石井裕也 | 20代のうちに描きたかった、「家族」への違和感

石井裕也 | 20代のうちに描きたかった、「家族」への違和感
映画『川の底からこんにちは』では史上最年少でブルーリボン賞を受賞。また、三浦しをん原作の映画『舟を編む』でも史上最年少でアカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、まさに「気鋭の若手監督」という言葉がぴったりの石井裕也さん。その後も、妻夫木聡さん主演の『ぼくたちの家族』や『バンクーバーの朝日』など、話題作を撮り続けている気鋭の石井監督に、最新作の話はもちろん、映画監督として、そして一人の男性としての人生観について伺いました。
20代のうちに描きたかった、「家族」への違和感。
石井裕也
20代の頃から日本を代表する若手監督として活躍してきた石井裕也監督。今年初頭には妻夫木聡さん主演の『ぼくたちの家族』を公開。母親の末期がん発覚によって少しずつ変容していく家族の姿を描いた作品として、話題を呼びました。20代にして「家族」を題材に描いた理由やご自身の家族観についてもお伺いしました。
家族のなかにいると感じてしまう「異邦人感」

――映画『ぼくたちの家族』について伺わせて下さい。この作品は母親の病気発覚をきっかけに変容していく4人家族を題材にした作品ですが、このなかで石井監督は「家族の業」や「家族のつながり」のようなものを描かれたかったとか。

映画『ぼくたちの家族』予告編

石井裕也 (以下、石井)そうですね。家族のつながりみたいなものって、説明しようとするとすごく難しいですよね。「絆」とか言われてもピンとこないですし。

石井裕也

――石井監督ご自身は、お母様を幼い頃に亡くされているんですよね。

石井そうです。でも、恵まれない家庭というわけではなかったです。

――家族は誰かと比較するものでもないですしね。

石井ただ、母親がいなくなるっていうのは相当のことでしたよね。その後、当然家の中がギスギスする感じもありました。
 でも、「こういうものが家族だ」なんて定義は僕にはないし、多分今後も見つけられないと思う。まぁ、決めつける必要もないですし。

――『ぼくたちの家族』も、わかりやすいメッセージというよりは、人間模様の積み重ねが家族としかいいようのないものになっていった気がします。

石井だから結局この映画でも「家族とはこういうものだ」っていうことを表明する必要はないと思っていました。それよりは、この「家族」っていうわけのわからないものと向き合って、そこからなにか理屈では説明できない生々しい物が見えてくればいいな、と。

――たとえば『川の底からこんにちは』のような作品では、キャッチーなテーマとなるような言葉が繰り返し何度も出てきたと思うんですが、「ぼくたちの家族」では、そういうテーマみたいなものを前面に押し出す表現は控えられている印象がありました。

映画『川の底からこんにちは』予告編

石井それは年齢のせいもあるかもしれないですね。20代前半に撮影している作品は、やっぱり所信表明みたいなニュアンスがどうしてもありますからね。「俺はこう思ってるんだ!」って全力で叫んでいるんです。『ぼくたちの家族』は20代で家族の映画を撮るってことに、勝手に自分で意義を感じていました。

――それは大人になりきってしまう前に、家族について撮影しておきたかったということですか?

石井そうですね。子供の時、僕は「家族」に対してすごく違和感があったんです。それは居心地の悪さとも言えるかもしれませんけど。そういう若い感覚が残っているうちに、家族の話を描くということにおもしろさがあるような気がしたんですよね。

石井裕也

――石井監督が感じている、家族への「違和感」はどんな感じなんでしょうか。

石井もう、「違和感」としか言いようがないんですよね。人によってはそう言っても引っかからないみたいですけど。家族のなかにいると、まるで「異邦人」みたいな気分になるんです。「なんで俺はここにいるんだろう」みたいな。

――撮影を通じて「家族」というものの見え方が変わった部分はありますか?

石井変わったような、変わっていないような感じです。やはりわけがわからないものですよ、家族って。だからこそ、重要なのは定期的に家族と向き合うことだと思います。常に向き合うのは、やっぱり難しいと思うので。

口では言わなくとも「作品における責任」を感じ取ってくれた妻夫木さん

――『ぼくたちの家族』に引き続き、2014年2本目の公開となる『バンクーバーの朝日』も公開されました。2作品とも妻夫木聡さんと池松壮亮さんが出演されていますね。

石井二人とも、とても信頼できる役者であるっていうのはもちろんなんですが、「縁」みたいなものがあったんでしょうね。重要な役どころで同じ俳優さんと連続で仕事ができることなんて、あまりないので。

――二人とも忙しい俳優さんですから、スケジュールが抑えるのも大変そうですしね。

石井そうですね。そういうタイミングの良さもあったと思います。

――『ぼくたちの家族』では妻夫木さんは主演で特に重要な役どころだったと思うのですが、どんな形で撮影は進めていかれたんですか。

石井あの役を演じるのは相当しんどいですから。たとえば、撮影に入る2週間ぐらい前に「打ち入り」っていうのをやったんです。これは、「これからみんなで頑張るぞ!」という決起集会的なものなんですが、その時には既に妻夫木さんはすごく物憂げな表情というか、なにかを背負っているような雰囲気を漂わせていましたね。
 周囲はわーっと陽気に飲んでいるのに、あの人だけすべての責任を引き受けているような顔をしていて。だから、僕が何も言わなくても、多分「この役の責任感」みたいなものをわかってくれてたんじゃないかと思います。

聞き手:中島洋一 構成:藤村はるな 撮影:加藤麻希

更新日:2016年2月5日

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