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『アンメット』バイプレイヤー小市慢太郎の名演に涙 記憶を取り戻したミヤビの決断は?

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『アンメット ある脳外科医の日記』©︎カンテレ

 『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)第7話は、嗅覚にまつわるエピソードだった。

参考:若葉竜也、民放連ドラ『アンメット』出演の背景と覚悟 杉咲花は「何よりも人間性が素敵」

 なつかしい匂いに記憶が蘇った経験はないだろうか? プルーストの名著『失われた時を求めて』には、紅茶に浸したマドレーヌの匂いで幼かったころの記憶を思い出す場面がある。嗅覚はその人が歩んだ人生と分かちがたく結びついている。

 ミヤビ(杉咲花)たち医局のメンバーが仕事終わりに立ち寄る料理屋「たかみ」の大将·高美(小市慢太郎)に髄膜腫が見つかった。料理の味付けが濃いことに気づいたミヤビたちに勧められて検査したところ、嗅神経が圧迫されていた。手術をすれば嗅覚が失われる可能性があるが、手術しないと髄膜腫が大きくなって命に及ぶ危険がある。嗅覚は味覚と密接に関わっており、嗅覚がなくなると風味を感じることが難しくなる。料理人にとって致命的な症状であり、当然のことながら高美は手術をためらった。

 抗てんかん薬の量を増やすことで記憶が戻ったミヤビだったが、記憶がすり替わる副作用に見舞われていた。不正確な記憶が定着する記憶錯誤は、昨日食べたものや新しく開店したお店を間違える程度ならまだいいが、患者を間違えるなど仕事に支障が出るレベルで、投薬量を減らすべきかミヤビは戸惑う。脳の中の記憶は日記にたとえられる。自分が知らないうちに記憶がすり替わって、そのことに気づけなければ、記憶障害にも比肩する対応が必要になるかもしれない。

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 回復することの代償に何かを失う状況にミヤビは置かれていた。同じように、高美にとって手術を受けることは、これまでに築いたキャリアを手放すことになりかねない。匂いは思い出と結びついており、嗅覚を失うことはそれまでの人生に別れを告げることでもあった。高美の気持ちは女将の香織(阿南敦子)やミヤビ、津幡(吉瀬美智子)と言葉を交わすことで定まった。高美は手術を受けることに決めた。

 主人公を見守るサブキャラが単発の放送回で取り上げられることは少なくないものの、第7話は珠玉のエピソードとなった。バイプレイヤーとして多くの作品に参加する小市慢太郎と阿南敦子による、積み重ねた歴史と深い感情が交錯する名演だった。高美の手術は難易度が高く、ミヤビは三瓶(若葉竜也)と二人で執刀医を務めることになった。顕微鏡下の精緻なプロセスを規則的なモニター音と執刀中のアップショットで映し取る映像は、観る側を引き込む集中力と緊張感を伴っており、手術シーンの創意工夫が伝わってきた。

 記憶障害からのミヤビの回復を中心に据える『アンメット』で、もう一つの軸が主治医の大迫(井浦新)と関東医大が企てる病院間の駆け引きだ。ミヤビをめぐって微妙な関係の綾野(岡山天音)と婚約者の麻衣(生田絵梨花)の葛藤に、近距離から踏み込んだのが第7話だった。ヘビ、カエルに続いてワニ肉をほおばる西島(酒向芳)から、麻衣は綾野病院を傘下に収める理由を聞く。麻衣との政略結婚を進める綾野は、実家で、麻衣の意外な一面を知ることになった。あらかじめ決められた結婚と病院経営に、ミヤビの失われた記憶はどう関わってくるのか。

 治療に絶対的な正解はないかもしれない。けれども、記憶を取り戻しつつあることで日々の変化を感じられるようになったと話すミヤビは、三瓶の治療方針を受け入れることにした。「頼っていいですか?」と聞かれた三瓶の目は潤んでいるように見えたが、すぐに冷静さを取り戻し「一緒に戦いましょう」と答えた。二人の関係性の深まりだけでなく、俳優陣のケミストリーは劇中で大いに発揮されており、手術室での星前(千葉雄大)や成増(野呂佳代)の会話だけでも十分にお釣りがくる。

 加えて、カフェ店員として登場した今泉力哉監督が“抹茶パウダー入れすぎ事件”の主犯であると発覚した瞬間、ネットの盛り上がりは最高潮に達した。

(文=石河コウヘイ)

 
   

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