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松坂の“事故”を受けて思い出した16年前のダルビッシュ

週刊ベースボールONLINE


2003年春のセンバツ。2年生エースとして出場した東北高・ダルビッシュ有(現カブス)はアクシデントも影響し、無念の3回戦敗退だった

 ベンチ前キャッチボールでの表情が、何とも言えない。東北高の2年生エースは痛みを押して、自身初となる甲子園を戦っていた。

 2003年春のセンバツ。開会式で“事件”は起こった。甲子園球場周辺には、ダルビッシュ有(現カブス)を目当ての女子中高生がカメラを片手に群がっていた。つまり、追っかけである。

「甲子園史上最長身」と言われた194センチで、アイドル顔負けの端正なマスク。2年生ながら実力、話題性ともNo.1の立場だった。このフィーバーが悲劇を呼ぶこととなる。開会式後、選手たちは一斉にグラウンドから引き揚げる。ダルビッシュは握手を求めるファンに腕を引っ張られ、右ワキ腹を痛めてしまったのだ。

 だが、背番号1を着ける以上、簡単に引き下がるわけにはいかない。開会式から4日後、初戦となった浜名高(静岡)との2回戦は1失点完投と気迫で乗り切った。しかし、無理をした代償は大きく、試合翌日に病院へ向かうと、全治2週間の診断を受けた。3回戦まで中3日。2日間ノースローを経て、前日に60メートルの遠投を行っただけで、花咲徳栄高(埼玉)との3回戦を迎えた。

 試合前から「7、8割の状態。ちょっと痛い」と本音を漏らしていたが、プレーボールとなれば話は別。背番号1を背負う以上、弱音を吐くわけにはいかない。当然のように先発マウンドに上がったダルビッシュだったが、本調子とは程遠い。試合序盤、味方の大量援護で主導権を握ったかと思われたが、6回を投げ12安打9失点で降板。チームも9対10で8強進出を逃している。自己最速の147キロには遠く及ばない137キロ。マウンド上では腕をブラブラさせる仕草を時折見せて、いつもの冷静さは見られなかった。

「ケガだけは、しないようにしたい」

 試合後、大勢の報道陣に囲まれたダルビッシュは語った。不測の事態ではあったが、決して言い訳をしない姿勢に感銘を受けた。悔しさをバネにダルビッシュは宮城へ戻って、練習を重ねた。先輩の思いを背負った同夏の甲子園。東北勢初となる全国制覇こそあと一歩届かなかったものの、大健闘の準優勝と、お世話になった3年生に恩返しをしたのだ。

 さて、ダルビッシュのアクシデントを主催者側は反省してか、春夏の甲子園大会に注目選手が出場する際は、危険回避のため、他の部員とは別ルートで入退場するようになった。2015年夏、17年春の早実・清宮幸太郎(現日本ハム)も、ファンと接する場面はなく、大きな混乱は見られなかった。

 中日・松坂大輔が沖縄キャンプ中、ファンと接触した際に右腕を引かれ、右肩を痛めた。この“事故”を受け、16年前のダルビッシュを思い出した。再発防止を祈るばかりだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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