石井裕也 | 評価されたって、自分の能力は変わらない

石井裕也 | 評価されたって、自分の能力は変わらない
映画『川の底からこんにちは』では史上最年少でブルーリボン賞を受賞。また、三浦しをん原作の映画『舟を編む』でも史上最年少でアカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、まさに「気鋭の若手監督」という言葉がぴったりの石井裕也さん。その後も、妻夫木聡さん主演の『ぼくたちの家族』や『バンクーバーの朝日』など、話題作を撮り続けている気鋭の石井監督に、最新作の話はもちろん、映画監督として、そして一人の男性としての人生観について伺いました。
評価されたって、自分の能力は変わらない。
石井裕也
20代の頃から日本を代表する若手監督として活躍してきた石井裕也監督。現在も、戦前にカナダのバンクーバーに実在した日本人野球チームを題材にした、話題の映画『バンクーバーの朝日』の公開が控えています。「10代の頃は、世界を意識した作品づくりを続けていた」とのことですが、若くして実績を積み上げてきた石井監督の人生観や映画哲学とは?
20代前半の頃、目指していたのは「世界で評価される作品」だった

――石井裕也監督というと20代の頃から華々しい賞をたくさん受賞されているので、「若くして」という言い方をされることが多いと思うのですが、実は映画監督としてのキャリア自体は10年以上あるんですよね。

石井裕也 (以下、石井)そうですね。最初に作品を撮ったのは、大学生の頃でしたからね。

――なんで映画を撮ろうと思ったんですか?

石井昔から映画は好きだったんです。それで18歳の時に大学で映画を作ってみたら、楽しかった。それ以来続けている、という感じです。

石井裕也

――卒業制作で作った『剥き出しにっぽん』で世界的な国際映画祭などで評価を受けてらっしゃいますが、10代で映画を撮影し始めた頃から、「世界」を視野に入れた作品づくりをなさっていたそうですね。

石井いや、「世界に進出したい」という野望があったわけじゃないんです。それを考えていたのは、本当に不純な理由から。
 昔、「どうやったら映画監督として飯を食っていけるだろうか」っていうことを考えたときに、当時20歳ぐらいの僕は「だったら海外の映画祭で賞を獲ればいいんじゃないか」と思ったんです。正直、いま自分で言ってて恥ずかしいですけど(笑)。

――あははは、戦略的な目標だったと。

石井当時はそうするしかなかったんです。だから映画を撮り始めて数年間は、ずっと海外の観客を意識した作品作りをしていました。今考えれば無謀な試みですが。「日本のお客さんにちゃんと向き合って作品を撮ろう」と思い始めたのは、『川の底からこんにちは』ぐらいからですね。遅いんですけど……。

――じゃあ、現在は世界進出とかは考えてらっしゃらないんですか?

石井なるべく広い世界を見たいし、別の世界でもなにかやれる可能性を閉ざしたくないっていうのはあります。違う環境の人と話すと、また違った観点で物事を考えられるから、おもしろい。全く新しいものが生み出せるかもしれないし。

――新しいものに挑戦するのがお好きなんですね。

石井わからないものに挑戦するとき、心がザワザワする感じは当然あるんです。「やばい、今回負けるかも」とか思ったり(笑)。でも、自分が自信を持てるまで、作品に時間を割いて、考えたり、努力するっていう作業はおもしろいんですよ。

石井裕也
評価に一喜一憂するよりは、自分の感覚を信じたい

――石井監督はずっとオリジナル脚本作品を手がけてらしたのに、2013年に三浦しをんさん原作の『舟を編む』の映画化されましたね。これはなにか心境の変化があったんでしょうか。

石井すごく長いこと知り合いだったプロデューサーに「もう少し引いた目線で物語をとらえてみろ」というある種の宿題のような提案をされたんですよね。これは、「もっと映画監督としてデカくなれ!」っていうメッセージなのか、「石井にはそういう適性がある」と思われたのかはわからないんですけど。

――結果、『舟を編む』では、日本アカデミー最優秀作品賞も受賞して、高い評価を受けました。

映画『舟を編む』予告編

石井そうですね。でも、すごくありがたいことだとは思う一方、賞というものはひとつの価値基準ですから。『舟を編む』も自分で作った作品だから大好きですが、じゃあこれより前の映画が好きじゃないかと言われると、そういうわけじゃなくて全部大好きです。
 だから、僕にとってはどの作品に対しても込めている熱量は一緒なので、世間の評価があるなしで自分の作品への愛情が変わることはないです。

――評価は日頃からあまり気にされないようにしているんですか?

石井評価されるのはとてもありがたいんです。でも評価されたからといって、僕の能力自体が上がるわけではないし、突然凄くなるわけでもないので、そこを誤解しないようにしています。
 賞に一喜一憂するよりは、むしろひとつの作品を撮り終えた後に、「反省点はここだった」「次の作品ではこんなことをやってみよう」といった、自分の感覚を大切にするようにしています。

石井裕也

聞き手:中島洋一 構成:藤村はるな 撮影:加藤麻希

更新日:2016年2月5日

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