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上川周作が『虎に翼』で生む“イイ味” 『まんぷく』を経て体現する直道の“在り方”

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『虎に翼』写真提供=NHK

 伊藤沙莉が率いる朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)を、ここまで支えてきた頼もしい面々。物語が進めば新たな仲間との出会いが必ずやあるものだが、やはりそこには別れもある。ヒロイン・猪爪寅子(伊藤)の“人生”を描くものなのだから当然だろう。

参考:吉田恵里香は寅子以外の人生も描き切る 『ぼざろ』でも発揮された人物描写力

 そんな彼女の人生において、ずっとそばにいた者のひとりが兄の直道だ。演じているのは上川周作。登場するたびに“イイ味”を出す頼もしい存在である。
 
 この直道とは、妹思いの心優しい人物だ。どこか真間の抜けたところがあるが、そこがまたいい。彼のような者を“根っからの善人”というのかもしれない。いつも笑顔がまぶしく、見ているこちらまで笑顔になってくる。

 ……と、直道に対する印象を端的に記してみたが、これに異を唱える方は少ないだろう。番組公式サイトの人物紹介欄の文面から私たちが抱く直道のイメージを、演じる上川は丁寧に具現化させてきたのだ。そのキャラクターを主張できる機会はかぎられているが、それよりも上川は、直道が猪爪家の中でどのように振る舞うべきかを大切にしてきたのではないだろうか。思い返してみれば劇中の彼は、どこか一歩引いている印象がある。

 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 虎に翼 Part1』(NHK出版)にて上川は直道について「理論派の妹・寅子とは違い、兄の直道は思ったことをスッと言う感覚派」と述べている。直道はドラマを発生させるポジションではなく、生まれたドラマへの反応によって作品をより盛り上げるポジションなのである。

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 「俺には分かる」が口癖の感覚派である直道のようなキャラクターは、いくらでも自由に遊べる(=思うように演じられる)存在だとも思える。だが、このポジションでの遊びが過ぎると、作品全体の印象がルーズなものにもなりかねない。2018年度後期に放送された朝ドラ『まんぷく』では、泣き虫な画家の卵の役として上川は遊んでいた印象があるから、かなり自覚的に自身の役どころをまっとうしているのだろう。『まんぷく』で演じた名木純也は非常に個性的なキャラクターで、あちらではまた別の意味での“イイ味”を出していた。もちろん、この2作の間には大きな時間の開きがあるため、上川自身が俳優としてさらに力をつけたのであろうことは言うまでもない。2021年には初めて主演を果たした時代劇『CHAIN/チェイン』も公開されているのだから。

 “イイ味”でいえば、大ヒット作となった『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(2023年)での上川もそうだ。同作で彼が演じているのは、現代から1945年の日本にタイムスリップしたヒロイン・加納百合(福原遥)が出会う特攻隊員のひとり。穏やかな好人物だ。妻と生まれたばかりの子どもがいるという彼の事情を知ったとき、観客の誰もが胸を締め付けられたことだろう。それでも彼は仲間たちや百合に優しく語りかけ、微笑みかける。いくらフィクション作品とはいえ、歴史上の悲劇を物語のモチーフとして扱っている以上、“イイ味”などという軽い言葉を使うべきではない。それは百も承知の上だ。けれども、主演の福原遥や水上恒司、出口夏希、伊藤健太郎といった若手がチームの中心となる作品において上川の言動が生み出すそれは、やはり“イイ味”というよりほかにないものだったのである。

 『虎に翼』での直道は、愛する花江(森田望智)と家庭を築き、順風満帆だ。しかし、時代が時代である。物語のにぎやかなムードを戦争の気配が侵蝕している。彼に直接的な影響を及ぼすドラマが生じたとき、上川はどのような反応をもって本作における直道の在り方を示すのだろうか。
(文=折田侑駿)

 
   

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