全国19大学の芸術を志す学生アーティスト・キュレーターが創り上げる展覧会『Future Artists Tokyo』インタビュー
全国19大学の芸術を志す学生アーティスト・キュレーターが創り上げる展覧会『Future Artists Tokyo』インタビュー
2019年3月7日(木)〜10日(日)まで、東京国際フォーラムで開催される『アートフェア東京2019』。入場...

2019年3月7日(木)〜10日(日)まで、東京国際フォーラムで開催される『アートフェア東京2019』。入場無料のロビーギャラリーでは、芸術を志す学生アーティスト・キュレーターによる展覧会『Future Artists Tokyo “EЯLection of Anonymous” 』が、昨年に引き続き開催される。

6大学が参加した昨年の展示に続き、第2回目となる本展では、全国12都道府県から19大学38名のアーティストと、アートプロデュースを学ぶ7名の学生が参加する。キュレーターを務める一ノ瀬健太さん(東京藝術大学)、金奉洙さん(東京藝術大学)、篠倉彩佳さん(筑波大学)、鈴木萌夏さん(女子美術大学)、内藤和音さん(多摩美術大学)、長田詩織さん(多摩美術大学)、中嶋健人さん(武蔵野美術大学)に、本展への意気込みを聞いた。

展覧会タイトルに込めたダブルミーニング


ーーまずは、本展のタイトル「EЯLection of Anonymous」のコンセプトを教えてください。

一ノ瀬:このタイトルには、ふたつの意味が込められています。匿名のハッカー集団「アノニマス」による「選挙(Election)」と、「感覚的な興奮状態(Erection)」を暗喩しています。今問題になっている若者の選挙離れの根本には、ある種匿名のベールに包まれている政治家に投票しても、結局自分たちには関係ないだろうという、“諦め”のようなものがあると思うんです。特にSNSが代表的だと思いますが、そうした匿名性の中でさらに「炎上疲れ」してしまい、自分の意思を伝えられない状態を、ふたつ目の「興奮」に表しています。今は、「僕はこれが好きだ、こう思う」という意見を持っていても、SNSで炎上してしまうのが怖くて口をつぐむ状況になってきている。日常的にそうなってしまうと、選挙のような意思決定の場でも自分を隠してしまう。さらに言えば、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のような巨大IT企業などによって、自分の考えも知らず知らずのうちに誰かに決められてしまうかもしれない。

長田:自分を発信しないという状況に慣れすぎて、一人ひとりが主張する権利を放棄して、責任感も持てなくなっているのではないでしょうか。なので、今を生きている人たちがその状況に気づいて、自分を発信するエネルギーを展覧会で持ち帰ってもらえたらいいなと思います。

一ノ瀬:まずは間違ってもいいから、恐れずに自分を発信してほしいんです。自分の好きなものを選び、自分の行動を選び、自分の発言を選んでほしい。この展覧会が、訪れる方々のアイデンティティに問いかけるきっかけになればいいなと思っています。

ーーこうしたコンセプトは、どのようにして決めたのでしょうか?

一ノ瀬:候補作品をズラッと並べた時、「不気味さ」であったり、「顔が書かれていない匿名性」「デジタル」といった作品が多かったんです。なので、作品を見ながら同時進行でタイトルを考えました。


東京藝術大学 金 知慧《Gaze》



中嶋:単に「たくさん作品があって多様性がある」というようなコンセプトは避けたかったんです。作品から感じたものをタイトルにしたいというプロセスは、7人で共有していました。

ーーコンセプトはスムーズに決まりましたか?

一ノ瀬:「Erection」は性的な意味合いもある強い言葉ですし、尖りすぎてみんなにはあまり共感してもらえないかなと思っていたんですけど、意外にスルスル決まりました。特に女性のキュレーターからは、新しいものを作っていこうという勇気をもらえました。

鈴木:私からすれば、普段は女子美でまわりにも女子しかいないので、同年代の男性の意見に触れられて面白かったです。男性陣から「女子はどう思う?」と聞かれることも多かったですしね。言葉選びは男女で違いが出やすいと思ったので、「女性にはこういう伝え方をしたほうがいいよ」というアドバイスは結構していました。

大学単位ではなく、作家個人に注目してほしい

ーー展覧会の準備で、大変だったことはありましたか?

金:今回は作品数が多い上に大型の作品も多かったので、レイアウトを作るのが大変でした。最終的には、「鑑賞者一人ひとりのBPM(心拍数)を上昇させる」というのもコンセプトなので、心臓の形を意識したレイアウトにして、中心にも心臓の形をした作品(京都市立芸術大学 酒井 里紗《ache》)を展示しています。


京都市立芸術大学 酒井 里紗《ache》



鈴木:地方大学の作家さんは特に、最初は性格もまったくわからない状態なので、メールや電話でいっぱいお話をしてテーマを擦り合わせていく過程が大変でした。でも、そこが面白い部分でもありました。

ーー各大学によって、作品の特色のようなものはありましたか?

長田:私は、特に感じなかったですね。たとえば、女子美は女子大だからかわいらしい作品が出てくると思われる方もいると思うんですけど、竹内七月姫さんの《UNMANNED III》は、今回の出展作の中でも一番大きくて重い、男子顔負けの作品なんです。


女子美術大学 竹内 七月姫《UNMANNEDIII》



鈴木:女子美は作品も女子っぽいんだろうって固定概念を持っている方も多いと思うんですけど、全然そんなことはなくて。大学の特色というよりは、「作家の個性大爆発!」みたいな(笑)。大学単位ではなく、作家個人として見てもらいたいという思いが大きくあります。

長田:とはいえ、これまであまり注目してこなかった大学にもすごくいい作品がたくさんあったので、今まで見落としていたな……と反省しながら、これからも注目していきたいと思いました。

篠倉:私は、自分が通っている筑波大学のほかに、九州の大学も担当していたのですが、地方の作家さんの中には、大きな会場で展示をした経験があまり多くない方もいました。なので、この展覧会のコンセプトをすり合わせていく中で、作家さん自身も今後の作家人生の糧になるだろうと感じた場面が何度かありましたし、私はキュレーションが初めてだったので、お互いに成長できるようなとてもいい機会でした。

中間トーンについて考える契機となるような展覧会


ーー内藤さんは、昨年の『Future Artists Tokyo』にもキュレーターとして参加されていましたよね。去年と今年ではテーマの方向性も変わっていますが、この1年間の変化について思うところはありますか?

内藤:この展示自体が、今の時代の「好き」とか「嫌い」といった趣味趣向の決め方、切り取り方を表しているように思います。というのも、タイトルが決まるまでに、多くの作品の中から候補を選んでいくという行為自体が、TwitterやFacabookを見て、自分の気になったものをピックアップしていく構図と似ているんじゃないかと思ったんです。また、今は、白黒だけでない中間トーンに注目するような世の中になってきていますよね。例えば、LGBTなどもそうですが、中間トーンを意識しようという風潮になってきているのが、この1年の変化なのかなと思います。この展覧会を見てもらうことで、中間にあるものをもっとよく考える契機にしてもらえればということは意識していました。

中嶋:ここまで多様な作品の中から選んで展示する展覧会というのは、美術館ではそうそうないものだと思います。今回は、キュレーター自身も本当に好きなものを選んでいるので、アートの知識の有無に関わらず、見やすい展示になっているのかなと思います。

金:今回の展覧会は単なる絵画やインスタレーションだけじゃなくて、いろんなジャンルの作品が集まっているんですよね。なので、そういう面でも楽しんでもらいたいなと思います。

ーーみなさんと同じ、20代の人たちへ届けたいメッセージはありますか?

篠倉:この展覧会を通じて、「自分が好きなものを選び取るってどういうことなんだろう?」ということを、改めて考えるきっかけになったらいいなと思います。

一ノ瀬:ぜひ、会場で「Erection」してもらいたいです。

さらに、本展の関連企画はAFTサテライトイベントとして六本木と天王洲でも開催される。国際フォーラムの本展だけでなく、ぜひサテライトイベントの展示にも注目したい。

(更新日:2019年2月2日)

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