色合いが忠実に再現されていて、原画と見分けがつかないほどのクオリティに仕上がっている。


右端:(C)竹宮惠子 『ファラオの墓』より「流れゆく運命」


(C)竹宮惠子 『変奏曲』より「ウォルフとエドナン」



「原画′」の技術は、劣化や退色のリスクが高いマンガ原画の保存と公開を両立したいという竹宮本人の思いから開発されたとのこと。竹宮のカラーイラストの特徴について、佐藤氏は「昔のヨーロッパ風のスモーキーな色合いで、品がある」とコメント。また、本展のカラーイラストの額縁は、すべて作家自身が、作品のイメージや雰囲気に合わせて選んだそうだ。


(C)竹宮惠子 『天馬の血族』より「光の中で跳べ!」


(C)竹宮惠子 『地球(テラ)へ…』より「意識の底で」(上)、「ナスカの戦い」(下)




(C)竹宮惠子 変奏曲シリーズ『カノン』



モノクロの肉筆原稿では、トーンの種類が少なかった時代に、細部まで丁寧に描き込まれている様子や、描き直した部分などを間近に見ることができる。滑らかな線でキャラクターの動きを表現した作画にも注目したい。


(C)竹宮惠子 『ガラス屋通りで』見開き扉




(C)竹宮惠子 『ファラオの墓』


(C)竹宮惠子 変奏曲シリーズ『ウィーン協奏曲』



 

本展の第3章では、少年マンガ誌で初の連載となったSF作品『地球(テラ)へ…』の、冒頭22ページのモノクロ原画が丸ごと展示されている。


(C)竹宮惠子 『地球(テラ)へ…』



掲載雑誌からイメージアルバムまで、豊富な関連資料も

会場には、『風と木の詩』や『ファラオの墓』が掲載された『週刊少女コミック』や、竹宮が表紙を担当した『June』などの雑誌が原画とあわせて展示されている。


『週刊少女コミック』 京都国際マンガミュージアム/京都精華大学国際マンガ研究センター所蔵


『June』 川崎市市民ミュージアム所蔵



また、作品のイメージに合う曲をセレクトして収録したイメージアルバムは、70年代後半から80年代にかけて数多く制作されたそうだ。少女マンガとレコードの親和性が高かった時代ならではの、貴重な資料になっている。


イメージレコード



さらに、女性版「トキワ荘」のような、「大泉サロン」の部屋をイメージした立体展示も興味深い。1970年代初頭に、竹宮と萩尾望都が共同生活をしていた練馬区大泉にある二軒長屋は、編集者や若手マンガ家たちが集う文化的交流の場になっていた。当時の環境が垣間見える展示のほか、展覧会の終盤には、現在の制作現場を紹介するパネル写真や、仕事道具なども紹介されている。


大泉サロンのイメージ展示


(C)竹宮惠子 集合キャラ描き下ろし



『竹宮惠子 カレイドスコープ 50th Anniversary』は4月14日まで。川崎市市民ミュージアムの1階ミュージアムショップには、オリジナルグッズも販売されている。展示と合わせて、ぜひチェックしてほしい。なお、本展は京都国際マンガミュージアムに巡回する。

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